一般編  Vol.240
江尻 えみさん
大学卒業後、総合商社勤務を経てIT業界に転身。日本オラクル株式上場期の社長秘書を経験した後、グローバルマーケティングを担当。2003年米国本社コーポレートマーケティング部に転属し、アジアパシフィック全域を担当。2011年に設立した英明大学のファウンダー&プレジデント。
世界を舞台に働くということ
自ら希望して日本支社からオラクル本社に転属、2003年からベイエリアに暮らす江尻さんに日頃の暮らしぶりなどを伺いました。
江尻 えみさん

(Emi Ejiri)BaySpo 1505号(2017/09/29)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 勤めていたオラクル日本支社でグローバルマーケティングを担当していましたが、「アメリカ本社から世界各国をマネージしてみたい」と希望。本社転属の夢が叶って2003年に渡米しました。

ベイエリアの印象
 イノベーション、ダイバーシティを象徴する土地。世界中から優秀な人材が集まっていると実感します。社会、世界が便利で良くなることを常に考えている人が多いと思います。

自分の専門分野について
 日本と米国本社勤務をあわせて20年間、グローバルIT企業のマーケティングに携わってきました。日本では、企業の戦略に沿って市場に適合したマーケティング活動を実践。本社勤務になって以降は、企業の戦略を世界各国に伝達し、マーケティング活動の進捗管理や効果測定を行っています。うまく機能していない国があれば、即座に改善を図っていきます。この過程で時折、国同士の文化やビジネスの慣習の相違が議論の的になることがありますが、各国に適応するよう綿密に策定された、共通の「グローバルスタンダード」の枠組みの中で、コアコンピタンスとフレキシビリティのバランスを取ることで解決していきます。国や文化の違いを対立構造にするのではなく、お互いに同じグローバル企業のチームの一員であることを確認して、丁寧に議論を重ねていくことが最も重要なことです。この姿勢は、ビジネスの世界のみならず、世界平和への導きの基礎だと考えています。

その道に進むことになったきっかけ
 米国本社のCEOが来日する際に、日本側の調整役として、滞在中の公私にわたる様々な準備と現場対応を任されました。日本文化にとても造詣が深いCEOが、ベイエリアに桂離宮を模した回遊式庭園兼自宅を建築することになり、本来の業務とは別に、このプロジェクトメンバーに加わりました。寺社や日本庭園を廻って情報の収集、入手困難なものは日本国中を探して調達し、建築予定地に何度も出向いているうちに、メンバーとの強い信頼関係も築けました。邸宅が完成するまでを記録におさめたメイキングビデオの制作、メディア対応、完成間近には、各国の高官や企業トップエグゼクティブを招いての披露など、この長いプロジェクトを通して、普通ではなかなかできない経験をしました。コミットしたことは必ず結果を出す、エクスキューズを言わない、という精神を徹底的に叩き込まれたのもこの時です。マーケティングに所属していると、こうした特別なプロジェクトに関与することが多々あります。本社に勤務したいと思ったのは、桁違いのスケールで物事を動かすCEOの下で、もっと大きな規模のプロジェクトに数多く携わり、自分もスケールアップしたいと思うようになったことが一番大きいです。

英語で仕事をするということ
 オラクルは世界146カ国に支社があり、地球を約6分割してスタッフ6人で担当地域を割り当てています。私はアジアパシフィック全域を担当していますので、英語圏ではない国との仕事が多く、コミュニケーションによる誤解がうまれないよう、クリアな表現をするように気をつけています。独特なアクセントがある国との電話会議では、すべての内容をメールで再確認せねばならず、電話会議の意味がなくなった、という失敗談もありますが、メールだけで済まさず、電話やビデオ会議でインタラクティブに対話することが、その後の仕事の進み方や成果に大きな違いをもたらすと思います。

あなたにとって仕事とは?
 昔から世界の舞台で仕事がしたいと思っていたので、今の仕事は天職だと思っています。スキルとセンスを磨くことができる偉大な舞台に立たせていただいていることに感謝しています。アジアパシフィック全域の担当者であるという誇りと責任を持って向き合っています。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 自分ではすっかり忘れていたのですが、小さい時は「先生になりたい」とずっと言っていたと最近になって母から聞きました。大学を設立したのも、無意識に生まれて初めてなりたいと思った職業に取り組んでいるのかもしれません。

いまの仕事に就いていなかったら
 京都で僧侶になっていました。

休日の過ごし方
 今年ミドルスクールにあがり学業生活が忙しくなった娘との時間を、休日にまとめてゆっくり取ります。仕事と大学運営の二足の草鞋ですが、週に1日は思い切りリフレッシュします。

好きな場所
 ハーフムーンベイのマーべリックビーチ。アメリカに来たばかりのころは、日本から一緒に来たブラックラブラドール犬のアンディと毎週のように通っていました。18歳で亡くなってしまいましたが、このビーチは大切な思い出の場所です。

1億円当たったとして、その使い道
 最近のベイエリアでは1億円はあっという間に消えてしまいそうな額ですね。消費するのではなく、活かす使い方をしたいので、大学の運営費にあてます。

日本に戻る頻度
 年に1度か2度。

最近日本に戻って驚いたこと
 アメリカで生まれ育った11歳の娘が、今年の夏に初めて日本の小学校に体験入学しました。「どうして日本の子はみんなとっても優しいの?」と驚いていたことに私自身が驚きました。日本人にはあたりまえに思える、気遣いや思いやりに触れて感動したようです。

日本に持って行くお土産
 ピーツやブルーボトルのコーヒー、オリーブオイルなどが多いです。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 茶道のお稽古を始めてからは、和菓子や和装品などを持ち帰ってきます。和菓子は味だけでなく見た目も美しく、日本の心のきめ細やかさが堪能できます。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 世界で最も便利で恵まれている地域のひとつだと思うので、不便を感じたことはありません。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 平和に暮らせる地域なので特に不安もありませんが、あえていうと、とどまることを知らない物価高騰と水不足でしょうか。

日本に郷愁を感じるとき
 季節の移ろいに触れると、五感で感じる日本の季節を懐かしく思います。

永住したい都市
 京都です。生まれた場所なので。

5年後の自分に期待すること
 これから先の人生では、得意なことではなく、苦手なこと、経験がなく自分には無理そうに思えることにも取り組みたいと思っています。2011年から活動しているNPO教育機関、英明大学の代表をこの9月から務める決意をしたのもそんな思いからです。5年後には卒業生が出ていますので、世界や社会の課題・問題を解決する慈業家が世界中で活躍していて欲しいです。同時に私もその一人として、大学をさらに発展させていたいです。

最も印象に残っている映画
 『100歳の少年と12通の手紙』。変えられない現実を、心のありようで人生を楽しくしてしまうお話しです。

最近読んだ本
 トム・ケリーとデビッド・ケリーの『クリエイティブ・コンフィデンス』。デザイン思考を実践するための手引書です。最近、議論する機会が増え、きちんと理解するために読みました。

自分を動物にたとえると? なぜ?
 犬。生まれた時から常に犬がそばにいたので、たいていの意思疎通はできると思っています。昨年、飼い犬が亡くなってからは犬と暮らしていないので、散歩している犬と出会うと、私の方が飛びついてしまいます。

座右の銘
 空海の言葉「我心は広にして、また大なり」です。自分のことだけを考えていると小さく見える心も、世のため、人のため、大きな目的に向かえば、際限なく広い心に転じる、という教えです。

(BaySpo 2017/09/29号 掲載)

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