一般編  Vol.268
坂東 正規さん
静岡県のそば粉屋の末っ子として生まれる。中学生の時にNHKスペシャル『電子立国日本の自叙伝』にハマり、シリコンバレーに憧れを持つ。2001年に渡米し、ニューヨーク大学でPhDを取得後、憧れだったシリコンバレーに移住。現在、全世界にサービスを提供するサイバーセキュリティ会社(Fortinet Inc)で、技術者として、アルゴリズムの研究やチップの設計を手がける。
探究心で自ら道を切り開く
静岡県のそば粉屋に生まれ、家業を継ぐものとばかり思って幼少期を過ごすが、現在はサイバーセキュリティ会社の技術者として、アルゴリズムの研究やチップの設計を手がける。本業の傍ら、(家業のため)北米のそば畑も視察しているという坂東さんにベイエリアの暮らしぶりを聞きました。
坂東 正規さん

(Masanori Bando)BaySpo 1555号(2018/09/14)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 2001年に渡米してきました。大学入学当初にインターネットが爆発的に普及し始め、その可能性に魅了されていました。しかし世界をリードしていた日本企業がインターネットとなると動きが鈍く、刺激的なことの多くはアメリカ発信で、研究分野でも日本よりも米国のほうが格段に進んでいる印象を受けました。ならばその発信源に行って学ぶのが最良だと思い留学を決意しました。とはいえ、留学に関する知識も英語力も乏しかったので、まずはUCデービスでいくつかコースを受講しながら進学準備をした後、ニューヨーク大学の博士課程に進みました。ベイエリアには学位取得後、2010年に戻ってきました。

ベイエリアの印象
 自然に囲まれている割には日本食に不自由するような田舎でもなく、バランスがとれていると思います。夜は涼しくなり、夏でも寝苦しさがないのが最高です。また、ニューヨークに比べると移民、特にアジア系の移民に対して非常に寛容な印象を受けます。

自分の専門分野について
 ネットワーク機器、とりわけサイバーセキュリティで用いるデータ検索(パターンマッチング)などをハードウエア(半導体)により高速化するためのアルゴリズムを研究し、それらを使ったチップを設計をすることが専門です。

その道に進むことになったきっかけ
 インターネットそのものには大学生のときから興味を持っていました。ニューヨーク大学でアドバイザー(指導教授)を決める際に、面白そうなインターネット関連の研究をしていた教授のところに話をしに行きましたが、その教授から「今は研究費が潤沢ではなく追加の学生は雇えない」という非常にアメリカらしい理由で断られてしまいました。そこで、1番お金を持っていた学科長の研究室で雇って頂くことになり、結果、非常に刺激的な分野を研究することができました。人生何が吉と出るかわからないとこの時に改めて感じました。

英語で失敗したエピソード
 UCデービスにいたときですが、ティーチング・アシスタントをしてくれていた現地の女子学生に「専攻はなんですか」と聞いたつもりだったのですが、「Major」の発音が悪すぎて、「Measure」と聞こえたらしく3サイズを聞いてると勘違いされ一瞬目つきが変わった苦い思い出があります。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に
 テクノロジー系の特許を扱う弁護士になってみたいです。彼らに必要とされる発明の本質を見抜く力など、英語力以外の部分は研究者に必要とされることと似ていると思います。

あなたにとって仕事とは
 好奇心の延長でしょうか。もともと大学で研究をしていたことが仕事になっているので、そのように感じます。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 大型トラックのドライバーです。ですが、小学5年生のときに入った科学クラブでトランジスターラジオを作ったことがきっかけで、なりたい職業はエンジニアに変わり、今に至ります。

休日の過ごし方
 セーリング、日曜大工、ハイキング、ジョギング、冬はスキーなどを楽しんでいます。休日は家の中にいることができない性分です。

好きな場所
 モントレーが好きです。磯の香りとゆっくりした時間の流れが実家の沼津となんとなく繋がるのかもしれません。

最もお気に入りのレストラン
 「Thanh Long」というカニ料理店に無性に行きたくなるときがあります。ガーリックヌードルも外せません。

よく利用する日本食レストラン
 デービスにある「焼鳥 裕ちゃん」をよく利用します。スキーの帰りやデービスの友人を訪れたときなどに立ち寄ります。備長炭で焼く本格的な焼き鳥が楽しめ、良いトマトが入ったときのみ提供されるトマトのベーコン巻きは絶品です。

1億円当たったとして、その使い道
 最近、どんどん新しい商品が出るフィンテックに投資してみたいです。利益が出ればいろいろな国に旅行して、そこでしか味わえない美味しいものを食べたいですね。

日本に戻る頻度
 両親に最低一年に一度は顔を見せるのが親孝行かと思い、その頻度で帰国するようにしています。

日本に持って行くお土産
 定番ですが、カリフォルニアワインをお土産にすることが多いです。あとは、日本では手に入りにくいサプリメントなどもよく持っていきます。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 そば粉です。スーツケースを開けると真空パックになった白い粉が大量に出てきますが、税関で怪しまれたことはありません。ベイエリアで美味しいお蕎麦を食べたければ自分で打つしかないので日本から戻るときはそば粉を持ち帰っています。

日本に郷愁を感じるとき
 雨の降りはじめの匂いを嗅ぐと懐かしさを感じます。ベイエリアはあまり雨が降らないので余計にそう感じるのかもしれません。

5年後の自分に期待すること
 40歳を過ぎ、50代にどの方向に向かうのか決めなければいけない時期に来ていると考え、いろいろ試すようにしています。5年後には目指す方向が決まり、それに向かって精進している時期になればと期待しています。

最も印象に残っている本
 Simon Singh著の『The Code Book』という本は読むとワクワクします。同じ著者でほぼ同じ位好きなのはFermat's Last Theoremです。研究に行き詰まったときに読んだので、その時行っていた研究を継続する勇気をもらいました。

最近読んだ本
 アマゾン・キンドル・アンリミテッドで日本の本が読めるので、いくつか興味のあるものを読んでいます。「重力とはなにか」というような物理の本も読んだりしましたが、最近は経済の本や決算書の読み方などというような本も興味があり読んでいます。本ではないですが、IRSの出している出版物が興味深くて時間のあるときに読んでいます。ありそうな事例を交えて税金の仕組みを解説しているので、読み物としても面白みを感じています。控除の対象などを知ることによって、「国がどの方向に向かおうとしているのかが分かるのでは」と勝手に考えています。

最近観た映画
 『海賊とよばれた男』を観ました。日本の成長を支えた人たちの話で目頭が熱くなりました。

自分を動物にたとえると
 猫でしょうか。基本的に落ち着きはないですし、興味の対象が移るとそちらに一目散に行ってしまうところもあります。気分屋なところもあります。

座右の銘
 誰の言葉か忘れてしまいましたが、「何かを始めるのに、年を取りすぎたという人は、今まで常にそう言ってきたのだろう」というものです。修士課程を終了し、周りはすでに社会人として立派にやっていく中、米国留学をするか悩んでいた自分に最後のひと押しをくれた言葉です。

(BaySpo 2018/09/14号 掲載)

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