一般編  Vol.287
亀井 紀子さん
1965年、京都府の生まれ。ベイエリア在住歴 約20年。IT業界で30年近く勤務した後、2014年にサンフランシスコで唯一の日本酒醸造所、Sequia Sakeを立ち上げる。https://sequoiasake.com*毎土曜日の12-6pmの間、テイスティングやツアーを実施中。
自分がしたいことが一番
大学卒業後にサンフランシスコへ移住。その後IT業界で30年近く勤務した後、娘の大学進学を機に一念発起し、趣味として始めた日本酒の醸造を事業として展開。サンフランシスコ初の日本酒醸造所を立ち上げた亀井さんに、ベイエリアでの生活について伺いました。
亀井 紀子さん

(Noriko Kamei)BaySpo 1586号(2019/04/19)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 最初に渡米したのは1887年で、大学を卒業してすぐでした。そのときすでに交際中だった今の夫がサンフランシスコに住んでおり、また私もアメリカで生活したいという気持ちが強かったので、ほぼ衝動的に渡米してしまいました(笑)。昔から割と軽いノリで大胆な行動に出る人でしたね。今もあんまり変わってませんが(笑)。

ベイエリアの印象
 私の年代では、日本社会はまだまだ男尊女卑、年功序列といった封建的な思考で固まっており、アメリカの自由な風土にずっと憧れていました。そしてサンフランシスコで生活するようになって初めてわかったのが、ベイエリアはアメリカの中でも最も自由でオープン、異なる人種、文化、性嗜好の人も受け入れる広い心を持っている土地柄であることがわかりとても感動しました。今でも、ベイエリアの住人であることを心から誇りに思っています。

自分の専門分野について
 30年近くIT業界一筋でやってきたのですが、数年前から日本酒の醸造を生業としています。小規模な自営業ですので、お酒造りから会計処理、配達から接客まで何でもやります。

その道に進むことになったきっかけ
 実はIT業界に入ったのはある意味偶然で、本当はもっと五感を使うような仕事がしたいという気持ちがどこかにありました。IT業界も非常に面白いところではありましたが、私は根っからのオタクではないので、正直言って生活のために続けていた部分も大きいです。一方日本酒造りは純粋な趣味から始めて、事業化したらすごく面白そう、そしてある程度の勝算もあるのではないかと数年間考えていました。そして、娘がハイスクールを卒業した時点で、ついに思い切ったわけです。アメリカの大学生は奨学金やローンで学費を賄い、ある意味もう独り立ちしたようなものですから、私もこれからの人生、自分がしたいことを一番に、ちょっとくらい無茶をやってもいいじゃないかと。

英語で仕事をするということ
 IT業界が居心地がよかった理由のひとつは、外国人が非常に多いということです。つまり、下手な英語でも通じれば許されるみたいな空気があり、それはすごく助かりました。そして今は今で、日本人として日本の伝統食文化に携わる仕事をしているので、英語がネイティブのように流暢でなくても受け入れてもらえると、自分では勝手に思っています(笑)。もちろん英語が流暢な方がコミュニケーションがうまく取れるとは思いますが、決定的なハンデと感じたことはありません。それよりは、英語力以外の能力や人間性の方が重要な評価ポイントになると思います。

英語で失敗したエピソード
 いっぱいあったと思いますが、ひとつも思い出せません。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 今と変わらないと思います。

あなたにとって仕事とは?
 真剣にやる遊び、であるべきだと思います。今、まさにそうです。私の年代では仕事というものは、生活の手段であり、社会的ステータスであり、努力して勝ち取らないといけないもの、一度獲得したら何があっても死守すべきもの、というように捉えられてきたと思いますが、世の中は大きく変わりつつあります。価値観は多様化してきていますし、そのうち面倒な仕事は全部AIやロボットがやってくれて、ユニバーサルインカムなども実現するかもしれない。そうなると、人間は自分が本当にやりたいことをやって人生を全うできる。そういう意味では今の若い人は羨ましいですね。世の中の逆風に逆らって生きるのも、それはそれで楽しいんですが(笑)


いまの仕事に就いていなかったら
 日本酒事業を始めていなくても、何か別の無茶なことをやっていたような気がします。

現在、住んでいる家
 サンフランシスコ市内にある一軒家に住んでいます。1996年に購入しました。ラッキーでした。今だったらとても買えません(笑)

睡眠時間・起床時間・就寝時間
 割と早寝早起き型で、朝は5時くらいには起きています。仕事に行く前の1〜2時間、日本酒の勉強や、今年に入ってからはスペイン語の勉強もしています。夜はだいたいお酒を飲んでいるので、早朝がお勉強の時間です。

休日の過ごし方
 起業してから、休みは殆どないです。せいぜい、月に1日くらいですね。1日だらだらとベッドで過ごすときもあれば、自転車で遠出することもあるし、最近はよく蕎麦を打っていますね。

1億円当たったとして、その使い道
 迷わず、すべて蔵につぎ込みます。良い機材を買ったり、研究開発にお金を使ったり、もっと美味しいお酒を作るために使います。自分が贅沢することには、あまり興味はありません。

日本に戻る頻度
 年に一度か二度くらいです。

日本に持って行くお土産
 お土産に関してはいつも困ってしまいます。お酒は扱いが面倒なので、必要最低限しか持って行きません。その他というと、これといって喜ばれそうなものも思いつかず…。今度ペイスポで、「日本で喜ばれるベイエリアのお土産」特集をぜひ組んでください!

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 日本酒、乾物、漫画です。

日本に郷愁を感じるとき
 冬場になると、温泉に浸かりたくなります。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 特にありません。快適です。もちろん日本ほど便利ではない箇所もあげようと思えばいくつも挙げられますが、慣れてしまえばどうってことない程度のことばかりかと思います。

現在のベイエリア生活で不安に感じること
 日常特に不安を感じて生活しているわけではありませんが、やはり盗難など、日本に住むより警戒しないといけない点はあると思います。 
永住したい都市
 サンフランシスコ

5年後の自分に期待すること
 何をしているにせよ、今と同じくらい楽しい毎日を送っていることが第一条件。その上で、今よりずっと美味しいお酒が造れるようになっていて、もっとたくさんの人に楽しんでもらって、ベイエリアのコミュニティの一員として貢献できるくらいになっていれば文句ないですね。

最も印象に残っている映画
 新海誠監督の『秒速5センチメートル』。『君の名が』が社会現象になるずっと前から新海さんの大ファンで、他にも素晴らしい作品がたくさんありますが、やはりこれが私にとってのマスターピースです。

最近観た映画
 『Bohemian Rhapsody』 。夫と22歳の娘の3人で観に行きました。3人ともがこんなに楽しめた映画は初めてです。

最も印象に残っている本
 ミチオ・カクさんの著書はどれも素晴らしいと思います。未来のすごい世界のことを語っているのに、上から目線でも、押し付けがましくもないところが好きです。

最近読んだ本
 飛行機に乗るときに小説を読む以外は、日本酒関連の本ばかり読んでいます。

座右の銘は?
「失敗は神様がくれたギフト」

(BaySpo 2019/04/19号 掲載)

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