一般編  Vol.291
中屋敷 量貴さん
1991年愛媛県生まれ。2016年に東京大学大学院の化学生命工学専攻(相田研)で修士号を取得し、渡米後はUC Berkeleyでビジネスを勉強。2017年9月にシリコンバレーで働く日本人の声を届けるメディアSilicon Valley Workersを立ち上げ、2018年12月にPlanogy Inc.を創業。
目の前で困っている人の課題を、確実に解決する
ソフトウェアエンジニア向けのドキュメントツールを開発する「Planogy Inc.」を昨年立ち上げる。もともと東京大学大学院で化学生命工学を専攻し、博士後期課程への進学が決まるも辞退。渡米してビジネスの道に転換するという経歴を持つ。ビジネスとプロダクト開発の架け橋として日々奔走する中屋敷さんに、ベイエリアでの生活について伺いました。
中屋敷 量貴さん

(Kazuki Nakayashiki )BaySpo 1591号(2019/05/24)掲載

ベイエリアに住むことになったきっかけ、渡米した年
 UC BerkeleyやStanfordは大学院時代の自分の研究分野で有名な教授がいて知っていたのと、また、ビジネスにおいてもAppleやGoogleといった大企業に加えて、UberやAirbnbなどのスタートアップがイノベーションを起こしていて、ベイエリアにはずっと興味がありました。2016年に大学院を卒業後、日本のスタートアップで働いていたのですが、「若いうちに海外で挑戦してみたい」という思いが次第に強くなり、半年後にはベイエリアに来ていました。

ベイエリアの印象
 ベイエリアは多様性にあふれていて、誰もがチャンスを手にできる場所だと思います。色々な文化背景を持った人たちがお互いを受け入れて共生しているので、変なプレッシャーもなく、個人が各々の能力を最大限に発揮しながらコラボしている印象は強いです。ただ、家賃がとつてもなく高いので、誰が住み続けられるんだろうかという疑問はあります。

自分の専門分野について
 現在は、Planogy Inc.を立ち上げ、ソフトウェアエンジニア向けのドキュメントツールを開発しているのですが、自分はその中でもオペレーション全般を担当しています。いわゆる何でも屋ですね。なので、ビジネスとプロダクト開発の架け橋的な役割を担っています。

その道に進むことになったきっかけ
 大学三年生(当時二十歳)の時に、硬膜下血腫で死にかけた経験があります。ある日、左半身が痺れて、病院でMRIを取ると「いつ心肺が停止してもおかしくない」と言われ、緊急手術をしました。なんとか一命を取り留めたものの、その時に「この世に生を受けた以上は、自分の手で何かを生み出し、誰かの役に立ちたい」と強く感じました。
 その一つのアプローチとして、まず化学の道を選びました。新たな素材を生み出せる「化学」に無限の可能性を感じたからです。大学院時代は、その業界では未知とされていた現象を発見し、結果として名誉ある雑誌に論文を出すまでに至りました。
 しかし、その時に感じたのが「研究は運に左右される要素が大きい」ということです。実際、自分が発見した現象も予想していないところで発見していて、その時に「運任せではなく、自分の頭で考えて、自分の手で誰かの役に立ちたい」と思ったのです。
 博士後期課程への進学も決まっていた中、それを辞退し、急遽ビジネスへと方向転換して、前述の通り渡米しました。バークレーを出た後は検索系企業でしばらく働いたのですが、大企業を通して目に見えない多くの人の課題を解決するよりも、目の前で困っている人の課題を確実に解決していきたいと思うようになりました。
 幸いシリコンバレーで多くの人をインタビューし、情報発信していたこともあり、ソフトウェアエンジニアの悩みをたくさん聞いていました。そんな中、今のCo-founderに出会い、「これなら自分の手で誰かの役に立てる」と思い、Planogy Inc.を立ち上げました。

英語で仕事をするということ
 拾える情報の幅が広がって、発信できる範囲が広がるので楽しいですね。

英語が100%ネイティブだったらどんな仕事に?
 今と一緒でスタートアップをしていると思います。

あなたにとって仕事とは?
 楽しみながら人の役に立つということですかね。役に立ててなかったらダメですけど笑。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 幼稚園の時の夢は「警察官になること」です。困っている人を正義で助けるというところにカッコよさを感じていたからです。

現在、住んでいる家
 今はベイブリッジあたりの2ベッド2バスルームの部屋を5人くらいでシェアして家賃を節約しています。そこで出会う人と仲良くなることで、ネットワークも広がって一石二鳥です。

休日の過ごし方
 仕事をしているか、勉強をしているか、人に会うかですね。人と会って話をするのが好きなので、そこから学びを得たりしています。あとは、コーヒーが好きなので、Peet's Coffeeやおしゃれなカフェに行って作業をしたりしていますね。

最もお気に入りのレストラン
 5thとフォルサムストリートの角にある「City Choice」というお店のサンドイッチが5ドルくらいで安くて美味しくてお気に入りです。

最近日本に戻って驚いたこと
 何でも安くて美味しいこと、夜中に人が歩いていることですね。あと、2年ぶりに食べたラーメンの美味しさには魂が震えました。

日本からベイエリアに持って帰ってくるもの
 キットカット、蒸気でホットアイマスク

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 物価が高いので、レストランに行くと一食20ドルくらいするところです。あと、ホームレスの人や薬物で変になっている人が路上にいたりするので、そういった人たちを避けて通らないといけないのは不便です。やはり、日本は安全で良い国だなと思います。

お勧めの観光地
 Ferry Building、Mission Dolores Park、Golden Gate Bridgeあたりは良いですね。

5年後の自分に期待すること
 5年後にはIPOしていると思うので、また新しいビジネスを始めるのもありですね。調子に乗りすぎないように精進します。

最も印象に残っている本
 Paulo Coelhoの『The Alchemist』ですかね。宝物を目指して旅する物語なのですが、最終的に宝物は近くにあったという話で、その旅する先々でハプニングが起こり、でもそれを乗り越えて強くなるというストーリーが自分と似ているようで面白いなと印象に残っています。夢を追うことって大事ですね。

最近読んだ本
 最近だと、姉が出版した『つながりを生きる』という本を読みました。インドの山奥に住む民族と実際に数年くらい一緒に暮らして学んだ「人との繋がり」に関する本なのですが、自分が育った環境とは異なる価値観に基づいた人との繋がり方をしていて、大変興味深かったです。

最も印象に残っている映画
 宮崎駿さんの『もののけ姫』です。世の中にあふれる対立を乗り越えて、「人と人」または「人と自然」はどう共生していけるのかというメッセージ性に感銘を受けたのを覚えています。また、元来ジブリは子供に向けられたアニメという印象があったのですが、あの少しバイオレンスな内容も「子供は全て知っている。そこに大人が本気で向き合わなきゃダメなんだ」と駿さんが仰られていたのが印象的でした。

座右の銘は?
 「現状維持は衰退のもと」

(BaySpo 2019/05/24号 掲載)

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