一般編  Vol.124
稲生朱さん
 サンフランシスコ日本町の近くで生まれ育つ。UCLAで国際経済と教育を専攻して卒業。1年間JETプログラムで滋賀県彦根市で中学生に英語を教える。2009年にアメリカに戻り、サンフランシスコ日本町のJCCCNCに勤める。5歳から和太鼓を習い、現在サンフランシスコ太鼓道場の子供のクラスを教えている。
サンフランシスコ日本町に若い力を
 日本から移民してきた両親の下サンフランシスコ日本町で生まれ育ち、5歳のころから和太鼓など日本文化と一緒に育った「新2世」の稲生朱さん。2008年に大学を卒業し、現在、サンフランシスコ日本町にある北加日本文化コミュニティセンター(JCCCNC)で働き、日本町を活性化させようと若い日系人で構成されるグループ「nihonmachi Roots」で積極的に活動している。稲生さんの日系社会への思いを聞いた。
稲生朱さん

(Aya Ino)BaySpo 1166号(2011/04/01)掲載

日系社会への思い入れは?
 アメリカにいても日本文化をキープすることは重要です。日本人としてのルーツを知らないと、自分が分からなくなるような感じになると私は思います。いろいろなルーツを持っている人たちの集まりであるところが、アメリカの個性的なところです。それがないとしたら「アメリカとはどういう国なのかな」と思います。アメリカ人といっても、我々日系人を含むいろいろなアメリカ人がいるという事実を世界中の皆さんに知ってもらいたいです。そういった理由で、日系コミュニティが大事だと思います。我々や次世代がそういった情報を発信することが大切ですので、仕事でもボランティアでもコミュニティ活動が重要になってきます。

現在の日本町を活性化させるには?
 伝統文化だけではなく、現在の日本的なお店、レストランなどを通してイベントを行うことが必要だと思います。活性化させるのには、新1世や2世の若者の力が大変重要だと思います。日本町には、日本にないこのようなコミュニティの雰囲気の良さがあり、アメリカでのセカンドホームのように感じてほしいです。
 各お店のオーナーが中国人であったり韓国人であることは悪いことではないと思いますが、お店にどんな日本の物を売っていたり、料理を出しているのかが気になります。日本の料理や小物を売っているならウェルカムなのですが、日本町以外の場所でも買えるものがあったりすると「なんで日本町でわざわざこれを売らなければならないのかな」と感じますね。

稲生さんが企画した「新2世、新1世コーヒーデート」とは
 nihonmachi ROOTSが企画したもので、アメリカ生まれで、両親が日本から移民してきた新2世と日本から永住目的で移民してきた新1世のみなさんを集めて「三時といえば、おやつ!」のように笑いながらあるある話ができるようなイベントです。「三時といえば、おやつ!」みたいな日本的な風習をリストに並べてそれについてお話しました。日本人の特徴などの再確認や、新2世にとっては新しい発見などがあり、会話が盛り上がりました。日本人の特徴ではなく、新1世と新2世に特化した特徴や、日系4世や5世に当てはまる特徴なども出てきて、私は彼らのそういった特徴を知りたかったので収穫がありました。
 新2世は両国籍であったり、日本語と英語が混ざるジャパングリッシュを話すことが便利だと感じていたりします。親がアメリカで育っていないので、親が持つ英語のアクセントに恥ずかしいと感じたことがあったりもします。日本に行って「英語の発音が上手ですね」と褒められたり、なんかがおかしかったですね。説明しようとしても、日本語を流暢に話していることと日本人に見えるので、日本人には理解できないみたいでした。

稲生さんのJCCCNCでの仕事は?
 2009年の夏からProgram Associateとしてイベント関連の仕事を主にやってます。子どもの日のイベント、神戸との交換留学プログラム、日系4世などが中心のプログラムが多いです。イベントにはいつも同じメンバーが集まってくるので、新しい人たちに来てほしいです。

和太鼓はいつごろから?
 母が日本で太鼓をやっていたので、5歳の頃からサンフランシスコ太鼓道場で活動してました。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)に通っていたころは、プロの太鼓グループでバイトし、演奏や教えたりして学費や生活費を稼ぎました。現在、自分のクラスにはあまり行ってませんが、昔入っていた「ライジングスターズ」の子供たちを教えています。桜祭りでは6歳くらいからずっと出ていました。今年は、JCCCNCでの仕事が忙しいのでまだ保留です。

和太鼓の魅力は?
 ロサンゼルスで仕事していたときに気付いたのですが、ヒップホップやジャズなどいろいろな音楽を和太鼓で演奏できます。ヒップホップアーティストの録音で和太鼓も取り入れて手伝ったりしました。日本的なビートだけでなく、いろいろな可能性が見えました。太鼓を叩いているときは、隣で叩いている人とかお客さんからエネルギーを感じてとても気持ちがいいです。「間違えないように」とか「次は何だったかな」なんてことも考えています。

サンフランシスコ太鼓道場ではどんな練習を?
 太鼓道場では練習前に3マイルほど走ります。走らないと太鼓を打っちゃいけないんです。走った後、腹筋、腕立て伏せなど30分ほどやってから練習を始めます。

日本へはよく行きますか?
 毎年一回は行きます。小学、中学のときは研究生として夏3カ月ほど行き、ローカルの学校へ通ったりしてました。埼玉の田舎でおばあちゃんが和菓子屋をやっているので、そのお手伝いもしました。

JETプログラムで滋賀県の彦根で英語を教えたそうですが?
 日本の中学生は静かで礼儀正しいと思っていたのですが・・・すごかったですね。アメリカとあまり変わらなかったです。授業中も騒がしかったです。でも、騒がしい子の方が気楽に話せました。私が誰で日系人とは何なのかを説明している時間が多かったですね。日本の皆さんが想像しているアメリカ人の先生って白人というイメージですが、私は姿が日本人でしかも名前が稲生朱ですから(笑)。

日本語での失敗エピソード
 日本のおばあちゃんの家で電話がなるとつい「Hello?」と出てしまいます。「衣替え」を「子ども変え」だと思い、怖がっていたときがありました。

日本語はどうやってキープしてますか?
 家族や新二世友達との会話や仕事です。

生まれて初めてなりたいと思った職業
 キャビンアテンダント。憧れでした。きれいで細くて、背が高くて。

いまの仕事に就いていなかったら
 旅行しながら他の国で英語教えてるかな?

休日の過ごし方
 nihonmachi ROOTSのイベント。大学時代の友達に会いに5時間6時間かけてロサンゼルスまでドライブです。何週間後、何カ月後とか企画できない性格なので、行こうと決めたら行く性格なんです。だからドライブすることになるんです。

好きな場所
 海。水があるとホッとします。私の毎日はいろいろなことがゴチャゴチャしていて忙しいんです。仕事、ボランティア、学校関連のこと。海に行くと、自分のことや未来を考えることができます。何も考えないこともあります。

よく利用する日本食レストラン
 タンポポ。毎日のように行きます。おいしいし近いし、日本のTVをやっているので。

最近日本に行って驚いたこと
 アイフォンを持ってる人が多い。開いたり閉じたりして、カチカチ鳴る昔の日本の携帯が好きだったんです。

日本に持って行くお土産
 GODIVAのチョコレート、スモークサーモン。おばちゃんたちからリクエストされます。

現在のベイエリア生活で、不便を感じるとき
 サンフランシスコのバスを待つのが疲れる。特に43番。

お勧めの観光地
 Twin Peaks。海のように拓けていて、すっきりします。

永住したい都市
 まだ分かりませんが、教育関連の勉強がしたくてニューヨークにある大学院に願書を出しました。大都市が好きなんです。

5年後の自分に期待すること
 高校の教師。日本語かアメリカの歴史を教えたいです。

自分を動物にたとえると?
 ねこ。結構自主的になんでもやるので。

座右の銘は?
 「為せば成る」。怖いことはいっぱいあるかもしれませんが、やればなんとかなると思います。

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■インタビューを終えて
 若い日系人や日本人を中心とした活動を通して日本町をさらに活気づかせようというエネルギーが稲生さんからひしひしと伝わってきました。日本町は、稲生さんのような若い世代の日本人や日系人のサポートが必要とされています。ぜひ、足を運んでみて下さい。

(BaySpo 2011/04/01号 掲載)

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