浅尾先生の施術で最近好評なのが、痛みを感じる場所には直接触らず離れた場所にあるツボを刺激する方法。その効果は患者さんもご存知で、足から腰への痛みを訴えているのに診察時はさっと上着を脱いで患部と反対側の腕を出すそう。なんだか不思議な感じがしますが、先生によると系統立てて説明できるメソッドで、さまざまな手腕と昔からある鍼の理論を総合的に集大成した中国人の先生のもとで何日も缶詰になって教わったそうです。医学は日進月歩と言いますが鍼も然り、約二千年の歴史があっても他にもっと効く方法がないか常に模索されているといいます。「東洋医学は西洋医学の病名を治す訳ではないけれども、アルツハイマーなど新しい現象を治しやすいツボの組み合わせもできてくるんです」。この飽くなき追求が面白い、と先生の目が輝きました。とはいえ不妊治療のツボはここ、というのがあるわけではないので、「なぜその症状が出てくるのか」というところからアプローチを始めます。脈を取り舌を見て生活習慣や病歴などの問診をし、総合的に判断して原因を探ります。
浅尾先生のクリニックで多いのが不妊の相談。身体が冷えている奥様と、頭と足が熱くてアイスノンをしないと寝られないほどのご主人が、治療を通じて2人とも症状が改善してくると妊娠したというケースもあるので、先生はカップルでの来院も勧めています。妊娠期間中も妊婦さんが安心して受診する環境が整っており、最近依頼が増えているのが陣痛促進。予定日の1週間前から母乳の出がよくなるケアと合わせて受けます。産後は鍼で血のめぐりをよくし、出産で失った血を補う働きをする漢方薬の処方など、うつにかかりやすいこの時期も元気に過ごせるようにと細やかにサポート。「生命の誕生に関われるのは本当に嬉しい」と先生の顔がほころびました。
鍼は怖いという人も安心できる、マグネットや「かっさ」、刺さない鍼とも言われる「ていしん」などを個々の症状に合わせて組み合わせて治療します。子どもの治療なら軽く押さえたりなでたりするなど、経絡を皮膚から刺激するだけでも効き目はあると言います。また、冷えがたまって起こる腰痛にお勧めなのがお灸。器具を使って間接的にじんわりと温めると、お灸の薬用効果で温かさが持続するそうです。
やさしく明快な浅尾先生の話を聞いていると、東洋医学が身近なものに感じられてきます。先生自身、自分で治せることは自分でできればと考えているそうで、患者さんが自宅でケアできることがあればいくらでも教えると言います。「そもそも漢方は山芋や生姜など口に入れるものを薬にしたもの。黒豆を煮て食べるのも立派な漢方ですし、ナツメやクコの実はお菓子に入れたりとかできますよね」。不調が出てからだけでなく日常からできるケアも、気軽に先生に相談してみてください。