最近、伴先生が注目しているのが医学博士の青柳幸利さんの研究。約15年にわたってデータを取りウォーキングと病気予防の因果関係を明確にしたということで、日本でも多くのメディアで紹介され話題になっています。「ロコモーティブシンドローム(運動機能障害)や骨粗しょう症、ひいてはガンや動脈硬化など生命に関わる病、そして生活習慣病が歩くことで改善されたと著書で述べていて、これは注目すべき物だと感じましたね」と先生。例えば、高血圧症の予防や血圧を下げるには中強度のインターバルを20分入れながら8000歩以上歩く、認知症予防なら7分半の早歩きを含めて5000歩以上など、具体的な病名と歩数が導き出されているのがこの研究の特徴です。
伴先生によると、ウォーキングは「血液循環が良くなって酸素が回る、筋力が強くなる、運動能力がよくなる、姿勢も改善する、骨に刺激を与えることで骨粗しょう症が予防できる」と良いことずくめ。先生は年配の方や体力がない人でも毎日2000歩は歩くことを提唱しています。クルマ通勤、仕事中は座りっぱなしという人の歩数は想像以上に少ないはず。だからまずは歩く行為を意識付けすることが大事です。「最近いろいろ出ている健康管理デバイスを活用するのもひとつの手。ドクターに相談してプログラムを作ってもらうこともできます。最初は億劫でも3週間ほど続ければ恒常性の中に組み込まれます」と習慣づけるコツも教えてもらいました。「将来、脳出血で不随になるリスクを下げるのに歩くだけで済むんだったら、今やりましょうよ! と言いたいです」と先生。
ずっとスポーツを続けていれば健康だと思いがちですが、週末だけ熱中する人は逆に危険だと先生は警鐘を鳴らします。「心拍数が急上昇するような過度な運動を行うと、活性酸素が増えて正常な細胞にダメージを与えます。その結果、健康になるはずの運動が疾病の要因になってしまうのです。また、柔軟性がないと筋肉や関節を痛めることにつながります」。ケガをして楽しい趣味が続けられないという残念な結果を招かないためにも、ストレッチやエクササイズで日頃から身体を動かしておくことが大切だと話します。
関節炎が起こるのは過剰に使うか、使っていないかが原因。動かさない関節は年齢問わず退化していきます。先生が提案するのは、病気のリスクを下げたり元気で長生きしたりといったQOLの高い生き方をするための人生設計。膝の負傷で歩くことも困難だった状態からリハビリにウォーキングをうまく取り入れて、普段の生活に支障がないところまで回復した先生の実感をともなう言葉には説得力があります。