口は体への入り口。入り口がきちんと機能していないと、体全体への影響が出てきます。そして、お口の問題から体の他の部分の問題がわかることも。健康で整った歯をキープできているということは、自分の体の管理をしっかり自分自身でできているかどうかのバロメーターでもあります。
では、自分の口の中を健康に保つにはどうしたらよいのでしょう? 歯医者さんで定期的に検診を受けるだけでは、残念ながら口の中を良い状態に保つことは不可能です。数カ月に一度、歯医者さんで検診を受け、お口の中をクリーニングしてもらう。でもその他の日は? 規則的な食生活、睡眠サイクル、そして自分自身の口に合った歯の磨き方やフロス、歯周ブラシ、ウォーターピック等の器具の選択をしましょう。また、高血圧や糖尿病などの持病、喫煙の習慣などは歯周病のリスクを高めます。最適な管理の仕方はそれぞれの口や歯の状態、生活スタイルや持病によってひとりひとり違います。歯医者さんはその管理の仕方を教えることはできますが、そこから先、365日24時間、お口の管理ができるのは自分自身しかいません。「患者さんが自分自身でお口の管理をできるようにすること、治療ではなく予防が100%になることが最終的な目標である」と森田先生はおっしゃいます。
アメリカではヘルス・ケアの専門家の中で一番定期的に通われるのが歯科だそうです。痛みなどの問題が起こってから歯医者さんに行くのでは予防になりません。森田先生は、自分で自分の口を理解し、メンテナンスしていく予防治療が一番大事という信念を持って日々診療にあたられています。虫歯になってからや、虫歯が大きくなってしまってからでは、歯を抜く必要がでてくるなど、治療するのがどんどん難しくなります。日本では審美的な要素が強い矯正治療も、アメリカではかみ合わせがずれていることによる負担や歯垢歯石がたまりやすいことによる虫歯のなりやすさなどを取り除くための予防治療的な要素が第一にとらえられており、審美的な要素は二次的に考えられているそうです。
また、日本では一般歯科といわれる歯医者さんがあらゆる症状に対応するのが一般的ですが、アメリカでは専門医のシステムが取られています。たとえば矯正専門医、神経治療専門医など、それぞれの分野に特化して資格を持った歯科医たちがオフィスは違ってもチームで診療にあたります。高度な治療が必要な場合、一般歯科の先生がそれぞれの症状にあった信頼できる専門医を紹介してくれます。各分野に特化した専門性の高い歯科医がチームで治療にあたることで、より完璧に近い治療を行うことができるのです。
人間の体や生活スタイルは年齢を重ねるにつれ変化します。今虫歯がなくても、自分は虫歯のできない体質と油断しないようにしましょう。歯が1本でも生えてきたら歯のメンテナンス習慣を開始し、歯医者さんと二人三脚で一生続けていく、そんな時代がもう来ています。