同じ症状でも体質により処方薬が違うのが漢方の特徴のひとつ。筋肉量、体質、胃腸の強さなど個々の体質に合わせ、症状に応じた漢方薬を選択する方法はまさにオーダーメイドです。賀川先生によると実際に飲んでみて胃腸の調子がすぐれないと感じる場合は途中で切り替えることも可能で、病名が同じなら同様の薬を出す西洋医学とは異なる考え方です。基本的に1回の処方で方剤は1種類と服用はシンプルですが、この方剤の中に複数の生薬が調合されています。生薬に含まれる成分となると何百種類に及びますが「どれが薬効成分なのか明確にわからない」と先生に言わしめるほどごく微量。強い副作用がなく、じわじわ効いてくる漢方の特徴はこの多成分系に由来すると先生は考えており「身体に優しい薬というのは、複数の成分を少しずつ併せて摂る食事に似ているものなのかもしれませんね」と話します。
処方される漢方薬は日本人になじみ深い粉末状。賀川先生は、漢方では「良薬は口に苦し」は実はあまり正しくないと言います。「バッチリ合う人が飲むと苦いのも美味しいと感じます。しかも美味しいものは効く場合が多い。逆にまずくて飲めない時は身体に合わないことがある。味で相性がわかることもあるんです」。また、症状が改善されてくるとだんだん飲みたくなくなるそう。身体が欲しくなくなっていると患者さん自身が気づくそうです。
生化学博士であり中医学も深く学んだ先生は、2000年前の本に則った大筋に沿って効用や知識を積み重ねてきた日本漢方を用いています。実は漢方はアメリカでは法規制上サプリメントという扱いで自主規制のもと販売されていますが、日本漢方はトレンドを追った一般のサプリメントとは異なり多数の実証を蓄積したものなので安心して服用できます。
賀川先生のもとには、西洋医学のドクターから病気ではないと言われたが、日常生活で不便を感じるという方が多く訪れます。心理的にも経済的にも負担が高い不妊治療の成功率を少しでも上げたいと頼ってくる方も。先生によると「子宮の問題はわりと鍼が反応しやすい」そうで、子宮に問題があって着床がうまくいかない患者さんが鍼でうまくいった実績もあります。
おだやかに長く効く漢方薬に対し、即効性が高いのが鍼治療です。最近、先生自身も愛用しているのが皮膚に刺入しない置き鍼。鍼先がなく押圧の刺激なのでチクチクしません。仕事や趣味でどうしても同じ動作をし続けなければならない人は、治療が効いてもすぐ痛みが再発しがちですが「これを貼っておくと鍼の効力が長続きするんです」と、先生もその効き目に驚いています。治療で使う鍼は極細でしなやかな日本製で、肌触りのよいなめらかな補助管を採用するなど、鍼治療を心地よいものにするための細かな配慮がなされています。どうしても怖いという場合は磁石や植物の種を貼ってツボを刺激する方法でも効果が期待できるそうです。