吉田先生は今、「マインドフルネス」をとても面白いと注目しています。マインドフルネスとは、余計なことを忘れて「身の回りに起きていること」に集中し、そのままを受け入れるという実践方法です。大きく息を吸って吐いてを2、3回繰り返して心を落ち着ける。無心になるだけでなく、「今ここ」に集中する。身の回りに起きていること、存在していることに集中して、批判・評価せずに受け入れていきます。最初はうまくできないかもしれませんが、常に意識しながら訓練しているうちにできるようになるそうです。

マインドフルネスは日常の様々な局面で活用でき、その人を生きやすくしてくれます。例えば子育ての場面で、子供が騒ぎ出して収拾がつかないとき、ちょっとタイムアウトして深呼吸。騒いでいる子供を受け入れることで子供に優しく接することができ、良い方向に収まっていく。怒鳴るなど感情的になるよりも親子ともにストレスも少なくてすみます。赤ちゃんが泣きやまずにどうしていいかわからなくなったとき、マインドフルネスで深呼吸して落ち着いてからリラックスしてまた赤ちゃんと接する。親がカッとなったり、心配し過ぎたりすると、子供にも感情が不安定になるなどの影響もあるそうです。マインドフルネスで親が感情をうまくコントロールして子供と接することは、親子双方にとって良い方向につながりそうです。
また、将来について、人間関係について、まだ起こっていない先のことまであれこれ心配が広がって思い悩んでいるとき、マインドフルネスではまず心配している自分を批判せずに受け止めることをします。このとき、「心配さん、またきたね。仲良くしますよ。帰ってくださいね」などと人格を作ってみてもいいそうです。そのように受け止めて付き合っていくうちに心配性がよくなっていくとされています。うつなどの精神的なトラブルの対処にも活用されていて、アップル、グーグルといったシリコンバレーの企業でも効率アップのためにマインドフルネスを取り入れているとのこと。
吉田先生がマインドフルネスに興味を持たれたきっかけの一つが、すぐ近くのオフィスにおられるジェームズ・ドゥティ博士の著書『Into the Magic Shop』でした。ドゥティ博士は、現在スタンフォード大学の臨床神経外科教授で、利他精神研究教育センター(CCARE)の創設者兼所長としても活動されていますが、子供のころは決して恵まれた家庭環境ではなく、勉強も思うようにできなかったそうです。それが今でいうマインドフルネスを教えてくれた人生の師に出会い、夢への扉が一つ一つ開き、人生が変わっていきました。この本は日本語訳も出版されており、世界中で読まれているそうです。
育児、仕事、人間関係、経済的問題など様々なストレスにさらされる現代。マインドフルネスを取り入れることで「今ここ」に集中して自分を認め、他者を受け入れて未来への希望をもって豊かな人生を送りたいものです。