東京工業大学で生化学の理学博士号を取得後、渡米して分子生物学の研究者としてイリノイ州のアルゴン国立研究所に勤務。現在はマウンテンビューのNASAで微生物の宇宙利用を研究する科学者として働く賀川先生は、カリフォルニア州に移ってこられた頃から「中医学」に興味を持ち、サンノゼにあるFive Branches Universityで中医学修士号を取得するという、多才でバイタリティーに溢れる先生です。8年前に鍼灸・漢方のクリニックを開業した後でも、引き続き日中はNASAで働き、診療は木曜日の夕方と週末を中心に予約を受け付けています。

現代人の生活と切り離すことのできないストレスは、時には重大な病気を引き起こすため、決して軽視することなく、なるべく症状が軽い段階でメンテナンスをする事が大切です。賀川先生によると、「特に男性はかなり症状が進むまで放置されてることが多いので、もう少し早く来てくれたら」と感じることが良くあるそう。肩こり、腰痛、不眠などと言った症状に対して安易に「加齢のせい」などと片づけるのでなく、気軽に相談してみると良いでしょう。たとえば不眠の原因を更年期のせいだと諦めていた女性が、半信半疑で受けた鍼治療でぐっすり眠ることができるようになったり、病院で痛み止めしか処方してもらえなかった患者さんが、鍼治療によって根本的な不調を改善できたりと、中医学には底知れない効果があります。また、賀川先生は、患者さん一人ひとりの症状に合わせて処方された漢方薬を続けることで、身体の免疫力が高まり症状を改善する事ができると語ります。

鍼治療に怖さを感じる患者さんには、シールについた先が尖っていない「置き鍼」でツボを刺激する治療法があります。クリニックで鍼治療をして痛みが和らぐと、ついその部分を酷使して、また元の状態に戻ってしまいがち。そういった人も、鍼治療と併用して置き鍼を使うと、施術の効果が持続するそうです。置き鍼は10枚2ドルで購入できるので、先生は「医者要らずになってしまうわね」と冗談めかします。
耳の形を胎児の形に見立て、耳にあるつぼを全身に置き換えて行う「耳つぼ鍼」という施術は、小さめの置き鍼や極小のマグネットまたは植物の種を耳のツボに貼って刺激することで全身の問題を治療します。耳は頭に近いせいなのか食欲や喫煙、痛みのコントロールといった精神や脳神経の問題によく使われるそうです。
女性が喜びそうな「美容鍼」は、0・12mmという髪の毛より細い鍼を顔に15カ所打ち20分前後放置する施術で、血行が良くなり、顔色が明るくなり、カサつきが改善され、化粧のノリが良くなる効果があるのだとか。顔に鍼を打つにもかかわらず、うとうと眠ってしまう人もいるほどやりやすい施術のため、アンチエイジングとして取り入れる患者さんも多いそうです。
研究者魂を根底に持つ賀川先生。そのパッションは留まることを知らず、患者さんの健康的な生活のためを考えています。