親切で柔軟な対応患者さん家族も安心

　中村ゆか先生が所属する同院はアーノルド・ガトライザー医師による個人経営。そのため、企業などにある規制に縛られることなく多様な患者さん家族の希望にも柔軟に応じてくれます。アットホームな雰囲気で親しまれ、何十年も通うリピーターや、遠くから通う人々も多いそうです。遠方からの患者さん家族も渋滞を避けた時間に診療を受けられるようにと、週末も営業。月曜から木曜までの平日は朝7時半から夜8時までと長い時間受け付けてくれることも、人々から信頼される理由です。
　中村先生はもともと動物が大好きで獣医を目指し、日本の獣医大学を卒業。その後、日本にはなかった獣医の神経科専門医の資格を取得するため渡米しました。UC DavisとUCSFで学び、アメリカの獣医師免許を取得。結婚し、出産・子育てをしながらテクニシャンとして働きつつ獣医師免許を取得したという努力家で愛情深い中村先生に、ペットの医療に関する最近の情報を伺いました。

アメリカでのみ受けられるアレルギー治療

　患者さん家族から多く寄せられる悩みの一つはペットのアレルギー。皮膚のかゆみや外耳炎などの症状があります。日差し、花粉、芝生といった環境アレルギーの場合、環境を変えることは難しいため、薬などの処方が必要に。中村先生によれば、アメリカでは「モノクローナル・アンチ・ボディ（モノクローナル抗体）」という、アレルギーが全身に広がる前に細胞同士のコミュニケーションをブロックするテクノロジーが進んでいます。人間にも使われるテクノロジーで、その治療薬「サイトポイント」は、効き目がよく、ステロイドではないため副作用もなく安全。1回の注射で1〜2カ月効果が続き、毎日錠剤をあげる必要がなく、飼い主への負担も少ないことから人気だそう。日本ではまだ認可されていないようです。

見逃しがちな肥満色々なサービスを1カ所で

　もう一つ、よくある症状は肥満。アメリカの犬や猫は80%が肥満と言える状態なのだとか。猫の平均体重がヨーロッパでは9ポンド（約4キロ）なのに対し、アメリカでは13ポンド（約5・8キロ）。アメリカでは周りに太っている子が多いため、飼い主が肥満に気づかないケースが多いそうです。注意する点としては食事は1日2食（子犬は3〜4食でもOK）を守り、出しっ放しにしておくのはNG。おやつのカロリーも見逃しがちです。人間用の食事は塩分と油分が多すぎるので、ペット用にホームクッキングするのであれば良いそうです。またアメリカでは最近デイケアも人気。「毎日犬を散歩に連れて行くのが大変であれば、例えば週に2回だけ利用するという選択肢もあります」と中村先生。1日40ドル程度で他の犬と遊ばせてもらい、飼い主は自分の子が思い切り走り回る様子をウェブサイトで確認することができるそう。
　その他、同院ではウエイトマネージメントやインフルエンザ予防注射、虫歯やデンタルクリーニング、帰国のためのマイクロチップ装着などにも対応しています。また、グルーミングやペットホテル、ペット保険の相談にも乗ってくれるため、色々なサービスが1カ所でできます。必要な時には気軽に相談ができる、ありがたい存在です。