現在マウンテンビューのNASAで微生物の宇宙利用を研究する科学者として働く賀川先生は、東京工業大学で生物学の理学博士号を取得後、イリノイ州のアルゴン国立研究所で分子生物学の研究者というバックグラウンドを持つ。華々しいキャリアの持ち主でありながら、鍼灸師を志した理由は、人間ドッグで原因を見つけられなかった家族の慢性疲労が鍼灸と漢方で治ったことに感動したことがキッカケで、9年前にクリニックを開業してからは科学者&鍼灸師と2足のわらじで活躍されています。相容れない印象を受ける「科学と鍼灸」について伺ったところ、人間はバクテリア1匹作ることもできないのに対して、科学を学ぶことで自然が上手くできていることを思い知らされるので、自然をうまく生かす鍼灸と科学には通じるものがあると考えるのだそう。
研究者という孤独な仕事に対して、鍼灸師はコミュニケーションが取れて患者さんの人生から学ぶことができる両極端な性質をもつ2つの仕事が、良いバランスとなっていることがハツラツとしたお姿から読み取ることができました。

女性に人気の美容鍼は、髪の毛より細い0・12mmの鍼を顔に打つ施術で、血行が良くなり乾燥が改善されるので、翌日の化粧のノリでその効果を実感できるのだそう。皮膚が薄く敏感な顔に刺す鍼であっても痛みはほとんど感じないので慣れればウトウト眠ってしまうこともあり、アンチエイジングやリフレッシュとしてエステ気分で定期的に通う患者さんも多いようです。
同院では日本製でもっとも快適と言われるセイリン鍼を使い、局所的な痛みに対しても約1時間半をかけじっくりと全身にアプローチする施術を行うので、全身の気の流れが整って高い効果を得ることができるのだそう。
鍼治療に怖さを感じる患者さんには、シールに極小のマグネットや植物の種が付いている「耳つぼ鍼」や、先が尖っていない鍼がついたシールでツボを刺激し続ける「置き鍼」で鍼を刺さない鍼治療もあります。またクリニックの鍼治療と併用するとより効果的となる、自宅で使える置き鍼を10枚2ドルで購入できるので「医者要らずになってしまうわね。」と賀川先生。

一言で鍼と言っても、中国鍼は「長い鍼を深く、本数が少ない」に対して、日本鍼は「細い鍼を浅く、本数が多い」と相違があります。痛みが頭から離れないような施術ではなく、痛みの少ない快適な施術を求める賀川先生は、日本鍼にこだわり治療を行っています。また漢方も、中国式は処方する人によってブレンドが異なるのに対し、日本式は古典のブレンドを元に処方するため、効果と安全性が2000年以上の実績から証明されており、重篤な副作用が少なく高い効果を得られる日本式を扱っているのだそう。
現代病ともいわれるストレスを軽視せずなるべく症状が軽い段階でメンテナンスを行う事が鍵で「特に男性はかなり症状が進むまで放置する事が多いので、もう少し早く来てくれたら」と感じることが良くあるそう。肩こり、腰痛、不眠などの症状に対して安易に「加齢のせい」などと片づけず早めに相談して欲しいと語ってくれました。