「日本では一般的な健康診断は受けても、婦人科にかかる女性はまだまだ少ないのです」と地口先生。例えば、人間ドックなどの定期検診で貧血と診断されると、内科で鉄剤などの薬の処方を受けられますが、貧血の原因である月経の問題が放置され、長年薬を飲み続けていても、いっこうに症状が改善されないケースなどがあります。日本では診察時間が短いため、なかなか医師に質問しにくい雰囲気がありますが、地口先生は、一人ひとりの患者さんに時間をかけ丁寧に診察する努力をされているそうで、患者さんにも多くの質問をしてほしいとのこと。アメリカでは、大抵の保険でカバーされる年に1度の健康診断を婦人科でも受けられるので、全身のチェックを受けることがお勧めです。
ベイ産婦人科メディカルグループで受診できる健康診断では、内科検診で調べる肝機能、腎機能、脂質検査、血液検査、甲状腺検査等に加えて、乳がん検診と婦人科疾患(女性骨盤の疾患)全般のチェックを行います。婦人科検診で発見される可能性がある病気は、子宮の病気(子宮筋腫、子宮腺筋症などの良性疾患や子宮頸がん、子宮体がん、子宮肉腫などの悪性腫瘍など)、卵巣の病気(卵巣がん、卵巣のう腫、卵巣内膜症性嚢胞など)のほか、子宮、卵巣の感染症(性感染症を含む)など。婦人科系の病気は、良性の病変でも放置すると進行し不妊の原因となったり、日常生活にも影響が出る可能性もあるので、一般的に成人女性は数年に1度は婦人科検診での骨盤内チェックが勧められています。
最近、新たに先生が取り入れている分野としては、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と、大腸がん・子宮体がん等が関係するリンチ症候群(HNPCC)のスクリーニング検査があります。これは、患者さんとその家族の癌の既往歴を質問票で詳細に調べることにより、家族性の癌のリスクが高いと判断された方に遺伝子検査をお勧めするものです。検査は、マウスウォッシュにより細胞を採取するという簡単なもの。「実際には、この検査を受けた方の9割は陰性なので大半の方は受けることにより余計な不安感から解放されることになります。陽性であった方は、特別なスクリーニング検査を行うことにより早期発見に努めます。HBOCの場合、40歳までに予防的に卵巣切除することが強く勧められているので、そのための妊娠の計画についてのアドバイスもしています」と地口先生。この遺伝子検査は、保険も適用されるケースも多いので、定期健診と一緒に勧められています。
同グループは、妊娠、出産、産後までのすべてをサポートしています。アメリカの多くの産科クリニックでは、妊娠検査薬で陽性と出た後も初診まで待たなければいけませんが、地口先生は「気になる場合は、6週〜7週でも来院してください」と言い、胎児の心拍を早めに確認したいといった希望にも応えています。出産は同クリニックからほど近いバーリンゲームにある、2011年に全面改装されたミルズ・ペニンシュラ・メディカル・センターで、陣痛、分娩、産後管理までを全室個室の同じ部屋で行います。家族も自由に出入りができ、広い室内でリラックスできる環境になっています。