当事務所のお客様より時々、永住権申請では、なぜ待ち時間が生じることがあるのか、待ち時間が生じているかどうかはどのように確認できるか、などという質問を受けます。今号では、永住権申請の待ち時間に関係してくるビザ定数(永住権定数)とその管理について説明いたします。親族ベース、雇用ベース永住権とも毎年度定数があり、米国国務省が定数につき管轄になっています。
米国に永住する場合は、多くの場合、親族または雇用主を通し永住権を取得していきます。移民法の下、米国政府は、毎年永住者になれる数(ビザ定数)を管理していて、その数を超えては、永住権を発行できない決まりとなっています。
親族ベースの基準数は22万6000で、雇用ベースは14万になっています。思ったより少ない数に感じるかもしれません。ただし、これは主たる申請者の数で、一緒に永住する家族の数は入っていません。ですので、実際の永住権での移住者は、法定数よりはだいぶ多くなります。
先に説明しましたが、ビザ定数を管理しているのは、米国国務省です。永住権申請は、親族ベース、雇用ベースとも移民局に申請書を提出し、移民局が審査をします。しかし、最終的に永住権を許可する前に、国務省が永住権の申請数をその都度確認し、永住権発行を認証する必要があるのです。永住権の各条件にあっているかどうか、実質的な審査は移民局が行いますが、最終的に永住権を与えるかどうかの最終判断は、国務省に権威があります。
それでは、申請者が定数に達しているかどうかについては、どのように知ることができるでしょうか? これについては、国務省が、毎月、ビザ広報(Visa Bulletin)をインターネットを通し、公開しているので、知ることができます。概ね毎月10日前後にこのビザ広報が更新されます。国務省(Department of State)のウェブサイトに行けばVisa Bulletinの項目があるので、そこですぐ確認できます。
親族ベース、雇用ベースともいくつかの区分を持っていて、区分ごとに細かい定数があります。区分ごとに法定数に達しているかどうか、ビザ広報で知らせています。例えば、米国永住者の配偶者の永住権申請の場合、最新の情報によると、すでに法定数に達しており、待ち時間が生じていることを伝えています。概ね1年半程度の待ち時間の可能性があります。雇用ベースですが、国際企業のマネージャー級については、定数に達していませんので、待ち時間はありません。
あと、特定の国については、過去の永住権の数が多く、他の国には適用されない特別の時間制限を設定されているところがあります。中国(本土)、インド、メキシコ、フィリピンは、近年、米国への永住者数が非常に多く、時間制限を設定されています。例えば、カテゴリーEB―3(大学卒の専門職や2年以上の経験を問われる技能職)については、インドは、11年の待ち時間が生じています。ただし、この待ち時間は、その時々の申請者数の変化に応じ、変化しますので、待ち時間が更に長くなったり、反対に短くなったりします。