米国現政権下では、永住権申請および市民権申請において、許可を得るために不正行為をしている申請者を特定するための専門のオフィスを新たに立ち上げています。不正行為は今の滞在資格の剥奪にも繋がります。今回は、市民権がどのような理由で剥奪になるかを説明致します。
外国人が米国市民になるためには、18歳以上であり、永住権を取得し5年経過し、さらにそのうちの2年半以上は、米国に滞在している実績が必要になります。あと、申請直前は、その州に3ヶ月は最低住んでいる必要があります。もし、2年半に満たなければ、2年半を満たすまで待つ必要がでてきます。結婚ベースで永住権取得した人は、5年より時間が短縮されます。
申請書を移民局指定のセンターに提出し、後日指紋採取があり、その後、申請者の住所を管轄する地方移民局の市民権面接に呼ばれます。面接では、英語と公民に関してのテストがあります。ただし、永住権取得後の年数や年齢を考慮され、一部のテストが免除されることもあります。また、面接では、申請書の中の様々な事項について質問されます。この面接に合格すると、後日宣誓式が設定され、宣誓のうえで市民権を取得します。
市民権を取得すると海外に長い間出国していても、市民権はなくなりません。永住権は、移民局の許可なしに米国を1年以上離れると永住権を喪失する可能性がでてきます。市民権の剥奪は、全体の申請者数に比較すると稀ですが、毎年ある程度の剥奪の例がでています。市民権申請に関し、不正行為を理由に申請を取り消され、国外退去になった人は、2016年のDHS(Department of Homeland Security)の報告によると、少なくとも858人に登るようです。
市民権剥奪の主な理由は、違法な手段での市民権の獲得や市民権申請において、市民になる条件として重要な事項について事実を隠す行為があります。重要な事項の例ですが、共産党員であるかあるいはあったかどうか。テロリスト組織に加入しているか、加入していたか。ナチの活動に加わっていたか。大量虐殺の加害者側についていたか。重大な犯罪を犯していたか。といったような事項が、重大な事項に該当します。犯罪については、すべての犯罪が市民権申請に影響するわけではありません。申請書において、犯罪の事実があれば、隠すことはできませんが、軽い犯罪であれば、市民権申請と取得に影響がないものもあります。この辺は、細かい分析が必要になってきます。
申請書(N‒400)の中で、重要な事項に該当するにもかかわらず、ノーと答えた場合は、市民権申請は取り下げられ、国外退去になる可能性がでてきます。このような行為を移民局が発見すると、市民権を剥奪するための裁判が執り行われます。
現政権下で移民局は、上記のような違反を専門に取り締まるためのオフィスを立ち上げました。取締のための予算もだいぶ増額されています。これにより、取締はかなり強化され、国外退去の人数も増えて行くかもしれません。