BaySpo 1008号(2008/02/29)掲載
「フェリー・ビルディングで本物の鰹節を発見」
ェトロ・サンフランシスコ・センター 曽根 一朗
曽根 一朗(そね・いちろう)
1988年JETRO入社。展示事業部、海外事業部、ロサンゼルス事務所、国際交流部、対日投資部、外務省北米局等勤務を経て、2005年3月より現職。京都府出身。同志社大学文学部卒。

 サンフランシスコのランドマークのひとつ、フェリー・ビルディング。4年間の改築を経て、2003年にオーガニック食品を中心とする店舗・レストランが軒を連ねる魅力的な建物に生まれ変わりました。毎週開催されるファーマーズ・マーケットとともに連日大賑わいとなっています。
 今やオーガニック食品の聖地となった同ビルに店舗を構える企業のひとつにビューレット・ラーダー(B/L)http://www.bouletteslarder.com/があります。同社は、なんと最近、四国から鰹節と昔懐かしい削り器の輸入、販売を始めました。

【本物の鰹節を探して】
 同社の顔は、シェフで経営者のアマリル・シュワートナーさん。同社はフランス、イタリア、モロッコ等世界中の珍しい食材を使い、ヘルシーな料理をレストランで提供、同時に食材も店舗と自社サイトで販売しています。アマリルさんは、「料理と接する中で、食材の繊細さ、質の発見について自然に感覚が研ぎ澄まされている。そこで養われたシェフとしての自然な勘ともいうべきものが自分を日本の食材に向かわせている。日本の食材への興味は尽きない」と話します。日本料理の繊細な味の醍醐味のひとつである「だし」について、もともと茶碗蒸しが大好きで昆布だしは自分でつくっていましたが、鰹だしについて当地ではパック入りの削った後の鰹節しか手に入らず、長年本物を探し求めていました。
 そこで出会ったのが当地でコンサルタントとして活躍するパシフィックビジョン・パートナーズのエド・イフシンさん。エドさんは、たまたま知人である四国の有名な鰹節会社から米国に輸出したいと相談を受け、売り先を探しているところでした。顔なじみだったB/Lに持ち込んだところアマリルさんが飛びついたという訳です。

【食材のもつよさを最大限引き出す】
 アマリルさんは、「私はハンガリーで生まれ、難民として米国に来た。言葉も分からない異国で生活した経験から、それぞれの土地が持つ固有の食文化への感謝の気持ちを自然に持っている。私は「フュージョン」という言葉は好まない。色々なものを混ぜるのではない。シェフとして、日本の食材を用いて、ただそのよさを最大限引き出すということ。日本料理をつくるのでもない」と言います。

【食材のもつストーリーを提示】
 また、「その食材の持つ歴史や「誰がつくった」「どこでつくられたか」というストーリーを紹介することが重要で、顧客もそこに興味がある」と言います。調理法についても、店舗の中にオープンな厨房があり、お客様の「この食材はどう調理したのか」という質問にその場で見せながら答えることもあります。

【日本の高級食材に市場はあるか】
 さて、どんな人が実際に「鰹節セット」を買っていくのでしょうか。まずは同業者、他のレストランのシェフたちです。アマリルさんと同じような日本の味の求道者がいるのです。次にそれぞれの理由をもった一般のお客様。例えば、祖母が持っていたのを懐かしむ日系人の方、食通の知人への珍しいギフトアイテムとして購入する方など。あとは同レストランに通う食通の皆さんです。
 アマリルさんが次に扱いたい日本の食材は、柚子・海藻類・茶のほか、塩や砂糖だそうです。例えば、アマリルさんは和菓子等で使われる砂糖について、非常に多くの種類があり、高品質で驚いたそうです。基本的な食材・調味料なだけにお客様にとっても味・質の違いがはっきりして、わかりやすいのではないかとの話でした。同社では、日本食材専門のWEBページをつくる計画です。
 B/Lが扱う食材のロットはビジネスとしては小さいものです。ただ、日本国内で伝統的な高級食材を扱う、特に地方の中小企業が国際的にビジネス展開しようとするときに、「SFのフェリー・ビルディングに入っている高級食材専門の○○社が自社食材を輸入販売している」というのは大いに宣伝になりますし、次のビジネス展開への確実なきっかけになります。日本食品・食材は、日系メーカーや商社が長年苦労して米国市場で普及させてきたものです。次のステージとして、B/Lのように日本の食材のよさを理解し、直接輸入する米国企業が出てくることで、さらに市場が拡大することでしょう。インターネット販売もこれら企業が国際展開するための大きな武器となります。

【オーガニック食品市場の中心地、SFベイエリア】
 米国の調査会社スカボロー・リサーチが米国の主要79都市を調査したところ、サンフランシスコが全米で最もオーガニック食品の普及している都市となりました。調査によると、サンフランシスコでは前の月にオーガニック食品を使用した成人の数が35%となり、全米平均の17%を大きく上回っています。
 「スロー・フード」という言葉を聞かれたことがあるでしょう。お手軽なファスト・フードの対極にある言葉で、ヘルシーで思慮深い食体験を標榜し、地元の農産物や食文化を尊重する活動です。地元の食材をファーマーズ・マーケットで販売するフェリー・ビルディングはまさにスロー・フードを体現する場所と言えるでしょう。
 フェリー・ビルディングでは、同じく地元の食材を使って日本の惣菜を提供するDELICA rf-1の店舗も大人気です。シリコンバレーにR&D拠点を持つ日本のIT企業は多いですが、以前取材させていただいた際に同社岩田康弘社長から聞いた「食のR&Dをするためにサンフランシスコに店舗を出しました」という言葉が、サンフランシスコの米国食文化におけるポジションを表していると思います。是非一度食の最前線を味わいにフェリー・ビルディングにお立ち寄りください。

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