BaySpo 1012号(2008/03/28)掲載
データセンターと「仮想化」技術の密接な関係
ェトロ・サンフランシスコ・センター 中島 丈雄
中島丈雄(なかじまたけお)
ジェトロ・サンフランシスコ・センター調査部。1992年JETRO入社、情報システム室、中小企業庁国際室、経済産業省米州、JETROニューヨーク調査部、海外調査部北米課などを経て、2006年10月より現職。東京都出身。

 企業や個人が取り扱う情報量は加速度的に増えており、データを大量に安全に運用管理できるデータ・センターの需要が急拡大しています。しかしデータ・センターの維持には、膨大な電力とコストがかさむのが問題で、近年「仮想化(virtualization)」技術に期待がかかっています。

自動車130万台分の
Co2排出量を削減可能
 調査会社IDCによると、2009年までに米民間企業が運営するデータ・センターは、統合と大型化が進むものの、全米で約7000ヵ所にもなります。データ・センターは、多数のサーバ、各種通信設備、自家発電設備、空調設備などが装備された情報の基幹設備。地震、火災、外部からの攻撃、ハッキングなどを防ぎ、停電や障害時にもなお24時間稼動し続けることが求められます。データ・センターにとっての大きな敵の一つは「熱」です。機器の温度を一定に保つため大型の空調設備や冷却装置は欠かせません。米エネルギー省は、米国データ・センターのほとんどで、電力消費の6割近くが冷房装置と電源の変換(直流―交流の変換)に使われ、サーバそのものの消費電力はせいぜい4割程度だと分析しています。
 同省は、「データ・センターは全米電力消費の1.5%を占め、今後毎年12%のペースで電力消費が拡大する」(2007年9月レポート)と見ており、電力消費の「悪玉」の一つにされています。データ・センターのエネルギー効率を10%削減すれば、一般家庭で年間100万戸相当の電力と、年間130万台の自動車が排出するのと同等のCo2を削減できると言われます。
 データ・センターの消費電力を削減する方法について、当地のNTTさんに聞くと、(a)冷却効率の改善(部屋全体ではなくサーバだけを集中冷却するなど)、(b)建物の熱効率の改良(デザイン、配置)、(c)電源変換回数の削減、そして(d)「仮想化」が有望とのこと。特に(d)は近年注目されているソフトウェアです。仮想化という言葉はなじみのない日本語ですが、1台のコンピュータ/サーバを文字通り仮想的に何台も同時に動作させたり、逆に複数の機器を1台に統合し動かしたりする技術で、省エネ、コスト削減、作業のスピード化・効率化などに資すると期待されています。
 米国の小売業界の売上げは、一般に11月の感謝祭からクリスマスにかけて最も集中します。例えば、AmazonのようなEコマース企業は、トラッフィックのピークに合わせてサーバの容量、処理速度、回線速度などを想定し、パンクしないためにもかなり余裕を持たせた投資をしてます。しかしオフピーク時には、容量がだぶつき、無駄が生じる。稼動不要なリソースを他企業に貸したり、電源をこまめに落としたりしていますが、さらに細かな設定のできる仮想化技術を導入し、効率性を向上させているということです。
 この市場では、VMWareとマイクロソフトが最大手ですが、IBM、HP、インテルなども次々関連ビジネスを展開し始めています。VMWareは2007年8月にニューヨーク株式市場に上場。同年10月末には124ドルのピークをつけ、アナリストから「130ドル突破は確実」とまで言われました。しかしその後米景気の後退によってIT設備投資が不透明になり、またマイクロソフトによる仮想化技術企業Citrixの買収、その他相次ぐライバル企業の参入によって、同社の優位性はやや薄まり、株価は3月9日現在43ドルにまで落ちています。しかし業績は好調ですし、むしろ競争相手の相次ぐ出現は、仮想化市場の有望性を示すものと言うべきでしょう。

日本の同市場は
非常に小さい
 調査会社IDCによると、世界の仮想化市場は2006年の約55億ドルから2011年までには117億ドル(約1兆2000億円)程度に拡大すると見られます。日本の同市場も拡大しますが、2011年で550億円(IDCジャパン予測)程度にとどまる見込み。仮想化技術は大規模なサーバ設備があってこそ効果を発揮しますが、土地・人件費等のコスト高によって、日本ではデータ・センター市場そのものが伸びないということが大きいようです。
 米国企業数社に、日本でのデータ・センター設立の可能性を聞いたところ、「(日本以外の)アジアにはデータ・センターを設置しているが、日本はコストが高くて難しい」との回答でした。日本企業の中には、沖縄などのコストが安く地震の恐れが少ない地域にデータ・センターを置く動きが出ています。しかし地震対策、緊急時対応がしっかりしていれば、日本には優れた省エネ技術があり、そもそも安全・安心・安定では世界有数の国。データ・センターを置くのに良い条件はあります。「コストは高いが、絶対に落ちてはいけない重要なデータは日本に置く」という外国企業が出てくるかもしれません。

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