本年7月7日から7月9日にかけて、北海道洞爺湖において世界主要国の首脳等が集まるG8サミットが開催されます。そこで議論される主要テーマの一つが「地球温暖化問題」です。この問題は「気候変動問題」という言葉で表現されることもあります。
皆さんも御存知の通り、二酸化炭素やメタン等の気体(温室効果ガス)は、地表から熱が宇宙空間に逃げるのを妨げる働きがあるため、これら温室効果ガスの増加により、地球全体で温度が上昇する「地球温暖化」の恐れがあるとされていますが、単なる温度上昇にとどまらず、干ばつや洪水等の異状気象を引き起こす恐れがあるということで「気候変動問題」とも言われます。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第3次報告書において、1750年から2000年までの250年間の主たる温室効果ガスによる温暖化への寄与度は、二酸化炭素が約60%、メタンが約20%、亜酸化窒素が約6%、フロン類が約14%であったと推定されています。つまり、二酸化炭素が地球の温暖化に大きく寄与してきたわけです。
ちなみに、地球温暖化係数という温室効果の強さを示す数値によれば、二酸化炭素を1とした場合、メタンは21、フロン類は約100から約20,000となっています。フロン類はエアコンや工業洗浄プロセスなどに使用されていますが、メタンはゴミ処理場からの発生以外に牛のげっぷも発生起源となっており、このげっぷも各国の排出量の計算の際には計上されることになっています。
米国の場合、2002年ベースで、排出している温室効果ガスの約83%が二酸化炭素であり、メタンが約9%、亜酸化窒素が約6%、フロン類が約2%となっています。ちなみに、日本の数値は、2005年度ベースで、二酸化炭素が約95%、メタンが約2%、亜酸化窒素が約2%、フロン類が約1%です。米国でメタンの寄与度が大きいのは、牛のげっぷが多いからかも知れません。
世界全体で見れば、二酸化炭素の排出起源のうち、エネルギー消費の際に発生するものが全体の約7割を占めていることから、エネルギー消費の抑制を通じた二酸化炭素排出量の削減は大きな課題となっています。エネルギー起源の二酸化炭素排出量について、米国は世界全体の1/4を占めています。また、京都議定書で定められた米国の温室効果ガス排出削減目標数値は1990年比でマイナス7%ですが、2002年実績では、1990年比でプラス13%となっています。
エネルギー消費の抑制と言っても、難しい問題が数多くあります。例えば、電気を使用する際に二酸化炭素はほとんど出ませんが、石油等を原料として発電する際に、二酸化炭素を排出しますし、石油等を電力に変換する際に約6割のエネルギーがロスされています。このように発電プロセスでのロスは大きいのですが、消費者にとって比較的安全なエネルギーであるため、高齢者が増加すると電力使用も増加すると言われています。単身世帯の割合が増加すると、国民1人当たりのエネルギー消費効率は低下するという分析結果もあります。
また、24時間営業のコンビニエンスストアの夜間営業を抑制すれば良いかと言えば、そうとも言えません。夜間に使用されている電力は、いわゆるベース電源と呼ばれる四六時中動かし続けている発電所から供給されているものが大部分なので、電力を夜間に消費しなくても、結果的に発電は続けられ、二酸化炭素も排出され続けます。もちろん、このベース電源の構成を抜本的に変えれば別でしょうが、その場合には、電力価格の上昇や工場の製造コストの増加を通じて、各種製品価格の上昇につながる可能性が高いと思われます。
新エネルギーとして脚光を浴びている太陽光発電や風力発電についても、天気が曇ったり、風がやんだりすると発電量が急激に低下することから、主要電源として依存することは困難です。病院などで使用しているエネルギーは電気が大部分だと思いますが、天気が変わったからといって手術室が停電すると非常に困るわけです。
生物起源であるバイオマスというエネルギーを利用すれば、二酸化炭素の排出は増加しないと言われており、各国でバイオマスの利用が進められていますが、自動車用にトウモロコシ等を利用したエタノールの増産を行った結果、世界的に穀物価格が急上昇したことは記憶に新しいと思います。
このように、エネルギーは私達の日常生活に密着したものであるため、ある一面だけを見て対策を行うと、別の側面で負の影響が発生しかねないことから、全体を見渡したバランスの取れた対策を、長期的に講じていくことが不可欠であり、それゆえに非常に難しい分野だと言えます。地球温暖化を防止するため、北海道洞爺湖サミットにおいて、人類の英知を結集した議論が行われることを期待したいと思います。
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