BaySpo 1036号(2008/09/12)掲載
テスラ、いよいよ公道へ
CTOのJBストラウベル氏に聞く
ジェトロ・サンフランシスコ・センター 中島 丈雄
中島丈雄(なかじまたけお)
ジェトロ・サンフランシスコ・センター調査部。1992年JETRO入社、情報システム室、中小企業庁国際室、経済産業省米州課、JETROニューヨーク調査部、海外調査部北米課などを経て、2006年10月より現職。東京都出身。

 100%電気で走るスポーツ車「Tesla Roadster」が、間もなく公道にお目見えします。サンカルロスにあるテスラ・モーターズが作るTesla Roadsterは、3時間半の充電で約430キロの走行が可能なうえ、スタートからわずか4秒で時速60マイルに達する強烈な加速力を持っています。電気自動車は120年以上の歴史を持ち、初期には非常に有望と見られたようですが、コストや使い勝手の面でガソリン車やディーゼル車に大きく後れをとります。80年代にはGMの「EV‐1」などの電気自動車が登場したものの本格普及にはいたらず、近年はフォークリフトやゴルフカートなど、限られた用途にしか使われなくなっています。

 しかし、環境意識の高まりや特にバッテリー技術の発達に伴い、各国で電気自動車復活の動きが見られます。ただし性能的には実用に近づいても問題は価格。一般の購入者を対象にすると、いくら環境保護に熱心な人でも、市販車の2倍も3倍もするのでは買いません。Teslaはむしろそれを逆手にとって、高級スーパースポーツカーとし、あえて購入層を絞り込むことで、ビジネスとしても成功させようとしています。

 価格は10万9000ドル(1200万円)と高価ですが、第一回販売分の600件はすでに予約が満了、キャンセル待ちが400人超に上るとのこと。2003年の設立以来、創業者エバハード氏の解雇、度重なる販売開始延期、ライバル企業との訴訟など、大企業にはない危うさもベンチャー企業ならではかも知れません。当面は米国と欧州のみの販売ですが、最高技術責任者(CTO)のJBストラウベル氏は、「日本は有望市場だ」と述べています。

JBストラウベル氏との一問一答
Q:過去の電気自動車は失敗続きだったが、何が変わったのか。
JB氏:燃料価格の高騰、環境問題などがあるが、リチウムイオン・バッテリーの性能向上が大きい。安全性、信頼性の向上、価格の下落が効いている。10年前のバッテリーは450kgの巨体だったが、いまやバッテリーの重さも価格も2分の1になった。

Q:デトロイトではなくシリコンバレーで作る理由は。部品の調達は。
JB氏:シリコンバレーは、若い企業に理解を示す人材や資金が集まりやすい。デトロイトにも優れた人材はたくさんいるが、伝統ある自動車産業の政治的な「殻」をやぶっていくのは大変だ。ここは、電気工学や機械工学の技術をもった人材も豊富。ただしデトロイトのオフィスには、自動車工学の経歴をもつ従業員が多くいる。要は適材適所ということだ。

 部品は世界中から調達し、開発や最終的な組立はシリコンバレーでおこなう。カリフォルニア州は税控除や資金協力で当社を支援してくれている。新工場はニューメキシコ州に作る計画もあったが、手厚い奨励金と税控除が提示され、ここに決めた。人件費は高いが、自動車を作るコストの中で人件費は決定的に重要とはいえない。事実、トヨタとGMもこの地域にNUMIを長年(1984年〜)操業している。台湾にエンジン製造工場があり、シャーシはノルウェーのHydro Aluminumから調達している。リチウム・バッテリーは日本。会社名は明らかにできないが、最高レベルのバッテリーを製造している企業だ。

Q:電気自動車に関する他社の動きをどう見るか。
JB氏:大企業は簡単に方向転換できないので、われわれのような小さな企業にチャンスがある。他に製造能力のある新興企業はまだない。ただし数年後はわからない。従って当社は、運転の楽しめるスポーツ電気自動車という独自の道を選んでいる。環境保護と同時に運転を楽しむことにも興味がある人を顧客にしたい。日本の消費者は環境意識が高く、有望市場だ。

(中島丈雄、大和田貴子)

テスラ・モーターズ
 2003年7月設立。従業員数250人。現会長はペイパル創立者イーロン・ムスク氏。2008年5月時点の投資(受入)額は1億4000万ドル。2006年、グローバル・グリーンUSAより「環境リーダーシップ賞」、2007年、ビジネスウィーク誌と全米産業デザイン協会より「2008年国際デザイン優秀賞金賞」を受賞。ロサンゼルスとメンロパークにショールームがある。

メンロパークのショールーム

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