サブプライムローンの問題に端を発し、全世界の経済への悪影響が懸念される中、シリコンバレーの状況はどうなるのでしょうか。
プライスウォーターハウス・クーパースが公表しているデータによれば、シリコンバレーにおける2008年第3四半期のベンチャーキャピタルの投資額は同年第2四半期よりも約7%減少していますし、カリフォリニア州政府の統計データでは本年9月のサンタクララ郡の失業率は6.5%と依然として高率ですが、正直なところ、今後どうなるかは誰にも分からないということだと思います。
2000年頃にITバブルがはじけた際には、日に日にシリコンバレーのフリーウェイを走っている車が減っていったと聞いており、毎日の通勤時に数多くの車を見るたびに、「どうなるんだろう」という思いを抱きます。
著名な米国ベンチャーキャピタルであるセコイア・キャピタルが、今年の10月初めに投資先の会社幹部を緊急招集してプレゼンを行ったと言われていますが、そのプレゼンとされているものを見ると、R.I.P.(Rest in Peace:安らかに眠れ)という墓碑銘をかたどった最初のページから“Get Real or Go Home"(現実的な対応をできないなら家へ帰れ)という最後のページまで、これでもかというぐらい徹底的に危機感を煽るものになっています。
単なる株価の暴落ではなく信用そのものが収縮しているため、底がどこにあるのかもわからず、少なくとも今後2年は回復しないと思われることから、デススパイラルに陥る前にゼロベースでコストを徹底的に見直せというのが趣旨のようです。
一方で、資金面で余裕のある企業にとっては、株価の下落で企業の買収コストが下がる、あるいは市場への製品投入サイクルが長期化することから次世代製品に係る戦略を入念に検討できるなど、今回の金融不況は必ずしも負の側面ばかりではないようです。
このような中、先日の米国大統領選挙で、オバマ氏が次期大統領に選出されました。オバマ次期大統領の直面する課題として、経済問題や外交問題に注目が集まっていますが、オバマ次期大統領は、技術とイノベーションに関する選挙公約も行っています。その中では、インターネットの中立性確保や情報開示等を通じた市民に開かれた政府の実現等に加えて、米国史上初めてのCTO(最高技術責任者)の任命、全米通信ネットワークの充実、周波数帯の開放、環境技術の実用化に向けた投資ファンドへの総額50億ドルの出資等を約束しています。
過去、米国においては、サイバーセキュリティに関する大統領上級顧問を設置したことはありますが、CTOを設置するのは初めてのことだそうです。オバマ次期大統領の公約の中で、CTOの業務として、市民に開かれた政府の実現に向けた各連邦政府機関との調整や緊急時対応に備えた各政府機関間での技術的互換性確保等が挙げられていますが、技術進歩は経済成長のための強力なエンジンであるとの認識の下、経済政策への助言等も期待されているようです。
既にオバマ次期大統領の首席補佐官は内定していますが、現在、米国のインターネットニュース等では、誰が次期オベマ政権のCTOに就任するかに関心が寄せられており、マイクロソフト、アマゾン、グーグルなどの役員の名前が挙がっています。
余談ではありますが、先に申し上げた周波数帯の開放に関しては、放送業界等の既存権益を有する会社が開放に反対する一方、周波数帯を活用した新規サービスを考えているマイクロソフトやグーグルは開放を強く求める立場にあります。本年11月4日、連邦通信委員会(Federal Communications Commission)は、一定の技術的制約の下、ホワイトスペースと言われるテレビの未利用周波数帯を開放する決定を行いましたが、誰がCTOに就任するかによっては、このような自由化の流れが更に加速化する可能性もあります。
この記事が掲載される頃にCTOが内定しているかはわかりませんが、経済政策への関与も期待されていることから、個人的には、会社を興した経験のある技術的バックグラウンドのある方が任命されるのではないかと予想しています。その意味では、シリコンバレーからCTOが選ばれる可能性は低くないと見ていますが、皆様はどのように考えられますか。
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