BaySpo 1051号(2009/01/01)掲載
大競争時代の中、景気変動の次を見据えた企業活動に期待
ジェトロ・サンフランシスコ・センター所長 村永 祐司
村永 祐司
 神奈川県出身。1983年通商産業省(現経済産業省)入省。産業政策局、通商政策局、資源エネルギー庁、特許庁などに在任、99年在ニュー・ヨーク日本国総領事館領事。その後本省での法律改正担当等を経て、2006年7月から現職。

 ベイスポ読者の皆様、明けましておめでとうございます。

 日本のスポーツ界では、2009年に米国に挑戦する選手がいろいろ話題に上っています。大リーグ野球(MLB)では2008年開幕時の選手の約3割、239人が海外出身で、うち日本人選手は第4位の16人でした。2007年開幕時の第5位(13人)からランクアップ、2009年シーズンは更に増えるのではないかと期待されます。ゴルフでも、新たに米国ツアーに挑戦する若手女子選手、マスターズ参加も期待される若手男子選手など、次々に米国を目指すプレーヤーが出てきています。こうした選手達の米国での活躍を見聞きするのは、やはりうれしいものです。

 日本のプロ野球界では海外流出防止策が議論されましたが、むしろ日本側の魅力を高める工夫によって海外からの有力プレーヤーの参入を促し、より高いレベルのゲームが繰り広げられるようにする方が大事なのではないかと思います。

 さて、2008年は、世界経済が大変動の荒波にもまれた年となりました。急激な原油高が家計や企業を直撃、それが収まる間もなく、サブプライム問題が引き金となった金融危機が深刻化、そして米国経済全体にわたる景気後退、更に世界経済への波及と、想定外の速さと影響の大きさで衝撃が広がりました。

 世界各地の経済がかつてないほど相互関係を深め、かつ多極化しているという現実の中で、世界的な景気後退の打開策も、日米欧に新興諸国を加えた国際的な議論と協調、そして競争を通じて進められることでしょう。

 当面はこの景気後退の荒波をどう乗り越えるかということが経済の中心課題ですが、その後において経済成長を支えるものは何でしょうか。おそらくそれは、消費者のニーズに的確、適切に応える、つまり「地に足の着いた」商品やサービスに関する事業活動であり、また、景気回復後に改めて強く意識されるであろう地球的課題、すなわち地球環境や水、食料、資源、エネルギー等々、世界の共通課題に取り組むための事業活動などではないでしょうか。そして、これらの活動は、主導権を握ろうとする企業間、国家間での激しい世界的競争の中で行われて行くものと思われます。

 ところで、現下の景気後退局面ではベイエリアの企業活動に対しても、ベンチャーキャピタル(VC)が新規案件への投資を抑制、ベンチャー企業の「出口」である新規株式公開や大企業による買収の件数が大幅減、大手IT企業がレイオフを実施等々、厳しい逆風が吹き付けています。一方その中にあっても、成長分野であるクリーンテクノロジーに対するVC投資はウェイトを高めてきています。この分野のベンチャー企業が本格的にビジネスとして立ち上がるのはもう少し先のようで、それまでに熾烈な生存競争が繰り広げられるはずです。しかし、常に次代のコア・テクノロジーを探りながらハイテク集積として発展してきたベイエリアが、クリーンテクノロジーをこれからのビジネスチャンスと見ていることも確かでしょう。

 先日、当地にあるバイオ燃料のベンチャー企業を訪問したのですが、厳しい経済情勢の中で将来の発展可能性を見据えて事業化を進めている前向きの経営姿勢がとても印象的でした。このような粘り強い企業活動が展開される土地柄もあってか、サンフランシスコ周辺からシリコンバレーにかけての地域の非農業者雇用数は、州内の他の主要地域が前年同期比で軒並み減少となっている中、なお微増となっています。また失業率は徐々に高まってきてはいるものの、州全体に比べ1〜2%程度低くなっています(いずれも2008年10月時点の季節調整前データ)。

 クリーンテクノロジー、地球環境と言えば、過去に公害問題の克服、2度の石油ショックへの対応などを経験してきた日本には、環境保全、省エネルギーに関する豊富な蓄積があります。例えば日本のエネルギー効率は、米国の2倍、世界平均の実に3倍。つまり、日本の技術水準を適用すれば、米国のエネルギー消費量は現在の半分、世界全体では3分の1で済む計算になります。

 これからの国際的な地球環境の議論では、経済大国、エネルギー消費大国である米国の動向が大きな鍵の一つです。この観点から、環境への関心の高いカリフォルニア、特にベイエリアの日系企業の活躍も大いに期待されます。最近お会いした当地日系企業の方からも、環境保全上の利点をアピールできる日本発の技術を活かしてビジネスを拡大したいという、力強い意欲を感じました。

 冒頭に書いたスポーツの分野でも、また経済分野でも、今や世界規模での人材獲得競争、アイデア競争の時代となっています。そして、スポーツと同じように経済面でも「日本発、海外で活躍する企業」、「日本市場に参入する海外企業」の双方向の流れが共に発展することで、両サイド、また世界にメリットのある形で次の時代が切り拓かれて行くものと思います。

 ジェトロ・サンフランシスコ・センターは、半世紀以上にわたり日米間のビジネス連携を支援してまいりました。私どもの活動が日米両国の経済、更には世界経済への貢献につながるものであるとの信念で、2009年も各種事業を展開いたします。

 どうぞ、引き続きよろしくお願い申し上げます。

有澤保険事務所

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