景気の悪化で資金調達が難しくなっていることに加え、2008年第2四半期と第4四半期においてVCの投資した米国企業で株式の公開に至った企業はゼロであり、過去30年間では最悪の上場環境にあると言われています。つまり、これまで投資した資金の回収も非常に難しくなってきているということです。
ただ、不況下でもベンチャー企業への投資がゼロになっているわけではなく、例えばインテルの投資部門であるIntel Capitalは、ピンチはチャンスということなのか、米国内だけにとどまらず、2008年10月に中国のベンチャー企業3社への投資を、また、2009年1月にはインドのベンチャー企業3社への投資を発表するなど依然積極的に投資を続けています。株価の低迷は投資しやすくなるという側面があることも事実ですので、VCによって活動状況に差異が生じつつあるようです。
また、投資先をよく見ますと、すべての投資分野で同じ傾向になっているわけではなく、クリーンテクノロジー分野への投資額は急速に伸びています。全体のVC投資額が減少する中、クリーンテクノロジー分野への2008年のVC投資額は約41億ドルとなっており、2007年の約27億ドルから約54%の大幅な増加となっています。
クリーンテクノロジー分野への投資額が全体のVC投資額に占める割合も増加してきており、2000年頃は全体に占める割合が約1%に過ぎなかったのが、2008年の第4四半期には約17%に達しています。VCだけではなく、例えば、Googleも慈善事業部門のGoogle.orgを通じて、最近、太陽光発電や地熱発電などのクリーンテクノロジー分野の企業に投資しています。
投資先としてだけではなく、企業の社会的責任の観点からも環境面での対策に取組む企業は増えてきています。このような取組みを促進する観点から、米国環境保護局(EPA)は、四半期ごとに「グリーン電力パートナー・トップ50リスト」を作成し、米国内で太陽光発電などの再生可能エネルギーを購入あるいは自社で生成した量が多い企業から順に、上位50社を公表しています。
2009年1月時点のリストでは、上位3社は、第一位:インテル(自社の電力使用量の47%に相当する約13億kWhのグリーン電力を購入等)、第二位:ペプシ(自社の電力使用量の100%に相当する約11億kWhのグリーン電力を購入等)、第三位:DELL(自社の電力使用量の158%に相当する約6億kWhのグリーン電力を購入等)となっています。
つまり、このような不況下であっても、クリーンテクノロジー分野における新規事業立ち上げや社会的活動等の動きは活発化してきており、この分野でのビジネスが拡大していく可能性があるということです。御存知の通り、いまや世界的企業に成長したGoogleが設立されたのも、ITバブルが崩壊する前の1998年ですから、この不況から脱した時には、クリーンテクノロジー分野などで第二のGoogleが出現しているのかも知れません。