日本から米国へのお茶の輸出が増加している。米国商務省の統計によると、日本から米国へのお茶の輸出は2001年から毎年10%以上伸びている。2007年の輸出額は約16・7億円で、2001年と比べ6倍以上増加している。
日本のお茶の輸入・製造・販売を行っているルピシアは、会社設立7年後に海外1号店となる台湾に進出し、海外での販売を積極的に進めてきた。米国では西海岸を中心に6店舗展開している。米国のLUPICIA INC.の遠藤社長に、米国のお茶市場、同社の取り組み等について聞いた。
栃木宇都宮工場で加工し世界へ輸出
ルピシアは、国内86店舗、海外12店舗展開し、紅茶・緑茶・鳥龍茶に加え、オリジナルブレンドティー、フレーバーティーなどのお茶を取り扱っている。日本だけでなくインド、スリランカ、中国、台湾など世界各国から茶葉を直接買い付け、栃木県河内郡上三河町の自社工場でブレンド・商品化を行っている。遠藤社長は「海外で生産すればコストを下げられると思うが、当社の製品は少量多品種生産であることおよび食の安全を考え、当面は日本での加工を続ける」と語る。
同社は、1994年に会社設立し、海外第1号店となる台湾・天母店を2001年に設立した。その後、2002年に米国1号店となるハワイ・アラモアナ店をオープンしたほか、オーストラリア、韓国にも進出している。
米国は国土が広く、店舗が分散すると管理が困難になるため、現在はカリフォルニア州(5店舗)とハワイ州(1店舗)に計6店舗を展開している。遠藤社長は「米国では、コーヒーを飲むのが一般的であるが、新しいものを取り入れる文化・気質があり、お茶を飲む人も増えてきた」と語り、お茶に対して親しみを感じる人が増えているという手ごたえを感じている。同社は「フレッシュさ、鮮度」で他社製品との違いを出している。
ティースクールなどによりお茶文化の定着を図る
米国では「お茶=健康によいもの」というイメージがあり、薬に近い飲み物として飲まれることが多かったが、お茶のおいしさを理解する人が増えてきているという。飲み方としては、手軽なティーバッグを使い、職場などで飲まれることが多い。
お茶の文化を米国で定着させるために同社では、ニュースマガジン「ルピシア ティーリスト」を発行している。また、サンフランシスコ、ロサンゼルス等のホテルでティースクールを開催するほか、ティーパーティーのイベントなどを企画してお茶の市場拡大を目指している。
米国人にお茶を試飲してもらうと「しぶい」「にがい」と言われることもあるという。完全に米国の志向に合わせてしまうと本物のお茶ではなくなってしまうため、遠藤社長は「米国のお客様に飲んでもらうためにどうするか」を日本の本部といつも議論しているという。同社では、まずは顧客にお茶を飲んでもらうためニーズにあった商品を開発しており、現在は季節限定品を含め400種類取り扱っている。
遠藤社長は、米国で寿司が食生活の一部として定着した例を挙げ、お茶も同じようなマーケティングが必要であると考えている。「米国では生の魚を食べる習慣がなかったが、カリフォルニアロールにより米国人も生の魚を食べるようになった。それにより市場が拡大して日本と同じような本格的なスタイルの寿司を求める顧客も出てきた。ニューヨークなどでは、ロールものを出さない日本スタイルの本格的な寿司屋が出展されるなど、市場の裾野が広がっている。お茶も同じように米国で定着させていきたい」と意気込みを語る。
従業員の教育で苦労
国が違えば法律・考え方が異なるため、海外への進出には様々な課題がでてくる。米国でビジネスを行っていく上で苦労した点について、遠藤社長は「従業員の教育」を挙げる。特に、お茶を飲んだことがない従業員をどのように教育していくかが課題であった。
そこで同社では従業員のための教育担当を決め、その担当者が各店舗を回り、クイズなどを使って従業員教育を行っている。また、ギフトラップの習慣が米国ではあまり一般的でないため、少ない紙できれいに見せる日本流の包装スキルを習得するのに苦労する従業員が多いという。
今後のビジネスについて、遠藤社長は販路の拡大を図っていきたいと語る。現在の販路は、?直営店、?オンラインショップ(通販)、?ベイエリアを中心としたレストラン、?ティーハウスが中心であるが、最近日系スーパー向けにティーバッグの取り扱いを始めた。今後は、顧客の拡大を目指し、スーパーでの取り扱いも増やしていきたいという。
インタビューを終えて
米国でのお茶市場は拡大しており、他の日系メーカーも「米国でのお茶の売り上げは、毎年2桁伸びている」という。米国のお茶マーケットの将来性を確信し、積極的に事業展開を語る遠藤社長の姿が印象的であった。
2009年1月にサンフランシスコで開催された食品見本市Fancy Food Showでは、日本のイメージを前面に出して日本茶を出展している企業が数社あり、さらなる日本茶マーケット拡大の可能性を感じた。米国では、日本茶は「健康によい飲み物」というイメージが強かったが、今後は健康志向の強い人だけでなく、日常的に飲む人が増えて、日本茶の愛飲家が増えることを期待したい。
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