「世界景気の回復には、アメリカ消費市場の復活が不可欠」とはエコノミストの方がよく口にするコメントです。アメリカは大きく豊かな国ですが、人口は3億人超で世界の5%を占めるに過ぎません。にも関わらずこのような期待がもたれる理由の一つは、アメリカ市場の大きさ・所得水準、その多様性にあると考えられます。大きさと所得水準について言えば、アメリカ人の一人当たり年間所得は46000ドル(2007年、世銀)で、これに人口を掛けると合計13兆8900億ドル(世界1位)。これは日本の2・9倍、中国の4・5倍、英国の5・3倍、シンガポールの約90倍、フィリピンの約100倍に達します。しかも貯蓄率が低く、消費に回るお金が大きい。アメリカ経済、中でも消費市場の減退によって世界経済に悪影響が出ているのは自然なことです(日本市場の大きさも特筆すべきものがあり、日本の回復は世界経済への貢献大です)。
アメリカはこれだけの市場の大きさを持ちながら、安定的に人口が増えている点も注目されます。国民総所得上位7国(アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、中国、イタリア)の中で、アメリカは年間人口増加率が0・88%と最も高く、中国(0・63%)、フランス(0・57%)、イギリス(0・28%)を上回ります。イタリア(△0・02%)、ドイツ(△0・04%)、日本(△0・14%)はすでに減少に転じています。一人当たり所得の伸びが同じだとすれば、日本やドイツなど人口減少国とアメリカとの差は広がる一方です。
そしてアメリカ市場が世界経済のエンジンと言われるのは、単に大きさや所得だけでなく、それが多様で、あらゆるものを飲み込む余地があるからでしょう。アメリカには人種に限らずさまざまな「層」が存在します。しかもその規模が大きい。その層が仮に人口の10%(3000万人)を占めるとして、一人当たりの年間所得を46000ドルとすれば総所得は1兆4000億ドル。これは世界8位の規模になります。アメリカ人口の3%(1000万人)でも、総所得はスウェーデンを上回り、タイやマレーシアの2〜3倍近くになります。具体的にいくつかの「層」を記してみました(年間所得は便宜的に46000ドルとする)。
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