Mojave砂漠を御存知でしょうか。『Mojave』は「モハーヴィ」と発音するようです。このMojave砂漠は、カリフォルニア州、ネバダ州、ユタ州、アリゾナ州にまたがっており、総面積は6万4千平方キロメートルを超えるといわれています。北海道の全面積が約8万3千500平方キロメートルですので、相当広いことが理解いただけると思います。
このMojave砂漠が論争の的になっています。Mojave砂漠は、「砂漠」というその名の通りほとんど何もない場所なのですが、カリフォルニア州内にある砂漠の境界には山脈が連なり、夏は非常に乾燥するものの、地下水があります。このため、山脈等を利用した風力発電、豊富な日光を利用した太陽光発電、そして温められた地下水を利用した地熱発電の立地場所として注目を集めています。
シリコンバレーからラスベガスに旅行する時に58号線を利用された方は、周囲の山に連なる膨大な数の発電用風車をご覧になったことがあるかも知れませんが、それがMojave砂漠周辺の山脈に設置された風力発電設備の一部です。
カリフォルニア州の電力事業者は、小口供給電力に占める再生可能エネルギーの割合を2010年末までに20%とすることが義務付けられていますので、州内の電力事業者にとって、再生可能エネルギーの供給源確保は非常に重要な問題となっています。
このため、例えば、PGE(Pacific Gas & Electricity)は、太陽光起源の電力について、2007年7月にはSolel社から533メガワットを、2008年4月にはBrightsource Energy社から最大900メガワット(54万世帯の消費電力に相当)を購入する契約を締結しましたが、これらを供給するための発電設備はすべてMojave砂漠に建設される予定です。
このように申し上げると、地球環境保全に向けたカリフォルニア州の取組みが順風満帆に進んでいるように見えますが、2009年3月、カリフォルニア州選出で、地球温暖化問題を始めとする環境問題に積極的に取り組んでいるDianne Feinstein上院議員は、このような再生可能エネルギー関連設備の建設に反対する意向を表明しました。同上院議員の主張は、Mojave砂漠の東に位置する60万エーカー(約2千400平方キロメートル)の土地は、自然保護のために、NGOが集めた寄付4千万ドルと連邦予算1千800万ドルを合わせて、サンタフェ鉄道の関連会社から買い上げ、連邦政府(内務省)が所有することになったはずであり、野生生物の生態系に悪影響を及ぼす風力発電設備や太陽光発電設備の建設のために、企業に土地を貸与すべきではないということのようです。同上院議員は、再生可能エネルギー施設の建設のために60万エーカーの土地を貸与することを、直ちに中止するよう求める意見書をSalazar内務長官に送付するとともに、再生可能エネルギー関連の開発を阻止するために、この土地をナショナル・モニュメント(国定記念物)に指定すべく関係方面に働きかけることを発表しました。
6万4千平方キロメートルを超えるMojave砂漠のうちの2千400平方キロメートルというと、大したことがないように見えますが、Mojave砂漠には、国立公園や軍事基地という理由から開発や立ち入りが制限されている区域があることに加え、Feinstein議員は、この2千400平方キロメートルの土地だけではなく、他の地域であっても生態系に悪影響がある土地の開発に反対する姿勢を示しています。
報道によれば、この2千400平方キロメートルの区域の中では、現時点で、14の太陽光発電設備建設プロジェクト、5つの風力発電設備建設プロジェクトが検討されているとのことです。
ちなみに、ナショナル・モニュメントの指定権限は合衆国大統領が有しているのですが、この権限の行使は、いわば議会の頭越しに行うことになりますので、過去さまざまな論争を呼んでおり、そう簡単なものではないようです。
このような中、Googleの慈善事業部門であるGoogle. orgの支援を受けた2つのNGO(National Audubon SocietyとNatural Resources Defence Council)が、絶滅危惧種などの情報をもとに、土地開発等を避けるべき地域のマッピング作業を進めているようです。まだ、カバー範囲は西海岸の13州であり、170種類の野生生物の生態系情報を反映しているに過ぎないようですが、これを発展させていけば、例えばMojave砂漠をめぐる論争などに解決の糸口を与えるのではないかとのことです。このマッピング情報は、既にGoogle Earthで利用できるとのことですが、すべての生態系情報を反映した結果、どこにも建設場所がないような事態にならないよう期待したいと思います。
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