BaySpo 1114号(2010/03/26)掲載
期待が高まる3Dエンターテイメントの世界
ェトロ・サンフランシスコ・センター 次長 荏原 昌
荏原 昌(えばらまさし)
2003年日本貿易振興会(ジェトロ)入会。ジェトロ入会以前は民間企業(システムインテグレーター)で新規事業企画、ベンチャーへの投資、ジョイントベンチャーの立ち上げ等を担当。2008年3月からサンフランシスコセンター次長。新潟県出身、中央大学理工学部卒業。

 今年もラスベガスで開催されたInternational CESへ行ってきました。毎年CESでは家電メーカー各社から新製品の発表や技術トレンドを示唆する展示があり、その年の家電業界やIT業界の流れを感じる取ることができます。今年の目玉は既に報道されている通り3Dテレビでした。各社の発表やウェブ等によれば、3Dテレビとは以下のような仕組みに基づくものだそうです。映像を3Dすなわち立体として感じさせるために左右の目にそれぞれ別の映像(手前と奥の映像)を見せ、視覚や脳の働きにより立体として捉える生理作用(錯覚)を起こさせるものということです。左右の目に別映像を映すために専用メガネを用いるのが一般的です。昔々、子供の頃に何かの映画(タイトルは失念しました)を赤青のセロファンが貼られた紙製のメガネをかけて観ましたが、当時は宣伝(飛び出すヒーロー、とか)の割には別にたいしたこともなくメガネの鬱陶しさだけが記憶に残っていました。以来3D映像に関してはあまり興味が無かったのですが、カリフォルニアアドベンチャーの3Dアトラクション、「It's Tough to Be a Bug!」を観て少なからず驚きました。これはメガネをかけて観るアトラクションで、水しぶきや匂いといった凝った演出の効果もありますが、主人公の虫たちが目の前に現れる立体感に新鮮な感動を覚えたものです。

 専用シアターのアトラクションと家庭用TVを同列に比較できないとは思いますが、今回、各社のデモを見た限りでは充分な立体感が出ており、これならばコンテンツ次第では専用メガネをかけても見てみたいと思いました。各社の展示を見て回った感想ですが、日本の家電メーカーが3Dテレビの開発と普及に力を入れているのがひしひしと感じられました。ソニーの3D対応BRAVIAや3Dゲームを充実させたプレイステーション3、パナソニックは3D映像記録用カメラとブルーレイレコーダー、テレビのトータル3Dシステムを強調、シャープは3D未対応ながらRGB(赤緑青)の三原色に黄色を加えた4原色で表現するAQUOSを発表、東芝はCELLプロセッサ(プレイステーション3に使われている高性能CPU)を搭載し、2Dを3Dへリアルタイム変換するデモを実施、どれも素晴らしい出来だったと思います。

 まずハードが進化するのは世の常ですが、普及に向けてはどれだけコンテンツが充実するかがポイントになります。3Dテレビはブルーレイディスクの大容量(DVDの5倍以上)のメリットを最大限に活かせるプラットフォームだと思いますし、ブロードバンド化が進み、ケーブルテレビ局や衛星放送各社も今後3D番組の配信を増やすことを発表しています。3Dテレビの家庭への普及に関してはバンクーバーオリンピックにはちょっと間に合いませんでしたが、放送会社や家電メーカー各社は3Dテレビ用フォーマットで試合を記録していましたし、夏までにはバンクーバーの名勝負、名場面を3Dで臨場感豊かに観賞することが可能になるのでしょう。また、6月にはサッカーのワールドカップ南アフリカ大会が開催されますが、既にソニーがFIFAと共同で試合を3D映像化することを発表しています。

 ゴールデングローブ賞で作品賞を受賞したジェームズ・キャメロン監督の「Avatar」が二冠なるかと期待されたアカデミー賞ですが、作品賞と監督賞を含む主要六賞をキャスリン・ビグロー監督の「The Hurt Locker」が受賞し、「Avatar」は視覚効果賞、美術賞、撮影賞といった技術部門の三賞に留まる結果になりました。既に多くの方がシネコンで専用メガネをかけて「Avatar」を3Dで観賞されたことと思います。舞台となる衛星パンドラの奇妙な動植物や主人公のジェイク、ネイティリがレオノプテリクス(ドラゴンみたいな生き物)を駆っての戦闘シーン等は本当に立体感と奥行き感がよく出ていたと思います。キャメロン監督自身が開発したという三次元ステレオ撮影カメラシステムが狙い通りの効果を発揮したものと言えます。ちなみに専用メガネを外してスクリーンを見たところ、手前の人物と奥の風景では画面のズレ度合いがかなり違っていました。このズレの多い少ないが立体感と奥行き感を出すポイントなのでしょう。今年は「Avatar」に続き「Alice in Wonderland」や「How to Train Your Dragon」といった3D映画が続々リリースされていますが、作品のストーリーや俳優の演技と同じくらい「3D度」が映画を評価する重要な要素になってくるかもしれません。

 今後、スポーツや映画だけに留まらず様々なコンテンツが3D化されるのは間違いないでしょう。技術開発が進み、まだまだプロセッサの処理能力は向上するでしょうし、何れはスターウォーズでR2D2がレイア姫の立体映像(ホログラム)を映し出したようなことも実現するでしょう。CESではソニーのプレスカンファレンスでTaylor Swiftが歌い、これをリアルタイムで3D化するデモを行い大変好評だったようです。家庭でアイドルが立体映像で歌うシステムが2015年くらいのCESの目玉になるかもしれません。(アップルが作るとしたら製品名は「iReal」でしょうか)ちなみに3Dテレビは2015年には世界で8500万台まで普及するとの見方があるようです。ここしばらくはシステム、コンテンツ共に3Dエンターテイメントの動向に注目です。

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