投資の中身も、2007年?08年にかけてはバイオ燃料や太陽エネルギーに集中していましたが、09年以降は自動車、エネルギー効率化、スマートグリッド、エネルギー貯蔵などに拡がっています。
このような目まぐるしい変化が生じた背景としては、
?これまでVC投資を牽引してきたソフトウェアが、無料化、オープン化、SNSの興隆といった新潮流によって「どこで稼ぐか」が不透明になっていた時期、ちょうどクリーンテックが成長し始め、バブル的にやや安易な投資が集中した。
?特に石油代替技術として期待される非食物系次世代バイオ燃料や、薄膜・化合物系太陽電池などの新エネルギー系に資金が流れ込んだ。しかし実態が追いつかないベンチャー企業も目立った。
?クリーンテックのベンチャー企業は「創業→成長→拡大→後期(出口)」までの間に、平均するとソフトウェアの2倍?3倍の資金を必要とし、それに要する期間も総じて長い。このため金詰まりの影響を大きく受け、投資家も手堅いソフトウェアやバイオ等に流れた。
?他方、クリーンテックが長期的に有望な投資先であることは変わらず、この1年は資金も戻り始め、加えて広範な分野に投資が分散し始めている。
といったことが考えられます。
第二に、ソフトウェアと比較し、シリコンバレーやニューイングランドへの資金の集中がやや弱く、全米に散らばる傾向が見られます。その理由としては以下の数点が考えられます。
?気候・風土、資源分布によって適した環境技術が変化する。太陽光・太陽熱、風力、バイオマス、バイオ燃料がその典型だが、その技術に適した土地(の近隣)に企業は自然と集まってくる。
?ロサンゼルス/オレンジ郡、中西部、南東部が一定のVCを集めているように、製造業の集積も影響を与えていると見られる。ソフトウェアでは7%のVC投資を集めるNY都市圏が、クリーンテックではあまり存在感がないのも同様の理由だろう。
?大学や研究機関もそれぞれの地域に適した得意分野を持つことが多く、それも産業集積とVC投資の流れに影響がある。
とはいえ、依然シリコンバレーは圧倒的に強いのも確か。クリーンテックは様々な要素技術の集合であり、それらの技術はシリコンバレーに多くの蓄積があります。これらの多様な技術と人・モノ・カネを世界から集め組み合わせる独特の「仕組み」があります。またクリーンテックの勃興という事象を前に、シリコンバレーの人々もまた、自分たちの持つ既存技術を応用し、この機会をものにしようと業態を広げています。ナノテク、IT(通信、ソフトウェア、データセンター)、半導体、バイオ、電気、素材、バッテリー等の関連企業が続々とクリーンテックに参入しています。その「変り身の早さ」もシリコンバレーならではと言えるでしょう。
|