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サービスの一般公開から3年間で5億ユーザー、同じく3年間で1・4億ユーザーという、まさに爆発的に広まったとしか形容しようのないサービスがあります。前者はFacebook(パロアルト)、後者はTwitter(サンフランシスコ)です。ちなみに東京ディズニーランドの入場者数が5億人に達するのに28年間かかったという事実と対比すれば、バーチャルとリアルの世界で普及するスピードの差がどれほど違うか理解する一助になるかもしれません。ベイスポ読者の皆さん、とくに若い方々におかれては既にFacebookやTwitterを利用されている方も多いと思いますし、改めて紙面を割いてサービスの内容を説明する必要もないかもしれませんが、念の為、私と同世代の皆さん向けに簡単に解説しておきます。
Facebookは氏名、生年月日や出身校といった情報を登録し、知り合い(の知り合いを含む)や趣味を同じくする他のユーザーと互いに「友達になり(add as friend)」さえすれば、専用ページを介してメッセージをやり取りしたり、写真や動画を共有したり、掲示版(wall)を使って情報の交換ができるサービスです。他の類似のサービスと異なり、ユーザーの大半が実名で登録している点が大きな特徴となっています。一方のTwitterですが、ユーザー登録すれば140文字以内のメッセージ(つぶやき)を不特定多数に向けて投稿でき、ユーザー個々に割り当てられたページには自分自身が投稿したメッセージと関心ある(フォローしている)他のユーザーのメッセージが時系列に表示されるサービスです。メッセージ数の制約からマイクロブログ、ミニブログといったカテゴリーに分類されます。
さて、これからが本題です。共通の関心事や趣味・嗜好を持った方々がある程度の数集まりコミュニティが形成されれば、これをビジネスに活用しようとする企業が出てくるのは極めて自然な流れです。企業は4大広告媒体(TV、ラジオ、新聞、雑誌)を使った不特定多数への広告手法から、絞り込まれた(ターゲティングされた)顧客層に対し、リアルタイムでより突っ込んだ情報を届ける為の手段としてソーシャルメディアを活用し始めています。読者の皆さんにもなじみの深いオーガニック・スーパーのWhole FoodsはTwitterを利用してお客様の声を拾い上げ、質問や苦情に回答することを積極的に行っています。なんとWhole Foodsをフォローしている人は180万人を超えています。先ほど同社のサイトを覗いてみたら、「スシにHFCS(高果糖コーンシロップ)が入っているのはなぜ」というつぶやきに対してWhole Foods側が「調べてみるわ」とすぐさま応えていました。つぶやきの中には不満やクレームも当然含まれますが、同社をサポートする内容や品揃えに関するリクエスト等、まさに「お客様の声」を直接収集する場として同社にとって重要な位置付けになっていることがよく判ります。Whole Foodsの他にもStarbucksやDELLは100万人を超えるフォロワーがあり、日々様々なつぶやきが飛び交っています。また、先月、客室乗務員が乗客と口論して緊急脱出スライドを使って機外へ逃走する、という事件が起こったJetBlueですが、事件直後にはこの客室乗務員の取った行動をサポート、あるいは非難するつぶやきが急増し、現在では160万人ちかいフォロワーを抱えています。早くからJetBlueはTwitterを利用して顧客の要望を聞き、サービスの改善に努めてきた会社ですが、図らずもあの事件のおかげでTwitterのリアルタイム性や公共性、そして一過性(今では事件の話題は全く無し)を再認識したことでしょう。Forrester Researchの調査によれば2010年中にソーシャルメディアをビジネスに利用する、あるいは利用を拡大する計画を持つ米国の中小企業は18%を超えているそうです。顧客との接点拡大、口コミによる評判、企業のブランドイメージ向上にソーシャルメディアの活用が本格化してきました。
政治の世界はどうでしょう。今後のオバマ政権にとって大変重要な意味を持つ中間選挙が間近に迫っていますが、政治家のソーシャルメディアの活用状況を調べてみました。まず、現職のシュワルツェネッガー知事ですが、Facebookでは31万人が「いいね(Like This)」と評価し、Twitterでは177万人が知事のつぶやきをフォローしています。シュワ知事の後を争う二人の候補、民主党のジェリー・ブラウン氏はFacebookが7万人、Twitterは110万人です。対する共和党のメグ・ホイットマン候補はFacebookが11万人、Twitterは24万人です。両候補者のFacebookとTwitterに対する扱いの違いが現れて面白いですね。eBayのCEOだったホイットマン候補の方が圧倒的にソーシャルメディアを使って選挙キャンペーンを展開していると想像していましたが意外でした。これらがどう選挙結果に繋がるか興味深いところです。ちなみに、オバマ大統領はFacebookが1315万人、Twitterが535万人で桁違いの注目度ですね。鳩山元首相のつぶやきは有名になりましたが、民主党代表選を戦ったお二人はソーシャルメディアの影響力にはあまり関心が無かったようです。
(数字は9月上旬)
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