BaySpo 1213号(2012/03/15)掲載
アメリカでも根付き始める日本企業のソーシャルメディア
ジェトロ・サンフランシスコ・センター 次長 木村 洋一
木村 洋一(きむら よういち)
91年4月日本貿易振興会(ジェトロ)に入り、海外調査部、企画部などを経て2011年4月より現職。98年3月〜2002年8月ジェトロ・ニューヨーク勤務。早稲田大学政治経済学部卒。東京都出身。

 皆さんにもおなじみの「ソーシャルメディア」は、ビジネスの世界にも大きな影響をもたらす技術になってきました。米国で活躍する日本企業にも、ソーシャルメディアをうまく活用して多くのファンを獲得し、サービス・製品を市場に浸透させている興味深い事例がみられます。

湿布を貼った大統領? も登場
 日系スーパーでしか買えなかったHisamitsu Americaの外用鎮痛湿布薬「サロンパス」は、現在では全米展開のドラッグストアでも買える「身近な商品」になった感があります。フェイスブックやツイッター、ユーチューブを組み合わせたマーケティング戦略が、米国市場でのブランド認知度の向上に大きな役割を果たしたように感じられます。フェイスブックページには、米国人消費者が実感した効用や前向きなコメントが次々と寄せられています。同社担当者がいつも丁寧なメッセージで対応しているのにはとても好感が持てます。
 ユーチューブで公開されるビデオも人気が高く視聴回数が5000回を超えるものもあります。米国で外用鎮痛剤といえば飲み薬が主流。同社は、新しい概念の「サロンパス」を消費者に正しく理解してもらうため、使い方や効用を紹介した映像を積極的に公開しています。それだけでなく、オバマ大統領に見立てたキャラクターが、首の痛みにサロンパスを貼るという、ユーモラスな2種類のバイラルビデオも話題を呼びました。

主婦層だけでなく若い年齢層にも
 ユーチューブで自社製品の使い方を発信したり、消費者に映像の投稿を募るオンライン・ビデオコンテスト、ツイッターを用いたイベントの開催などを通じて、コミュニティーとの密接な関係を築いている事例は多くみられます。
 Kikkoman Sales USAはフェイスブックページ「Kikkoman’s Kitchen」で、広報マネージャーを務める同社の女性シェフがユーモラスなクッキングビデオを発信するほか、自社サイトで年に一回、ビデオコンテストを実施しています。このシェフは社員ながら、キッコーマン醤油の着ぐるみと踊る「Kickin’ it with Kikkoman」というバイラルビデオが、視聴回数1万3000回以上にのぼるほどの大変な「人気者」になっています。
 従来、新聞や雑誌でのレシピの紹介やクーポンの発行に重きが置かれていた食品企業のマーケティングは、ソーシャルメディアの隆盛で大きく様変わりしています。Kikkomanは主婦層だけでなく、若い年齢層をターゲットとしたブランド浸透策を推し進め、それがファンベースの獲得という形で実を結んでいるようです。同じく、Yoshinoyaがフェイスブックページで展開する会員プログラム「Bowler Club」も、製品・サービスに関心を持つターゲット顧客への情報伝達ルートを確保することで集客数増加に一役買っていることがうかがえます。

目指せ「今週イチオシのスタイル」
 ソーシャルメディアは、ユーザー側からすると、企業やブランドに自身が参加している、あるいは消費者としての声が反映されるというインタラクティブな感覚を持つことができる技術といえるでしょう。UNIQLO USAはこうした側面を独自のSNSで実現させ、ユーザーの大きな支持を得ています。
 同社のUNIQLOOKSは、フェイスブックとツイッターを統合させたファッション・コミュニティー主体のウェブサイト。ユニクロ商品で好きな着こなしをした写真を投稿し、会員間で見て楽しんだり、批評し合ったりすることができます。気に入った着こなしの商品を購入することもできますし、着こなしは「いいね!」の数で順位付けされ、最も多く支持を受けた会員の着こなしが「Look of the Week」(今週イチオシのスタイル)として掲載されます。
 コミュニティーを構築することで、ユーザーベースが自然に拡大し、これが「ロイヤルカスタマー」(忠誠心の高い顧客)に転換することで、店頭やオンラインでの売上の増加に結びつくという格好の事例といえるでしょう。
 米国に拠点を持つ日本企業の間に根付き始めたソーシャルメディア。「つながって、共感して、共有する」という、ソーシャルメディアの一番の肝の部分を、いかに自社ツールに取り込み、どのように売れる仕組みを確立していくかに今後も注目です。

有澤保険事務所

自動車保険をはじめ、火災保険、アンブレラ、ビジネス保険、労災保険、生命保険、健康保険などを取り扱う総合保険会社です。Farmers
Insurance、Blue Cross等のエージェントであり、日本語できめ細やかな安心のサービスを提供しています。

有澤保険事務所
2695 Moorpark Ave, Ste 101, San Jose, CA, 95128
http://www.arisawaagency.com

有澤保険事務所
(408) 449-4808
No Reproduction or republication without written permission
Copyright © BAYSPO, Inter-Pacific Publications, Inc. All Rights Reserved.