ジェトロと北加日本商工会議所(JCCNC)は、ベイエリアで活動する日系企業の実態を調査しました。今回は、前回調査で過去最悪だった景況感が持ち直して、雇用や投資にも好影響を及ぼしていることが明らかになった一方、雇用コストがこれまでにも増して経営の重荷になっていることが明らかになりました。ここでは、同じ時期に南加で行った同様の調査も参考にしながら、ベイエリアで活躍する日系企業の姿をみていきましょう。
ベイエリアの日系企業は630社に
12年3月時点で、北加10郡で存在が確認できた日系企業は630社にのぼりました(表1)。この20年間では、ピーク時(=00年)の680社に次ぐ多くの企業数が確認できました。なお同じ時点で、南加10郡で存在が確認できた日系企業は700社。加州全体では1330社の日系企業の存在が確認できました。
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南加での集積の違い鮮明に
業種別分布をみると、ベイエリアでは「サービス」「製造」の順に多くを占める一方、南加ではこれが逆転し「製造」が首位で「サービス」が2位になっています。情報システムや専門ビジネスなどを多く手がけるベイエリアに対し、生産拠点を持つ南加という集積の違いが鮮明になっています。また、企業の回答を詳しく分析すると、ベイエリアでは製造業でも生産拠点を設けているところは多くなく、テクノロジー・スカウティング(新規技術の発掘)や、研究・開発(R&D)を主な業務としている企業が多いことが分かります。この傾向は、シリコンバレーの中心であるサンタクララ郡で特に顕著です。
底堅い収益構造を構築
それでは、ベイエリアの日系企業は好調なのでしょうか。まずは、この20年間の営業利益の推移をみてみましょう。表2のように、ベイエリア日系企業は「黒字」の割合が常に「赤字」を上回り、黒字企業はおおむね50〜60%の幅で推移してきています。黒字の割合と米国の実質GDP成長率(破線)が、ほぼ連動していることにも注目して下さい。米国の景気動向と日系企業の営業利益には「強い関連性」があることが改めて分かります。
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「黒字」企業の割合が改善
現時点の景況感はどうでしょうか。92年の調査開始以来最悪だった前回調査の10年に比べ、日系企業の景況感は改善傾向にあります。今回の調査で黒字企業は52・5%と半数を超え、前回に比べて9・8ポイント改善しました。また赤字企業は18・4%で同じく15・5ポイントも改善しています。
「雇用コスト」に切実な声
ベイエリアの日系企業が頭を痛めている一番の問題は「雇用コスト」です。州政府などへの改善要望を見てみると「雇用コスト」を挙げる企業が94・7%と群を抜き、「税制」「環境規制の緩和」などを大きく引き離しています。「雇用コスト」を挙げた企業は前回調査より38・2ポイントも上昇しています。確かにこの傾向は色々な統計でも裏付けられます。例えば、米労働統計局による大都市圏77ヵ所の賃金調査で、全米の平均賃金を100とした場合のベイエリアの指数は何と「120」。LA都市圏の「108」を大きく上回るばかりか、全米主要77都市圏の中で最も高くなっています。ここのところのシリコンバレーでのスタートアップ起業ブームなどが「雇用コスト」という形で、ベイエリアの日系企業にも大きな影響を与えている格好となっています。
調査結果の要旨、報告書(いずれも和文)は、ジェトロのウェブサイト(注1)で閲覧が可能です。ぜひご覧下さい。
※12年2月6日〜3月21日にアンケート調査方式で実施。ベイエリアの範囲は、サンフランシスコ、サンマテオ、サンタクララ、アラメダ、コントラコスタ、マリン、ナパ、ソノマ、ソラノおよびサクラメント郡。
(注1)http://www.jetro.go.jp/world/n_america/reports/07000997 |