11月6日に行われた大統領選挙で、オバマ大統領が再選を果たしました。注目される環境・エネルギー政策で、オバマ政権は第1期に提唱した再生可能エネルギーの導入促進と同時に、石油、天然ガス開発も重視しながら、あらゆるエネルギー資源全てを活用する「包括的アプローチ」(All-Out, All-of-the-Above Strategy)を推進していくことになるでしょう。
あらゆるエネルギー資源を活用
焦点の一つはシェール層資源の開発推進です。米国ではここ数年で、採掘技術の革新により、地中深くのシェール層に眠る膨大な天然ガスや原油資源にアクセスすることが可能となりました。オバマ政権は、環境への影響をみながら、これら資源の開発を推進する立場です。
しかし、輸送部門の9割以上がガソリンを燃料とする現状から、原油を輸入する必要がある状況に変わりはありません。解決策の一つとして、カナダのオイルサンドをテキサス州の製油所に輸送する「キーストーンXLパイプライン」の建設計画が焦点となっています。
オバマ政権は2012年1月、パイプライン敷設予定地の環境影響評価が不十分として、建設許可を却下しました。この計画が進まない場合、建設に関わる2万人の雇用が失われるとともに、エネルギー安全保障の観点からもマイナスの影響を与えかねないと指摘されており、2期目の対応に注目が集まります。
再生可能エネルギー、懸念は財政難
化石燃料の枯渇、地球温暖化への懸念が世界規模で広がる中、「環境」に消極的とされる共和党支持者の間でも「代替エネルギー発展の政策は重要」とみる傾向が強まってきているといってよいでしょう。
オバマ政権はこうした状況を受け、再生可能エネルギーやスマートグリッドなど、環境技術の促進をテコとした景気回復、雇用拡大をエネルギー政策の最優先事項に掲げ、連邦政府による財政支援を積極的に打ち出してきました。
しかし2011年に入り、円筒型太陽光発電モジュールメーカーのソリンドラ、蓄電装置のビーコンパワーなど、融資を受けた企業が相次いで破綻し、共和党から厳しい批判を受けました。さらに財政難の中、エネルギー関連の研究開発や導入促進への予算配分は厳しい見直しを迫られています。
こうしてみると、オバマ政権2期目では、再生可能エネルギーの中でも、特定の分野に焦点を絞り込んだアプローチを採らざるを得ないでしょう。
再生可能エネルギー業界に安堵感
第1期政権が打ち出した補助金プログラムや税額控除をテコに、電力市場で一定の役割を担うようになった太陽光や風力発電、同じように市場拡大に成功した電気自動車などの再生可能エネルギー業界は、オバマ再選に一様に胸をなでおろしました。
特に諸手を挙げて再選を歓迎したのは風力発電業界です。同業界を活性化してきた「税額控除制度」は、連邦議会が延長しない限り、今年12月31日で終了することになっています。オバマ大統領は同制度の延長を支持していますが、この制度が廃止された場合、1年以内に3万7000人が失業、反対に延長が決まった場合は今後4年間で10万人分の雇用を創出するともいわれています。
一方で、温室効果ガスの排出や、火力発電所を対象とした環境保護庁(EPA)による一連の環境規制は、引き続き強化の方向にむかうとみられます。
安価な天然ガスに押される石炭産業は、オバマ大統領が勝利演説で「子供たちに、温暖化による破壊に脅えない米国を」と地球温暖化問題への姿勢を改めて言及したこともあって、エネルギー市場での生き残りはますます厳しくなりそうです。 |