BaySpo 1279号(2013/05/31)掲載
日本酒と西洋料理のペアリングに挑む 〜日本酒市場拡大の呼び水に〜
ジェトロ・サンフランシスコ・センター 次長 木村 洋一
木村 洋一(きむら よういち)
91年4月日本貿易振興会(ジェトロ)に入り、海外調査部、企画部などを経て2011年4月より現職。98年3月〜2002年8月ジェトロ・ニューヨーク勤務。早稲田大学政治経済学部卒。東京都出身。

 ベイエリアで日本酒普及のレベルをもう一段高めるためには、西洋料理店への売り込みが必要になってきます。そこで課題になるのが日本酒と西洋料理の「ペアリング(組み合わせ)」です。ジェトロは、これを消費者となる米国人自身の手で探ってもらい、日本酒市場拡大の呼び水にすることを狙って、プロ向けセッション「ソムリエ・サケ・チャレンジ」をサンフランシスコで開きました。
 このセッションは、米国人ソムリエが自らペアリングを提案し、これに米国人レストランオーナーやシェフ、小売店バイヤーなどが意見を出し合うという趣向。参加者は一様に、日本酒とのペアリングに大きな期待感を示しました。

ワインソムリエがペアリング提案
 会場になったのは、コンテンポラリー・ペルー料理の人気店「ラ・マール・セビーチェリア・ペルアナ」。料理やインテリアが高く評価されている高級店です。ここで、主役のマスターソムリエとして、ミシュランガイド2つ星レストラン「セゾン」のオーナー兼ワインディレクターのマーク・ブライト氏と、人気ワイン小売店「フェリープラザ・ワインマーチャント」オーナーのピーター・グラノフ氏が立ち、ラ・マールのシェフが作る5種類の料理にペアリングする形で、それぞれ5種類の日本酒を参加者に提案。その「対決」を日本酒ソムリエのスチュワート・モリス氏が進行し、まとめるという趣向にしました。

ワインの選択基準を念頭に
 マスターソムリエの2人は、ワインと日本酒を比較して説明し、参加者の関心を誘いました。参加者の関心も、自分たちが知っているワインの選択基準を思い浮かべながら、どのように料理に合う日本酒を選ぶかという点にありました。
 グラノフ氏は、日本酒、特に大吟醸は非常にデリケートな風味があり、「米国でも関心を集める『うま味』に着目した選び方が重要。うま味がペアツールになって料理にうまく合う」と西洋料理とのペアリングの可能性に大きな期待を持たせました。
 ブライト氏も、ワインの選択手法と比較しながら、「ワインのように料理を圧倒せずに自然にペアリングできる。選べる範囲がワインより広い」と西洋料理とのペアリングの可能性に太鼓判を押しました。

「まずは固定観念を捨てること」
 また、マスターソムリエと参加者が一様に指摘したのは、「西洋料理とのペアリングでは、日本酒をめぐる固定観念を捨てること」という点でした。これに関連してブライト氏は、日本酒を小さいグラスに入れ提供すると、「多くの人がテキーラのように一気に飲んでしまう」というエピソードを紹介しました。
 また、参加したシェフの1人が「米国人になじみのあるワイングラスで提供すれば、香りを楽しんだり、味わったりして飲んでくれるのでは」と問題提起すると、ほとんどの参加者が賛意を示しました。
 消費者である米国人の「肩肘張らず、細かいことにこだわらず、おおらかにたくさん飲んでもらえばいい」との助言は、これからの拡販に向けて示唆に富むものになりました。なお、マスターソムリエによる対決は、最終的には僅差でグラノフ氏が勝利しました。

 参加者を交えた双方向の活発な議論が交わされたこのセッションは、米国市場での日本酒の啓発手法の一つとして、また西洋料理というジャンルへ果敢に働き掛け、これを通じて日本酒市場全体を拡大させていく手法の一つとしての手ごたえを十分感じさせるものでした。

 

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