BaySpo 1292号(2013/08/30)掲載
サンフランシスコから広がる「都市型製造業」
ジェトロ・サンフランシスコ・センター 次長 木村 洋一
木村 洋一(きむら よういち)
91年4月日本貿易振興会(ジェトロ)に入り、海外調査部、企画部などを経て2011年4月より現職。98年3月〜2002年8月ジェトロ・ニューヨーク勤務。早稲田大学政治経済学部卒。東京都出身。

 モノづくりに再び力を入れようという「製造業復権」の動きが米国で本格化しています。こうしたなか、都市部の製造業を振興するサンフランシスコの「SFMade(エスエフ・メード)」が注目されています。

新しいタイプの製造業
 新しい形の製造業を振興して、産業基盤の維持・強化を図る取り組みがサンフランシスコで行われています。この新しいタイプの製造業は「都市部に工場を構える」という、従来ならデメリットと捉えられていた点を、むしろ顧客や市場に近い大都市ならではのメリットと捉えています。その上で、ITなどの高度技術を活用して生産工程を効率化し、専門性に特化しながら小規模なブティック的生産を行うことが特徴になっています。顧客、市場に近いことをメリットに、効率・柔軟性、スピード感で大量生産品と差別化し、ローカルブランド力で拡販していこうというわけです。


市民への啓発活動にも注力
 この新しい製造業を支えているのが、2010年にサンフランシスコで設立された非営利法人「SFMade」です。製造業者や新規参入者にコンサルテーション、ブランディング、専門家紹介などのビジネス支援を行っています。興味深いのが市民を対象とした啓発活動です。市民が地元産の製品を購入することは、地元のビジネスを支援し、地元の雇用創出にも繋がります。このため、製品・ブランドの認知度向上はもちろん、市民のローカルブランド購買意欲を喚起することが必要になってきます。
 こうしたことからSF Madeは、定期的に市民向けに催される工場見学ツアーや、スポンサー企業の店舗内に設置されるポップアップストア(期間限定の仮店舗・コーナー)など、工夫を凝らした市民への様々な働き掛けを行っています。

飛躍的に会員数が増加
 SFMadeは会員制を採っていますが、@サンフランシスコに本社がある、A1つ以上の製品をサンフランシスコ内で製造している、などの条件を満たせば、誰でも無料で会員になれます。12社からスタートした会員数は、現在は400社を超え、メンバーの商品を扱う店舗は100店を超えたといいます。
 SFMadeの会員企業をみると、業種で多いのは「ジュエリー・アクセサリー」76社、「アパレル」75社、「食品・飲料」55社など。代表的なメンバーには、メッセンジャーバッグの「Rickshaw」、マットで優しい色使いの陶器「Heath Ceramics」、ITを駆使するチョコレートメーカー「TCHO」、オーダーメイドシャツの「Taylor Stitch」など、「サンフランシスコ発」としてのブランディングに見事に成功した、知名度の高い企業も多くみられます。

サンフランシスコが全米を引っ張る
 こうした動きは、サンフランシスコから他の米国の都市にも広がりつつあります。2011年6月にSFMadeは、同様な活動を行うニューヨークの機関とともに「Urban Manufacturers Alliance」という全国組織を立ち上げ、参加都市はボストン、シカゴ、ロサンゼルスなど13都市に広がっています。その後も、他都市がこうした振興策に乗り出しやすいように、ノウハウ集を作成するなど、そのけん引役としての役割には目を見張るものがあります。
 このSFMadeの取り組みは、わが国で製造基盤の喪失懸念を抱える都市部の企業コミュニティや地方自治体の活動にも大いに参考になりそうです。

 

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