ジェトロと北加日本商工会議所(JCCNC)は14年2〜3月にベイエリアで活躍する日系企業の最新の姿を調査しました。
小売、サービスなど新しい流れも
ベイエリアで存在が確認できた日系企業は、14年3月末時点で719社にのぼり、過去最高となりました。日本企業のベイエリアへの進出はITに加えて、アパレルや生活雑貨の小売や、食品・飲料、外食のフランチャイズなど、ここにきてその分野は大きく広がりを見せています。
小売では、店舗数を増やす「ユニクロ」や「無印良品」のほか、今年中には眼鏡チェーン「JINS」がサンフランシスコに出店するとされています。食品・飲料では、焼酎の「いいちこ」で知られる三和酒類が同市にマーケティング拠点を開設、持ち帰り弁当のHotto Mottoと定食店のやよい軒をチェーン展開する「プレナス」も同市での展開を計画しています。こうした企業の進出・成功は、ベイエリアへの日本企業の進出の流れをさらに変えていくことになるかもしれません。
南カリフォルニアを上回る進出ペース
注目したいのは、日本企業のビジネス展開先として、ベイエリアへの関心がますます高まっている点です。西海岸では、市場規模が大きく、物流拠点でもあるロサンゼルス、トーランスなどの南カリフォルニアが伝統的な進出先として捉えられてきました。こうしたなか、ここのところの進出・企業設立ペースは、ベイエリアが南カリフォルニアを上回る傾向が定着した感があります。今回の調査結果をみると、06年以降、各年に進出・設立された企業数は、07年の1年を除いてすべてベイエリアが南カリフォルニアを上回っています。
これは、南カリフォルニアに日本ブランド製品やサービスが浸透し、一部では過当競争気味となっていることや、それにも増して、@所得水準が高く、いいモノには相応の対価を払う消費者がいる、A日本の文化やライフスタイルを「クール」と見るアジア系が多い、B食文化やデザインなど異文化に好奇心と敬意を持つ懐の深さがある――といった「市場としてのベイエリアの魅力」をビジネスチャンスと捉える日本企業が増えているため、と考えてよさそうです。
黒字企業が6割近くに
ベイエリアの日系企業の景況感は、リーマンショックの影響が色濃く表れた前々回2010年の調査で大きく落ち込みましたが、前回の2012年調査で顕著に改善し、今回2014年の調査ではサンフランシスコ、シリコンバレーの好況を背景に、収益に力強さを取り戻したと言えるでしょう。今回の調査で、「黒字」企業は58・0%と6割近くに達し、前回を5・5ポイント上回りました(図)。また図のように、ベイエリアの日系企業の営業利益の状況をみると、「黒字」企業の割合と米国の実質GDP成長率(破線)はほぼ連動しており、米国の景気動向と日系企業の営業利益には強い関連性があることも特徴です。
こうしたことから、ベイエリアの日系企業が今後の業務運営上の最大の「懸念」として「景気の動向」を挙げたのも納得がいきます(回答企業の71・8%)。また、「為替の影響」(45・1%)や「雇用コストの上昇」(39・9%)などの懸念材料は、なおも消えてはいません。
調査結果の詳細は、5月下旬〜6月初にかけて、北加日本商工会議所およびジェトロのウェブサイトに掲載する予定ですのでぜひご覧下さい。最後に、調査にご協力いただいたベイエリアの日系企業の皆さまに、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。
(執筆協力:高橋由奈、林藍子、北村奈緒子) |