オークランドが次のビジネス有望地域として注目を集め始めています。同市はこれまで、治安問題などで敬遠されがちでしたが、安価な不動産価格や広いスペースが魅力となり、新たな店舗や起業支援施設が次々とオープンしています。
背景に近隣の不動産価格の高騰
サンフランシスコ・ベイエリアはハイテク業界を中心とした好況で、不動産価格が全米で最も高い地域の1つとなりました。こうした中、メディアがオークランドの「再生」や「ルネサンス」をこぞって取り上げるようになっています。
サンフランシスコのオフィスや住宅価格の高騰を受けて、対岸を選ぶ企業や個人が増えるという新しい流れが目立ち始め、治安問題を抱えてきた同市が「再生」しつつあるというのです。
オークランド・ダウンタウンのレストランや、活気あるギャラリーなどの記事をご覧になった方も多いのではないでしょうか。オークランドの再生を、ニューヨークのブルックリンの再生になぞらえる指摘も出ているほどです。
見直されるオークランドの魅力
最近では、「サンフランシスコ・マガジン」が今年6月号でオークランド特集を組みました(写真)。活気付くレストランやアートギャラリー、ユニークな住民の活動などを170ページ以上にわたって紹介しました。
「ニューヨーク・タイムズ」紙も今年5月に、ビデオなどを含めたマルチメディアのオークランド特集記事を掲載しました。同紙はこの中で、活発なアートシーンや新旧住民へのインタビューなどに加え、現カリフォルニア州知事で元オークランド市長のジェリー・ブラウン氏のコメントも紹介。同氏は、「この60年なかったような活気が(オークランドのダウンタウンに)戻った」と述べています。
次のハイテク集積地として有望?
この記事では、テックブームがオークランドにも及ぶ可能性も指摘しています。インターネットラジオのベンチャー企業Pandoraがオークランドを拠点にしていることはよく知られています。
このほかにも同記事は、コワーキング・スペースのThe Portや同施設を利用するdeliberateLIFE(アプリベースのライフスタイル雑誌)やShopPad(モバイル電子商取引のプラットホーム運営)、Clef(スマートフォンをかざすことでパスワードを使わずにウェブサイトなどにログインできるアプリ開発)といった新興企業を紹介してその勢いを示しました。
これらの特集記事は、オークランドの新たな魅力を紹介する役割を果たす一方、既にこの地域がビジネス展開の「次の地」として注目を集め始めていることを知らしめた感があります。
ユニークな起業支援施設も
起業支援施設も集まるようになってきました。SfunCubeは太陽光技術を広めるソフトウエアやファイナンス、分析ソリューションを開発する太陽光分野のスタートアップ企業を対象としたインキュベーション施設で、オークランドのダウンタウンにあります。
ほかにも、広々とした建物を利用した企業支援施設Impact HUB Oaklandや、食品ビジネスの起業家がキッチンを共有できるKitchener Oaklandが知られています。
同市は、雇用の減少を受けて60年代末から犯罪率が上昇し、経済も停滞しがちになりました。それ以降、治安問題を抱えた地域として知られ、それが新しい住民の流入や新規ビジネス設立の候補地になりにくい理由となってきました。このため、ハイテク系企業や企業支援施設の集積をテコとした「再生」や「ルネサンス」への期待は大きいものがあるようです。
(執筆協力:林 藍子)
|