シリコンバレーは世界市場の登竜門と言われており、世界中の企業がここでのビジネス拡大を通じて世界にチャレンジしています。一方で、シリコンバレーに集まる世界の企業を自国に誘致して、自国の経済の活性化につなげようとしている国も多くあります。
本稿では、このような活動に積極的に取り組んでいる国の一つであるドイツの活動を御紹介します。ドイツは日本と似ているところも多く、ヨーロッパに市場を伸ばしたい日本企業の進出先候補としても有効と思われます。今回、ドイツで外国企業誘致に取り組んでいるGermany Trade and Investment(ドイツ貿易投資振興機関)や、ドイツの研究開発を支援するGerman Center for Research and Innovation(ドイツ科学・イノベーション・フォーラム)に話を伺いました。
ドイツで補助金を受けるには
ドイツで補助金を受けるには、企業の資本の過半がドイツにあることが条件で、外国企業の場合はドイツ国内でGmbH(有限会社)を設立することが必要になります。GmbH設立には1名の発起人が必要ですが、ドイツに住まなくても良いので、外国企業にとっての負担は少ないとのことでした。
ドイツの補助金プログラムについては、German Center for Research and Innovationのウェブ(www.germaninnovation.org)が英語で、対象別(学生/研究者/企業)、実施機関別(連邦/地方)、業種別等に分類し一覧化しています。日本でも、研究開発や工場立地等に国や地方自治体が様々な補助金を用意していますが、データベース化されておらず、また日本語のみのサイトも多いことから、ドイツの取り組みの先進性には驚きます。
ドイツの研究開発支援
ドイツは日本と同様に研究開発に熱心に取り組む国で、研究開発投資のGDP比率も高いとのことです(ドイツは2.8%。日本3.3%、米国2.8%、EU2.0%、中国1.7%、OECD統計による)。このため、研究開発を支援する補助金は豊富にあるとのことでした。
特にサイエンス分野の研究者向けには、フラウンホーファー研究所のFraunhofer Attractという制度が魅力的で、採択された研究者には5年間で2.5Mユーロ(約3.6億円)が用意され、研究開発費のほか、自分や社員の給料、研究所借上費等に利用できるとのことでした。こうした制度を通じて、トップレベルの研究者をドイツに集めたいと考えているとのことです。
企業の設備投資支援
EUの規定で東欧に投資を進めるための支援策をドイツ政府も実施しており、特に旧東ドイツ地域に工場や研究所など、雇用を生み出す拠点を設立する際には充実した支援があるとのことでした。それ以外でも、一般的な営業拠点やカスタマーサポートを開設する場合、州ごとに様々な支援があり、ニーズに応じて御紹介いただけるとのことでした。
またデュッセルドルフは昔から日本企業のコミュニティー(日系商工会、日系レストラン、スーパー等)が発達しており、日本企業が初めて進出する場所としては良いのでは、とのことでした。
起業・投資家環境について
起業家・スタートアップに対しては、ドイツは米国とは違ってあまりリスクをとりたがらず、またシードマネーを出すエンジェル投資家も米国に比べると少ないとのことでした。このため、ドイツの起業家はシードマネーやシリーズAまではドイツ国内で資金調達できても、それ以降は国内では資金調達ができず、シリコンバレーに出てくるケースが多いとのことでした。実際に、German Silicon Valley Acceleratorという組織がシリコンバレーにもオフィスを持っており、選定したドイツ企業を毎年約25社連れてきて、ビジネス展開を支援しているとのことでした。
ドイツのビジネスの魅力
担当者は、ドイツは地理的にもヨーロッパの中心にあり、人口や経済規模も大きく、またロンドンよりも生活費、労務費、コストが安いのが魅力。是非日本企業にも来て欲しい、と言っていました。
ジェトロはドイツにも、また他のヨーロッパの国にも事務所がありますので、ヨーロッパやドイツへのビジネス展開を御希望される方がいらっしゃいましたら、サポートしますので御一報ください。
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