BaySpo 1374号(2015/03/27)掲載
がんばろう 福島! 〜被災地へのエール〜
ジェトロ・サンフランシスコ・センター 永松 康宏
永松 康宏 (ながまつ やすひろ)
92年4月日本貿易振興会(ジェトロ)に入り、東京本部各事業部、パリ事務所(5年間)、福島事務所(11年4月より3.5年間)等を経て、2014年10月より現職。学習院大学法学部卒。東京都出身。

私は、ジェトロ福島貿易情報センターの所長として3年半の間、福島県郡山市に赴任していました。ご存じのように、東日本大震災で甚大な被害を蒙った、ある意味では「今でも被害を蒙り続けている」福島。今回は、シリコンバレー発のビジネスのお話ではなく、丁度震災4周年を迎えた今、福島について、私が見てきたこと、感じたことを、皆様にお伝えしたいと思います。

豊かな県 ふくしま
福島県は人口約200万人、面積は47都道府県のうち第3位の広さを誇ります。県内はそれぞれ四季折々に美しい自然に恵まれ、様々な農産物も収穫できる、非常に豊かな県です。かといって「農業県」という顔だけではありません。福島県は、東京から約250Km、新幹線も東北自動車道も整備されているという地政学上の優位さから、電気・電子また自動車産業を中心とした製造業の生産拠点集積地、一大「工業県」という顔も持っています。

震災直後は「臨戦態勢」
こうした豊かな県、福島県を、未曽有の大災害が襲いました。「東日本大震災」です。さらに福島県だけは大震災に加えて、「原発事故」という二重の災害に見舞われました。
 私が福島(郡山市)に赴任したのは、2011年4月20日、震災から1か月強経った時でした。着任した日の衝撃は一生忘れることができません。
 人口30万人強の郡山市も街中には歩行者の姿はほとんどなく、たまに見る歩行者も皆マスクを着用し下を向いて歩いている。車も家も窓は閉め切り、まさに桜は満開だというのにその木の下には人っ子一人いない。毎日続く震度4、5クラスの余震。
 ジェトロの事務所は福島県最大のコンベンション施設の中に入居していますが、当時はそこが県内最大の避難所であり、東京電力福島第一原発の周囲20kmからの避難者が約2500人避難されており、皆、疲れと不安で殺気立っていて、避難所中には常に怒号がこだましている、といった、まさに、福島県全体が「臨戦態勢」という状況でした。

一番の特効薬は、「福島に来てもらうこと」
福島に赴任してから、我々ジェトロ福島事務所の主な業務は、「福島県産品の安全性のアピールと風評被害払拭」でした。
 空間放射線量は原発近くの一部の地域を除いて、1、2年経つ間に徐々に他の地域と変わらない数値まで下がっていきました。しかし福島からいくらデータとともに福島は安全だという情報発信を続けても、なかなか国内外の方々の福島に対するイメージを変えることはできませんでした。
 「一人でも多くの人々に福島に来てもらうこと。そして、福島の人々の生活がいかに普段と変わらないかを自分の目で見てもらって、福島の食べ物がいかに安全であるかを味わってもらって、その自分自身の経験を、自分の地域、国に帰って、周りの人々に伝えてもらうこと」やはりこれが、風評被害払拭への一番の近道だと我々は悟りました。
 それから我々は、海外から様々なメディアやビジネスマンを福島に受け入れました。
 来ていただいた方々は口々に、「福島がこんなに早く復興していることに驚きとともに敬意を表したい。また食品の放射線量検査体制がこれほど整備されていることも驚きで、ここまで検査されているものであれば、日本中、世界中で福島の産品は最も安全であるという福島県の発表も理解できる。是非、自分の国に帰って、自分で見た、体験した福島の現況を広めていきたい」と、言っていただきました。
 こうした言葉を聞くたびに、我々は、自分たちの行動が間違っていなかったと確信したのでした。

新生ふくしまを目指して
そしてこの4年間、福島はいろいろな意味で本当に「がんばって」きました。
 生活面では、まず地震や津波で壊れた建物、道路、鉄道などは、そのほとんどが復旧・新築されています。また、県内の除染作業を積極的に進めた結果、現在、県内のほとんどの街では、空間放射線量が欧米各国の主要都市とほぼ変わらない量まで下がりました。
 農業面では、県内に農産物・食品の放射線測定施設を設置し、これまでほとんどの農産物・食品が基準値を下回っています。この結果をもって、農産物食品のPRを国内外で進め、福島県産の桃(収穫量全国2位)は、今やASEAN各国で人気の果物になっています。
 工業面では、「医療機器産業分野」と「再生可能エネルギー分野」の2つを県産業復興の重点産業に位置付け、様々なインセンティブもそろえつつ、海外の産業クラスターとも提携して、国内外企業とのアライアンス支援や福島県への立地誘致などを進めた結果、工場立地件数は、震災前の2.5倍を数え、洋上風力発電、産業総合研究所の再生エネルギー研究施設、医療機器開発評価センターなど、国内でも有数の研究施設が次々と建設されています。
 是非、皆さんも福島を実際に訪れていただければ、我々の話が嘘ではないことがきっとお分かりいただけると思います。
 福島は、皆さんのお越しをお待ちしています。

有澤保険事務所

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