今月号はベイエリア在住3年の濱野が初担当させていただきます。私が赴任した2012年当初はすでに、健康・安心・安全志向の高い人へのマーケットは確立していました。言わずと知れた、近年の日本食ブームも、健康を意識する人々を中心に広がってきています。
また、2010年には某男性雑誌の記事において、「もはや食のトレンド発信地はニューヨークではなく、サンフランシスコおよびオークランドだ」という記事が掲載されていました。このサンフランシスコ・ベイエリアは健康志向だけでなく、食のトレンドという意味においても米国市場をけん引する地域と言えます。
今回は、そんな同地域の食産業、チョコレート事情を少し紹介したいと思います。
サンフランシスコはチョコレートの街?
サンフランシスコ・ベイエリアでは、オーガニック市場はすでに確立しており、生鮮食品から加工品まで、いたるところでオーガニック食品を目にすることができます。3年前に私が赴任した際も、オーガニック・チョコレートを探すのは決して難しいことではありませんでした。しかし、それらの生産地をみると、サンフランシスコ市が多いことに気付きました。サンフランシスコ・ベイエリア産チョコレートと言えば、GhirardelliやSee’s Candyが有名ですが、その他にも、Recchiuti Confections、Poco Dolce、Guittard Chocolateなど、実に25社(個人調べ)を超えるチョコレートメーカーがあることがわかりました。この狭いエリアでこれだけのチョコレートメーカーがあるのは面白いと思いませんか?
意外な人がショコラティエ
前述の通り、サンフランシスコ・ベイエリアは健康・安心・安全など、食への意識の高い人が多く集まっています。同地域のTech企業内のカフェテリアでは、「優秀なエンジニアが1日でも長生きできれば、その1日が結果的に世界を変える技術・製品を開発するかもしれない」とシェフを鼓舞しているようです。(それが影響しているかどうかはわかりませんが)サンフランシスコ・ベイエリアの起業文化とあいまって、Tech系の方が食産業に進出する例も少なく、チョコレート産業においても、それを垣間見ることができます。
最近では空港等での土産コーナーでもよく見るようになったTCHOはその代表です。NASAのエンジニアとチョコレートのスペシャリストにより設立されたチョコレートメーカーで、その名前の由来は「Technology + Chocolate」から来ています。生産者と直接的な関係を構築し、豆の香りにこだわった本格的なチョコレートを提供しています。
また、2012年にMission地区でオープンされたDandelion Chocolateも有名です。元々、オンライン上でのアドレスブックサイトのFounderがその売却益を元手に設立したチョコレートメーカーで、カカオ豆の選定からパッケージまでの一連の生産工程を同工場内で行うという、こだわりのチョコレートを生産しています。
どこで買えるの?
このような豆にこだわって、焙煎からチョコレートの製造を一貫して行ったチョコレートのことを「Bean to Bar」といいます。単一の産地のカカオ豆を使ってその味の違いを出すのも特徴で、サンフランシスコ・ベイエリアのチョコレーメーカーはこのようなこだわりのあるところばかりです。Bean to Barはアメリカ発祥の概念で、今ではチョコレート発祥のヨーロッパまで広がっています。このトレンドもベイエリアのメーカーがけん引していると思われます。
私が足で稼いだところ、サンフランシス市内には15社を超えるチョコレートメーカーがあり、それをベイエリアに広げると、さらに10社程度のチョコレートメーカーがあります(もっとあるかもしれません)。そのほとんどのチョコレートメーカーがオーガニックやBean to Barといったこだわりのあるチョコレートを生産していて、多様性に富んでいます。
これらのサンフランシスコ・ベイエリアで生産されている地のチョコレートは、Ferry BuildingのFarm Fresh To YouやVillage Market、またEmbarcaderoにあるFog City Newsで購入することができます。みなさんもサンフランシスコ・ベイエリアらしいチョコレートを一度食べ比べしてみてはいかがでしょうか?
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