BaySpo 1396号(2015/08/28)掲載
急速に広がるドローン市場 〜個人的利用は問題視する声も〜
ジェトロ・サンフランシスコ・センター 永松 康宏
永松 康宏 (ながまつ やすひろ)
92年4月日本貿易振興会(ジェトロ)に入り、東京本部各事業部、パリ事務所(5年間)、福島事務所(11年4月より3.5年間)等を経て、2014年10月より現職。学習院大学法学部卒。東京都出身。

 今年4月に、日本の首相官邸屋上で発見されたことで、にわかに日本国内でも注目を集め始めたドローン。もともと軍事目的で開発されたドローンは、米軍では以前よりドローンを利用した偵察・爆撃行動などに利用されてきましたが、最近は個人所有の娯楽用ドローンも増えてきています。ただこうしたドローンの急速な普及が、様々な問題を引き起こしていることも事実です。

急速に拡大するドローン市場

皆さんご存知の通りドローン(Drone)とは、無人での飛行が可能な航空機の総称で、特に遠隔操作やコンピュータ制御によって飛行するものです。ドローンにはいろいろな大きさ・形状・用途のものが含まれますが、軍事用ドローンは無人機といっても10メートルを超える大型機が多く、主に遠方の偵察や爆撃などに用いられています。個人・商業用ドローンは、軍事用よりもより小型の回転翼型ドローンが農場での農薬散布や空撮などの用途で実用化されています。更にはAMAZON等オンラインショッピングの分野において、ドローンによる配送システムの開発研究も進んでおり、商業用ドローンの普及も目の前だと言われています。
 ドローン市場は今、急速に拡大しており。米大手ドローンメーカーの3Dロボティクス(本社:カリフォルニア州)のクリス・アンダーソン最高経営責任者(CEO)によると、同社はこれまでに米国内だけでも50万機を販売しているとのこと。連邦航空局(FAA)も、今後10年で個人用ドローンの市場規模は900億ドルに及ぶと見込んでいます。

森林火災の消火活動を妨害

 ただこうしたドローンの急速な普及は、法制度や統一ルールがまだ整備・確立されていないこともあり、様々な社会問題を引き起こしています。 
 今年7月17日、カリフォルニア州サンバーナーディーノ国立公園で森林火災が発生。付近を通る州間高速道路15号線上にあった車両に飛び火して大規模化したため、消防隊が空路で現場に向かいましたが、現場上空を5機の個人用ドローンが飛んでおり、消火活動に支障をきたしたという事件が起こりました。ドローンと消防隊の機体が接触した場合、パイロットだけでなく高速道路上を避難する人々にも危険が及ぶ可能性があるため、消防隊はドローンが現場を離れるまで約20分間上空を旋回し続けるほかなかったとのこと。この火災によるけが人は幸いいませんでしたが、家屋5棟、高速道路上の車両20台に延焼し、3・500エーカー(約14平方キロ)が灰になりました。
 カリフォルニア州では、今年6月だけで6件の個人用ドローンによる森林火災の消火活動の妨害があったとして問題になっています。同州議会のマイク・ガット下院議員(民主党)とテッド・ゲインズ上院議員(共和党)は7月20日、ドローンが森林火災や捜索救助活動の際に消防隊員の空路を妨害した場合はドローンを破損しても免責されるという法案(上院法案168)と、ドローンによって森林火災の消火活動が妨げられた場合は最大5000ドルの罰金か6ヵ月以下の懲役、もしくは罰金と懲役の両方を科すという法案(上院法案167)を提出しました。

まず民間レベルでドローン規制

 今年1月にロイター通信が米国で2405人を対象に行ったドローンに関する調査では、42%がドローンの個人所有に反対と回答し(「賛成」30%、「分からない」28%)、個人用ドローンの規制を望む回答が73%、私有地上空のドローン飛行に反対する回答が71%でした。ただ、連邦航空局(FAA)が2月に発表したドローン規制案では、住宅など私有地上空の飛行を未だ禁止はしていません。
 このような懸念に対する1つの解決策を提供する団体が、ノーフライゾーン(NoFlyZone)です。同団体のウェブサイトで自宅住所を無料登録すると、同団体と提携しているドローンメーカーが利用するデータベースに情報が送信され、メーカーは登録された住所の上空を飛行しないようプログラミングされます。飛行を避けたいエリアをあらかじめプログラミングしておくことで、該当エリア上空に「見えない壁」のようなものが作られるという仕組みです。「フォーチュン」によると、ノーフライゾーンへの登録者は1万人を超えているとのことです(2015年2月時点)。
 その手軽さ故に、今後ますます広がりを見せるであろう商業用、娯楽用ドローン。しかし手軽さ故に、簡単にプライバシー侵害や公務執行妨害などの問題も引き起こしてしまいます。国レベルひいては世界レベルでのルール・法制度確立が待たれるところです。
(執筆協力:田中三保子)

有澤保険事務所

自動車保険をはじめ、火災保険、アンブレラ、ビジネス保険、労災保険、生命保険、健康保険などを取り扱う総合保険会社です。Farmers
Insurance、Blue Cross等のエージェントであり、日本語できめ細やかな安心のサービスを提供しています。

有澤保険事務所
2695 Moorpark Ave, Ste 101, San Jose, CA, 95128
http://www.arisawaagency.com

有澤保険事務所
(408) 449-4808
No Reproduction or republication without written permission
Copyright © BAYSPO, Inter-Pacific Publications, Inc. All Rights Reserved.