BaySpo 1422号(2016/02/26)掲載

米国で急速に普及する「Emoji」 
〜広告ツールに起用する企業も増加〜

ジェトンフラロ・サンシスコ・センター 永松 康宏

永松 康宏 (ながまつ やすひろ)
92年4月日本貿易振興会(ジェトロ)に入り、東京本部各事業部、パリ事務所(5年間)、福島事務所(11年4月より3.5年間)等を経て、2014年10月より現職。学習院大学法学部卒。東京都出身。

 日本発祥で、携帯電話のメッセージ交信で利用される「絵文字」が、米国でも「Emoji」として急速に普及中です。「Emoji」を広告ツールとして利用する米国企業も増えていますが、それには若年層の「広告離れ」が影響しているとのこと。今回は米国企業の「Emoji」広告の広がりについてお話ししましょう。

米国でも「Emoji」として普及
 携帯電話用の絵文字(以下、絵文字)は、1999年までに日本の携帯電話会社によって開発されたコミュニケーションツール。2011年にiPhoneで日本式絵文字が利用可となり、米国だけでなく世界各国で人気を集めるようになりました。
 米国ではこれまで、括弧やコロン、アルファベッドを組み合わせてシンプルな顔文字を作るエモーティコンが一般的でしたが、現在では、様々なイラストを携帯メッセージに利用できる日本式の絵文字が広く普及しており、7割以上の米国人が毎日絵文字を使用しているそうです。
 日本式の絵文字は、英語でも「エモジ(Emoji)」と呼ばれ、今年5月には、ウェブスター辞典に新語として「Emoji」が追加されたほど。「Sushi」「Ramen」と同様に、米国でそのまま通じる日本語のひとつとなりました。

絵文字を使った広告も
 絵文字の普及が進む中で、絵文字を広告ツールとして起用する米国企業も増えています。ドミノ・ピザは今年6月、携帯電話のメッセージからピザのイラストの絵文字を送るだけで、簡単に宅配ピザを注文することができるサービス「イージー・オーダー」を開始しました。2回目以降の注文では、専用番号に携帯メッセージ機能でピザの絵文字を送信するだけで、初回と同じピザを発注することができるというものです。
 ゼネラルモーターズは今年6月、シボレー・クルーズ2016年モデルの発売にあたり、ほぼ絵文字のみのプレスリリースを発表しました。同車のプロモーションのため、絵文字を多用したミュージックビデオも制作しています。他にも、バーガーキング、マクドナルド、コカ・コーラ、女性用下着メーカーのヴィクトリアズ・シークレットなど、数多くの「Emoji広告」を目にすることができます。
 更に企業ではないですが、民主党のヒラリー・クリントン上院議員は、今年8月に実施した学生ローンに関する意識調査のアンケートにおいて、3文字以内の絵文字で回答するようにと呼びかけるなど、政治家も気軽に絵文字を利用する様子が伺えます。

人口の3割を占める「ミレ二アル世代」
 こうした「Emoji広告」を扱う企業が増えている理由について、ニューヨーク・タイムズ紙は「ミレニアル世代(Millennial Generation)」の存在を指摘しています。ホワイトハウスの定義によると、ミレニアル世代とは1980〜2004年の間に誕生した人口を指し、全人口のおよそ3分の1を占めています。その消費者規模の大きさだけでなく、同世代が一度特定のブランドを気に入れば、長期にわたってそのブランドを贔屓にする傾向にあるとの報道もあり、企業にとっては無視できない存在です。

広告離れが著しいミレ二アル世代
 しかしながら同時に同世代は「企業がアプローチする消費者層としては最も難しい世代」だとも言われています。その理由のひとつは、同世代がテレビコマーシャルや新聞広告などに触れる機会が少なく、従来通りの広告戦略では彼らの関心を集められないためです。幼少期からハイテク製品に触れて育った同世代は、地上波や衛星放送などのテレビ番組を見るよりも、インターネットの動画サイトやオンデマンド機能を使って動画を楽しむケースが多く、それは、同世代がテレビコマーシャルをみる機会が、他の世代と比べて限られているということを示しています。
 同世代が広告を目にする機会が少ないもうひとつの理由として、モバイルアプリの使用時間が多いことが挙げられます。同世代の中でも特に若い18〜24歳がひと月にアプリに費やす時間は91時間にのぼり、25〜44歳のそれと比較すると18時間以上、45〜54歳からは33時間以上も多いとのこと。そこで企業はアプリ向けの広告を検討するわけですが、広告を載せないアプリも多く、またモバイル機器の小さな画面では大きいバナー広告は載せにくいため、結局企業にとっては効果的な広告を打つことが難しいツールというわけです。
 そんな広告嫌いが多い同世代ですが、その10人に4人が文字よりもイラストや写真を使ったコミュニケーションを好むという調査結果も出ています。絵文字を使ったツイッター投稿など、彼らの関心を集めやすく、一見すると広告とはわからないアピールであれば、同世代に好意的に受け入れられやすい――だから近年「Emoji」広告が急速に普及してきているのでしょう。

(執筆協力:高橋由奈)

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