シリコンバレーは、リーマンショック後の2010年頃から、5年も景気拡大が続いてきました。投資が増加し、企業の資金が増え、賃金が上がり、人が集まり、渋滞が激化し、家賃や物価が上がり、円安で駐在員の手取りは減少し(これは関係ないですね)、という状況でした。ところが、最近はシリコンバレーの景気が後退局面にあるとの報道も見られるようになってきました。そこで、本稿ではシリコンバレーの景気に関する各種の指標を御紹介するとともに、日本企業の取り組みについて触れたいと思います。 企業の業績
シリコンバレーで従業員の集団解雇(レイオフ)を発表するIT企業が相次いでいます。Yahooは本年2月10日に107人のレイオフを発表するとともに、今後全社員の15%に相当する1500人以上の解雇の計画を明らかにしました。企業向けデータ保存サービスのNetAppも2月に全社員の12%に当たる約1500人を削減するとの報道がありました。
さらに、米国民生技術協会(CTA)の本年1月のラスベガスCESでの発表によると、デジタル家電全体の世界売上高は、金額ベースで2015年は8%減と3年ぶりの減少に転じました。また2010年以降二桁成長を続けてきたスマホ販売台数も2015年は7%増にとどまり、タブレット販売台数は14%の減少に転じるなど、台数ベースでも2015年が峠であったような数字が見られます。
投資の動向
企業の業績悪化、先行きの不透明感を反映し、投資マインドも急速に冷え込んでいるとされています。PwCによるベンチャーキャピタルのベイエリアの投資額も、2015年4ー6月期にはITバブル時に次ぐ過去第2位の$8.9Bの投資を記録した後、7ー9月期$8.1B、10ー12月期$4.6Bと急激に減速しました。しかし2016年1ー3月期は$4.9Bと微増となりました。
物価の動向
サンフランシスコの家賃は、2014年にニューヨークを抜いて米国一になった後も上昇を続けており、1ベッドルーム賃料の中央値は2015年10月に$3670と最高値をつけた後、11月、12月と減少に転じました。ただし1月、2月は回復し、3月も横ばい圏内で動いていて、まだ景気後退と決めつけるのには時期尚早と思われます。
今後の取り組み
シリコンバレーの景気動向は引き続き目が離せないですが、景気が後退したからといって、日本企業のシリコンバレーでの取り組みが後退することはあってはならないと思います。優秀な人材が世界中から集まり、オープンな環境で連携しながら新しい技術を作り、様々な人の協力を得てビジネス化して世界中に普及させる、というシリコンバレーのエコシステムに学ぶことは多いです。また自動運転、電気自動車、ドローン、IoT/ビッグデータなど、将来の社会や産業を大きく変える可能性のある技術がここで開発されています。VC投資も、日本全体の年間投資額より多い金額が四半期だけで投資されているわけで、シリコンバレーの動向から目を離して良い訳がありません。
半導体産業はシリコンサイクルといわれる大きな景気変動があることで有名ですが、2000年以降の日本の半導体企業は景気後退時に投資を絞ったため、景気回復時の需要を取り込めずに負けていったとの分析もあります。日本企業の皆様におかれては、是非シリコン(バレー)サイクルに惑わされずにしっかりと取り組みを進めて、当地での存在感を高めていただきたいと思っています。
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