BaySpo 1461号(2016/11/25)掲載
「おもてなし規格認証」制度スタート
ジェトロ・サンフランシスコ 次長 下田 裕和
下田 裕和(しもだ ひろかず)
JETROサンフランシスコ次長。平成11年、通商産業省(現経済産業省)入省。IT、サイバーセキュリティ、バイオ・再生医療、ヘルスケア、サービス業等の産業推進担当を経て、2016年6月より現職。東京工業大学卒。

  フリーウェイで運転していると、こんなに空は大きくて近いところにあるのかと驚くことがあります。考えてみると、360度ぐるりと空を見回すことができる場所なんて東京にほとんどありません。大都市なのに大地にいる感覚がする、そんなパワースポットで生活しているのだと思いつつ、日本での生活との違いに頭を巡らせました。

 ベイエリアに着任してから5カ月、米国流の経済合理的な不親切さに悩まされ続けてきました。銀行口座の開設、運転免許の取得などの生活に不可欠な公共サービスでは住所や名前、料金のミスが毎回発生して何度となくオフィスに通いましたし、インターネット接続は購入したキットで繋がらず、3時間以上電話しました。道や電車は汚いし、家はきれいに見えても表面的に繕っているのがすぐバレます。売り物が壊れていることも日常茶飯事ですし、腐った食べ物が売られていることもあります。ハプニングはいちいち疲れます。間違っているのは相手なのに、放っておくとこちらが被害を受けるので、面倒な火消しをして廻ることになります。おかげで、最初から期待せず、相手のミスが起きないようにあらゆるリスクを事前に取り除く知恵がつきました。

 逆に米国での生活の中で感激することもあります。自動車を購入する際も時間がかからないし、どんなに使いまくったものでも返品は簡単です。赤信号でも安全なら右折できるなんて誰が考えたのかと思うくらい合理的なルールです。価格設定は経済原理が働いて、大量に買うと極端に安くなりますし、ガソリンも市況に合わせて単価が日々変わります。それから、女性、子供、貧しい人などに対しては格段に親切なように感じます。先日のHalloweenで、小雨が降る中近所を巡ってきたのですが、バケツに入りきらないほどのお菓子をもらって帰ってきた娘の言葉が「寒かったけど温かかった」でした。このタイプの温かみは日々感じますし、私も一層心がけるようになりました。

 こうした違いは、社会・文化と経済が作り出すものなので、どちらが良いということではないのですが、認識しておくとビジネス上のチャンスになり得ます。例えば、米国の日常的な出来事が日本では一大事としてニュースで取り上げられたりしますが、この厳しい世論の環境で利益を生んできた日本企業にはある意味素晴らしい製品・サービス品質の高さがあります。一方で、これを価値に変えられなければ日本以外の国で勝ち抜いていけません。そこそこのものでも高く売られているベイエリアにいると、日本の製品やサービスについて価値を創造し、品質の見える化を進められれば、大きなチャンスを得られるように思います。この問題意識に同調するかのように、先日、日本で「おもてなし規格認証」制度がスタートしました。

 おもてなし規格認証は、外国人への対応や顧客、従業員の満足度向上等に取り組んでいることをマークで示すもので、サービス品質のアピールにつながります。

 日本企業は持っている技術(シーズ)を起点に解決できる課題を探してビジネスを考えるのに対して、米国企業は課題(ニーズ)を解決するために必要な技術をつなぎながらビジネスを考えると言われます。この違いは、細かい気遣いで埋め尽くされた日本と、手続ミスや渋滞、停電、身の安全など身近な課題が山積みの米国との差も影響していると思います。日米の企業が収益性のあるビジネスモデルを描き切り、米国での身近な課題を解決できるのであればこの上ないことです。
 ベイエリアは、夢を実現しようと本気で頑張る人たちが集まっていて、その夢を本当に実現するチャンスがあるところです。高い生活費はこのチャンスを得るために払っているとも考えられます。せっかくこの地に降り立ち、青くて大きな空がこんなに近くにあるのですから、自分なりの夢を持って思いっきりもがいてみないともったいない、そんなことを考えながら1分1秒を無駄にしない生き方をしたいと思います。ベイエリアの日本人は4万人以上と言われています。4万個以上の夢が少しでも実現されることを心より祈っています。


 おもてなし規格認証は、外国人への対応や顧客、従業員の満足度向上等に取り組んでいることをマークで示すもので、サービス品質のアピールにつながります。
 日本企業は持っている技術(シーズ)を起点に解決できる課題を探してビジネスを考えるのに対して、米国企業は課題(ニーズ)を解決するために必要な技術をつなぎながらビジネスを考えると言われます。この違いは、細かい気遣いで埋め尽くされた日本と、手続ミスや渋滞、停電、身の安全など身近な課題が山積みの米国との差も影響していると思います。日米の企業が収益性のあるビジネスモデルを描き切り、米国での身近な課題を解決できるのであればこの上ないことです。
 ベイエリアは、夢を実現しようと本気で頑張る人たちが集まっていて、その夢を本当に実現するチャンスがあるところです。高い生活費はこのチャンスを得るために払っているとも考えられます。せっかくこの地に降り立ち、青くて大きな空がこんなに近くにあるのですから、自分なりの夢を持って思いっきりもがいてみないともったいない、そんなことを考えながら1分1秒を無駄にしない生き方をしたいと思います。ベイエリアの日本人は4万人以上と言われています。4万個以上の夢が少しでも実現されることを心より祈っています。

「おもてなし規格認証」制度について詳しくは、経済産業省のページをご覧ください。
http://www.meti.go.jp/press/2016/08/20160825001/20160825001.html

有澤保険事務所

自動車保険をはじめ、火災保険、アンブレラ、ビジネス保険、労災保険、生命保険、健康保険などを取り扱う総合保険会社です。Farmers
Insurance、Blue Cross等のエージェントであり、日本語できめ細やかな安心のサービスを提供しています。

有澤保険事務所
2695 Moorpark Ave, Ste 101, San Jose, CA, 95128
http://www.arisawaagency.com

有澤保険事務所
(408) 449-4808
No Reproduction or republication without written permission
Copyright © BAYSPO, Inter-Pacific Publications, Inc. All Rights Reserved.