BaySpo 1465号(2016/12/23)掲載
日本人の留学の現状 
ジェトロ・サンフランシスコ・センター
濱野 友輔
濱野 友輔 (はまの ゆうすけ)
 2003年日本貿易振興機構(JETRO)に入構。東京本部、仙台事務所を経て、2012年4月にサンフランシスコ事務に赴任。JETRO入構から現在まで、一貫して海外企業への日本進出(対日投資)支援に従事。サンフランシスコ事務所では日本製品の米国企業輸出にも携わる。

「第2のシアトル」ポートランド
  サンフランシスコ・ベイエリアには、Twitter、Uber、Salesforceなど、多くの大手テック企業が立地していますが、テック企業は地価の高騰や、人材確保の問題に頭を悩ませています。
 Apartment Listによる2016年12月のNational Rent Reportによると、サンフランシスコ市内1ベッドルームアパートの家賃中央値は3390ドルと、ニューヨークの3240ドルを超え、全米高価格ランキング1位となっています。シリコンバレーの中心であるサンノゼは2050ドルで全米6位の高さとなっています。全米家賃の中央値は1100ドルであることを考えると、サンフランシスコ・シリコンバレーの家賃が米国内でもいかに高いかが分かると思います。オフィス賃貸料も同様に高騰しており、New York Timesは2016年1月8日付の記事で、サンフランシスコがニューヨークマンハッタンを抜いて全米1位になったと報道しています。
 求人紹介サイトIndeedによると、2016年11月期で、人口1人に対する求人数が全米で最も多い都市1位にサンノゼが挙げられています。1人当たり求人数が高いということは、労働者からは就職機会が多く、良い現象のように思えますが、一方の企業側からすると、求める人材を十分確保できない/競争率が高いことにもつながります。
 またテック系人材の給与について、別の求人紹介サイトGlassdoorが行った調査では、サンノゼにおけるソフトウェアエンジニアの給与は全米高額ランキング2位、サンフランシスコは5位。また、システムアドミニストレーターの給与では、サンノゼは全米1位、サンフランシスコは2位と、非常に給与=人件費の高い地域となっています。
 このような背景から、多くのサンフランシスコ・ベイエリア企業が、比較的住宅費が安く、人材確保のしやすいシアトルに拠点の新設・移転を行ってきましたが、最近では、オレゴン州ポートランドが「第2のシアトル」として注目されています。

メルカリのポートランド進出
  フリマアプリを提供する日本企業のメルカリ(米国本社はサンフランシスコ)は、ポートランドに100人規模のカスタマーサービスオフィスを設立すると今年11月に発表しました。デラウェア、テキサス、ネバダ、コネチカット、南カリフォルニアらの候補地があったようですが、テック系企業のカスタマーサポートチームが多く進出しており、コスト、労働市場のサイズ、立地インセンティブなどを比較した結果、ポートランドに立地を決めたようです。
 ポートランドは、サンフランシスコからは飛行機で1時間半、シアトルからも車で3時間。時差もなく、サンフランシスコからのオペレーションがしやすいのが利点です。また、法人実効税率が低い上に、消費税がありません。人件費、オフィス賃貸料といったコスト面の利点も高く、サンフランシスコ拠点に比べ、テック系企業は年間コストの3割以上も安く抑えられるとCBRE Researchは試算しています。
 さらに、ポートランドは、多くの優秀な人材が流れ込んでおり、高い教育水準を持つ労働者が多く存在する都市になっています。CBRE Researchによると、テック系人材がたどり着く都市の全米10位、また人口における高学歴者の割合は全米9位と紹介しています。
 メルカリ以外にも、民泊仲介サイトのAirbnb、ウェブサイト制作のSquarespace、モバイルPOSシステムのShopkeep、オンラインペイメントのStripeなど、多くのサンフランシスコ・ベイエリアベースの企業がポートランドに進出しています。

住みたい場所で仕事探し
 ポートランドは1970年代にアーバン・グロース・バウンダリー(都市開発境界)を設定し、周辺の豊な自然を残しながら都市機能を集中させてきました。公共交通機関も整備され、その結果、住民だけでなく外国人に対しても親切な街となっています。
 引っ越しサービス大手ユナイテッド・ヴァン・ラインズの発表によると、2015年1年間の州を越えた転入者数の全米第1位はオレゴン州で、その数は全体の実に69パーセントを占めたといいます。これについて、オレゴン州経済発展局担当者は、「米国の若者の意識が変化し、仕事を見つけた場所に住むのではなく、住みたい場所で仕事を見つけるという風潮になった。住みたい場所としてポートランドが選ばれている」と分析しています。住宅費が比較的安価で、ビジネス環境だけでなく住環境も整うポートランド。今後もさらに多くの若者が転入してくることが期待されます。その結果、労働市場としても益々魅力を増し、コストの優位性と相まって、さらに多くのテック系企業が集まることになるでしょう。

 

有澤保険事務所

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