今回の記事は牛肉(米国ビーフ)をテーマとして取り上げます。米国と日本の牛肉の格付けなどの違いや食肉の処理工程(熟成ビーフ)についてご紹介します。
日本での牛肉の格付け
日本における格付けに関しては、「枝肉」の状態で、「歩留等級(A〜C)」と「肉質等級(5〜1)」を組み合わせて15段階で格付け分類がされています。肉質等級に使われる項目は、「脂肪交雑」、「肉の色沢」、「肉の締まりおよびきめ」、「脂肪の色沢と質」です。それに加えて歩留等級A〜C(歩留:肉の取れる量)という区分を使って格付けされています。日本では歩留等級と肉質等級を組み合わせて判断し、「A5ランクの肉」と格付けされて販売されています。それに加えて、全国ブランド牛肉(松坂牛、神戸ビーフ、近江牛など)も合わさり、様々な種類のブランドやランクの枝肉が流通・販売されています。
米国での牛肉の格付け
米国における牛肉の枝肉の格付けも日本と同様に肉質等級(Quality Grade)と歩留等級(Yield Grade)から構成されており、USDA(米国農務省)の格付け検査官により等級分けがされています。
その格付けの主な決定基準は、@牛の種類 A性別 B成熟度 C脂肪交雑などによって決定され、次の8つの等級(「プライム」「コマーシャル」「チョイス」「ユーティリティ」「セレクト」「カッター」「スタンダード」「キャナー」)に分けられています。
一方で歩留等級といわれるものでも別途5段階に等級分けされており、@皮下脂肪A腎臓・骨盤・心臓などへの脂肪付着度Bリブロース芯のサイズ(面積)C体重量によって決められるそうです。
日本・米国の格付けの違い
この格付けの基準に関して、米国ならではの「性別」という観点ですが、日本でも雌牛の肉質の方が雄牛より筋肉質が少なく、柔らかいと言われています。日本の格付け基準にはないですが、食感としてわかる部分です。
日本ならではの基準では、「肉の色沢」、「肉の締まりおよびきめ」、「脂肪の色沢と質」など、見た目の部分での霜降り度合などにも関係しています。それぞれの基準に差はありますが、その中でも枝肉の風味や旨味、価値を判断することに変わりはなく参考になります。
付加価値の付け方
日本でも熟成ビーフが手軽に入手できるようになりましたが、米国の食肉専門店などでは独自の熟成方法・期間を設け一般的に熟成肉が販売され、熟成工程で枝肉に高付加価値がつけられています。日本では、ブランド牛や格付けの高い肉を取り扱って他社との差別化が図られる場合、高いカッティング技術を生かして枝肉を余らせることなく小間切れ肉などにし、ブランド牛ながらも安価な価格で提供する工夫や、各小売りで独自に牛肉加工品(総菜など)の幅広い加工商品が作られています。
熟成ビーフの歴史
1960年代に一部の熟成方法として真空包装やボックスビーフが開発されるまでは、牛肉のドライエイジングという方法しかありませんでした。その後、国際的に真空包装が牛肉の輸送に積極的に使われるようになり、1970年代はこの方法が主流となりました。1980年代にかけては、出荷される牛肉の90%で真空包装が使われるようになりました。真空包装は肉の収縮やトリミングのロスが生じないため、精肉業者、小売業者、フードサービス業にとってメリットが多い方法のようです。真空包装や冷蔵技術の進化にともない熟成ビーフも発展を遂げていきます。中でも大きく分けて二つあり、ドライエイジング(乾燥熟成)とウェットエイジング(通常の熟成)の主な違いは表の通りです。
熟成ビーフと旨味
熟成する過程において、タンパク質が分解酵素によりアミノ酸に分解され、旨味や甘みが増します。一方で、熟成により脂肪酸組成そのものには変化はないという説も。熟成ビーフの旨味を本格的に味わうためには、各食肉小売店舗の独自の熟成スタイル(熟成日数、貯蔵温度、相対湿度、気流)を比較して、味の違いや旨味を探求すると、今までと違う観点でビーフが堪能できると思います。
【参考資料】
農水省 www.maff.go.jp
(社)日本食肉格付協会 www.jmga.or.jp
米国食肉輸出連合会(牛肉の格付けシステム)
www.americanmeat.jp
米国食肉輸出連合会
(Dry-Aging of Beef Executive Summary)
www.americanmeat.jp |