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BaySpo 1488号(2017/06/02)掲載 |
EV市場、急速に拡大中
ジェトンフラロ・サンシスコ・センター 永松 康宏 |
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永松 康宏 (ながまつ やすひろ)
92年4月日本貿易振興会(ジェトロ)に入り、東京本部各事業部、パリ事務所(5年間)、福島事務所(11年4月より3.5年間)等を経て、2014年10月より現職。学習院大学法学部卒。東京都出身。 |
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テスラをはじめとして、近年特にベイエリアではElectric Vehicle(EV)の走る姿が頻繁にみられるようになっています。充電ステーション等のサポート設備もサンフランシスコ市内また近郊ではかなり整いつつあります。このEV市場拡大の動きは、ますます活発になりそうです。
EVシェアは23年間で
1%から47%へ
エネルギー分野調査会社ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)は今年4月24〜25日、ニューヨークでエネルギーの国際会議「ザ・フューチャー・オブ・エナジー・サミット」を開催しました。会議開催中に基調講演を行なったBNEF設立者のマイケル・リーブライヒ氏は、現在EVが世界の新車販売台数に占める割合はおよそ1%だが、それが「2040年までに35〜47%に達する」と述べました。加えて同氏は、このEV販売台数の増加を後押しする要素は、車体価格の低下と車両ラインナップの充実化だと主張しています。
まずEVの車体価格について同氏は「(車体価格を左右する)リチウムイオンバッテリーの価格は2010年から73%低下しており、2030年までにさらに75%の価格低下が見込まれる」と述べたうえで、「もしEVの車体価格がガソリン車の価格を下回ったら、どの国でも5年以内に新車販売台数の4割がEVになるだろう」との見解を示しました。
車両ラインナップについても、「2008年に販売されていたのはテスラのスポーツカー、ロードスターの1車種のみだったが、今日SUVやハッチバック、ミニバンなど様々な選択肢がある。それは今後益々拡大し、2020年までに120車種を超える」と予測しています。さらに同氏は、「新しく開発されるEVのスタイルや性能がはますます進化し、これまでのガソリン車を時代遅れなものにさせるだろう」とも述べました。
石油会社も
EV市場拡大を予想
同会議席上、フランスの石油大手トタルのジョエル・カウス主席エコノミストも、今後世界のEVシェアは増加に向かうと予測しました。同氏は世界の新車販売台数に占めるEVの割合が、2030年までに30%まで拡大すると予想しており、EV人気による影響で「石油燃料の需要は頭打ちになるだろう。需要が減少する可能性さえある」とさえ言っています。このコメントは、世界有数の石油会社の首席エコノミストにとって、自社の利益確保を考えると本来EV市場の拡大は望まないであろう立場にもかかわらずの発言とあって、多くの会議参加者から驚きをもって迎えられました。
米国では
EVセールスが
今年好調との予測も
米国のEV販売台数が、今年1年で飛躍的に伸長すると予測する声もあります。消費者行動を調査するNPO団体の米国消費者連盟(CFA)は今年4月、2017年の電気自動車(EV)の販売台数の予測を発表しましたが、それによると、同年の純電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHV)を合わせたEVの販売台数は34万7800台に達し、前年の15万9139台の2倍以上になるだろうとの予測を発表しました。
その理由について、同連盟の公共政策部門のディレクターで、自動車情報の年鑑誌「ザ・カーブック」の著者でもあるジャック・ギリス氏は、@バッテリー効率の改善、A商品ライナップの充実化、B車体価格の低下、の3点が実現しつつあるためであるとし、「今後EVが自動車市場で存在感を増していくことには疑いの余地がない。EVの将来は明るい」と述べています。
加えて同連盟の調査部門のディレクターを務めるマーク・クーパー博士は、「消費者は近年のガソリン価格の低下が永遠に続くわけではないことを理解している」と述べ、将来的な燃油価格上昇の可能性が、消費者の関心をEVに向かわせる理由のひとつになると示唆しています。
「昔、自動車ってガソリン入れて走ってたんだってね」と言われる日が来るのも、そう遠くないのかもしれません。
(執筆協力 高橋由奈)
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