既に様々な場面で報道していますのでご存知の方も多いと思いますが、カリフォルニア州をはじめ20州(グアム等準州除く)が発行している運転免許証や身分証が、2020年10月までに米国内線の航空機に搭乗する際の身分証として認められなくなります。カリフォルニア州陸運局では、今年1月22日から連邦基準の身分証「リアルID(運転免許証・ID)」の申請を受け付けています。
カリフォルニア州は連邦基準のリアルID発行へ
9・11同時多発テロを受けて、安全対策強化の目的で成立した「正当な身分証明法(リアルID Act)」は、連邦統一基準での運転免許証や身分証(ID)の発行を各州に義務付けています。同法は2005年に成立したものの、個人情報漏えいの恐れや財政負担を理由に導入に反対する州もあり、施行が延期され続けてきました。国土安全保障省(DHS)は施行に向けて段階的に取り組みを進めてきており、最終施行期限を2020年9月30日と定めています。
2018年1月25日現在、全米の31州(DC含む)でリアルID法に準拠した対応が完了しているものの、同法に準拠した運転免許証やID(リアルID)を発行していない州では施行に向け対応に追われており、カリフォルニア州では1月22日からリアルIDの申請を受け付けています。(リアルIDの各州準拠状況は、DHSホームページ www.dhs.gov/real-idを参照ください)
リアルIDの発行対象者は米国市民や永住権を持つ移民、各種ビザを持つ合法的な外国人居住者で、不法移民は対象外となります。(現在、カリフォルニア州を含む12州(注1)と首都ワシントンでは、不法移民にも運転免許証が発行されている)。また、国内線航空機の搭乗以外に、米軍基地や連邦政府施設、原子力発電所に出入りする際にもリアルIDの提示が求められます。
2020年を待たずに
必要となるケースも
DHSは2020年9月30日を最終的な施行期限としているため、いずれの州においても18歳以上の成人は同年10月1日以降、国内線航空機への搭乗に際してはリアルIDか、運輸保安局(TSA)が認める身分証(表参照)が必要になります。
現在、カリフォルニア州においては施行延期が2018年10月10日まで認められています。住民への影響なども考え、最終施行期限の2020年10月まで延期申請を引き続き行っていくとみられるものの、同州が延期申請をしない、あるいは申請をしても認められなかった場合は、最後に認められた期限以降は、リアルIDまたはTSAが認める身分証の提示が求められることとなります。
「申請は任意」と
カリフォルニア州は強調
リアルIDの発行開始後は、従来の免許証・IDを発行しなくなる州もある一方で、カリフォルニア州では引き続き発行する予定とのこと。リアルIDがなくてもパスポートやグリーンカードなどTSAが認める身分証を携行すれば国内線航空機の搭乗は可能で、また、運転免許証や社会保障を受ける際の身分証としてリアルIDは必要ありません。同州陸運局はウェブサイト上で「リアルID申請はあくまで任意」と明記しています。
また表にあるように、2009年に国務省とDHSが導入し、ニューヨーク州など(注2)が発行する「エンハンスド・ドライバーズ・ライセンス」があれば国内線搭乗時にリアルIDは必要ありません。
頻繁に飛行機を利用する人や搭乗のたびにパスポートを携行したくない人にとっては、リアルIDに切り替える利点はあります。なお、カリフォルニア州の申請料金は従来の免許証・IDと同じです。ただし、従来の運転免許証の更新はオンラインでも行えますが、リアルIDに切り替える場合は陸運局に出向いて申請することが求められています。
(注1)カリフォルニア州、コロラド州、コネティカット州、デラウェア州、ハワイ州、イリノイ州、メリーランド州、ネバダ州、ニューメキシコ州、ユタ州、バーモント州、ワシントン州。
(注2)ニューヨーク州、バーモント州、ミシガン州、ミネソタ州、ワシントン州。
(執筆協力:田中三保子)
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