私は1年間の期限付き(2018年4月〜2019年3月)で、サンフランシスコに赴任しています。既に10カ月が経過しましたが、アメリカの歴史や文化について、自分なりに十分に知ることができたと満足しています。時間的制約から、テーマを深く掘り下げるのは無理でしたが、自分なりに効率的な方法を編み出し、実践することができたと思います。限られた滞在期間で、どうすればこの国を知ることができるのか、私の体験をもとに書いてみたいと思います。
試行錯誤した結果、次の3つの方法を組み合わせるのが最も効果的との結論に至りました。
@アメリカ各地を多く訪れる
A博物館を積極的に活用して効率よく学ぶ
B興味がわいたテーマに関する本を読む
いずれもオーソドックスな方法ですが、かえってこの方が、短期間で米国を理解するのには適していると思います。
@アメリカ各地を多く訪れる
仕事柄、アメリカのビジネス情報に接する機会は多いので、それ以外の部分(歴史・文化)をどのように学ぶのかが私の課題で、様々な試行錯誤を繰り返しました。
最初の3カ月は、ベイエリアから遠方へ出かける機会も少なかったですが、7月下旬に東海岸地域を訪れる機会があり、自分の米国への理解がベイエリア地域に限定されていることに気づきました。そんな反省から、次第に米国全土を積極的に回るようになり、現在に至っています。
米国各地を訪問し、自分の目で見ておくと、その土地への理解の深さが違ってきます。文字媒体やインターネットでの情報収集も可能ですが、やはり自分の足で歩くのが一番だと思います。結果的に40近い州に目的を持って訪問することができ、見分を広げられました。なるべく多くの機会を見つけ、遠方へ足を延ばされることをお勧めします。
A博物館で効率よく学ぶ
米国各地を知るためのひとつの切り口として、博物館を訪問する機会が増えました。博物館を利用することで、効率的に歴史・文化を学べるようになります。博物館は正確な情報を、大量にかつ分かりやすい形で提供してくれます。博物館が多い街は、それだけ見どころが多い街でもあるので、そこから逆算して訪問先を決めるのもひとつの方法だと思います。
米国の博物館では、展示物の撮影が可能なことが多く、気になる展示を写真に収めておけば、後日に深く調べることも可能です。1日で3〜4カ所を巡ることもあるので、滞在10カ月でゆうに100を超える博物館を訪問しました。スミソニアンのような巨大博物館は別として、個人的にはテーマを絞った博物館の方が、内容が深く頭に入ってくると思います。著名人物に焦点を当てたもの、歴史的出来事を紹介するもの、自然科学の研究成果を展示したもの、企業PRの意味合いが強いもの、個人コレクションを展示したもの等々、全米各地にはユニークな博物館が多くあるので、興味の惹かれる施設を探して訪問されればいいと思います。
B読書で理解を深める
ここ10年で電子書籍が飛躍的に普及し、本を手軽に持ち歩けるようになりました。私もこの10カ月で60冊以上の英語書籍を読んでいます。ノンフィクションが圧倒的に多く、特に人物伝が多かったと思います。人物伝は、米国の歴史・文化が身近に感じられるので、特にお勧めです。分厚い本でもいいですし、1時間で読破できるものでも構いません。興味の度合いによって、本を選べばいいと思います。
個人的に強く印象に残った書籍として、『The Boys in the Boat』を挙げたいと思います。20世紀初頭のシアトルが舞台のノンフィクションで、100年前のシアトルがどんな街だったのか、この本から知ることができます。多くの大企業が本拠を置く現在のシアトルですが、このようなところから街の成り立ちを追ってみるのも、興味深いのではないかと思います。
アメリカで生活してみると、待ちの姿勢では多くを学べないことが、次第に分かってきます。興味が湧くことがあれば、貪欲に調べてみるといいと思います。そんな中から、徐々にアメリカへの理解が深まるはずです。ご自身に合ったやり方で、トライいただければと思います。私も帰国ギリギリまで、アメリカを知る努力を続けたいと思います。ジェトロの業務も引き続き行っていますので、皆様とも何らかのご縁があればと思います。
|