「ハードウェアはハードだ。」（ハードウェア製品を扱うのは難しい）。ベイエリアのエンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)から良く聞かれる言葉だ。確かに資金調達が難しいことや、量産までに時間や資金がかかること、競争相手が多いことなど、ハードウェア開発はソフトウェアに比べて課題が多い。アクションカメラのGoPro社やスマートウォッチのFitbit社など世界的に成功を収めた企業もみられる中、同じくスマートウォッチのPebble社など市場から姿を消したスタートアップが多いことも理由の一つかもしれない。消費者向けハードウェアの分野では、97％が失敗するようだ（調査会社CB Insights）。
　それでも消費者、取り分けベイエリアの消費者は新しい製品が大好きだ。サンフランシスコ、パロアルト等に店舗を構えるIoTショールームのb8ta（ベータ）には、新しいユニークな製品が次々と並ぶし、ハードウェアの投資は引き続き堅調だ。急速にスタートアップ環境が整いつつある日本からも、多くのハードウェアスタートアップが生まれており、北米市場を足がかりに世界展開を目指すスタートアップが目立つ。

消費者の心に寄り添う
日本発の注目ハードウェア

�@スマートティーポット「Teplo」
　「気分や体調によって飲むべきお茶は違うはずだ。」Load & Roadはそんな消費者の気持ちにこたえるべくスマートティーポット「Teplo」(テプロ)を提供する。茶葉に合わせて最適な温度や抽出時間を再現するのは勿論のこと、消費者の心拍数、体温やストレス、部屋の温度や湿度、騒音レベルまで考慮した上で、お茶と飲む人にとって最適な抽出温度と時間を決定してくれる。Load & Roadは日本出身の河野辺和典さんとインド出身のMayuresh Soniさんらが立ち上げたスタートアップで、創業当時から世界での販売を目指し、国際特許も取得しながら開発を重ねてきた。同社の第一弾のプロジェクトである水筒型のTeploは約7万ドルの資金調達に成功しており、今回はよりパーソナライズされたお茶の提供を目指し、4月4日までKickstarterで受け付けている。

�A感情に特化したロボット「LOVOT」
　「役に立たないロボットがいてもいいじゃないか。」お掃除ロボットや宅配ロボットなど人の作業を代替するロボットが多い中、感情に特化したコミュニケーションロボットで世界市場を狙うのがGroove Xの「LOVOT」だ。半天球カメラや画像認識技術、全身に埋め込められたセンサーを駆使して、近寄ったら「抱っこしてと手をあげるしぐさ」や、服を着せると「暑いと嫌がるしぐさ」、撫でられると「うっとりするしぐさ」などの動作をする。その姿がとても愛くるしいと、世界中のメディアから注目を浴びている。同社は国内のベンチャーキャピタルなどから約80億円の出資を受け、2019年中の発売に向けて開発やマーケティングを進めている。現在、LOVOTは同社のホームページで先行予約受付中だ。

　ジェトロはこうしたハードウェアスタートアップのサポートを行うため、世界最大の消費者技術見本市「CES」や音楽・映画・インタラクティブの総合見本市「SXSW」にJ-startupパビリオン（ジャパン・パビリオン）を設けた他、今後、ターゲットが運営するIoTセレクトショップTarget Open Houseにも、日本発スタートアップの製品を展示する予定だ。

　日本のスタートアップが提供するハードウェア製品はとてもユニーク。アーリーアダプター（新しい商品やサービスを飛躍的早い段階で受容する人々）の多いベイエリアで、多くの日本発スタートアップの製品がみられることを楽しみにしている。