ご存知のように、食料品小売業界にもIoT(Internet of Things)によるビジネスの変革(デジタル化、eコマース、mコマース※モバイル端末を使った商取引など)が訪れています。特に、アマゾンが2017年にホールフーズを買収して、オンラインのショッピングから食品小売市場に参入して以来、この市場での生き残りをかけた熾烈な競争に入ってきています。今回は、米国の食料品小売り市場で大手企業の一角であるクローガー(Kroger)の先進的なシンシナティの店舗見学の機会を通して感じた、この小売業界での最新動向や変革の一端をご紹介していきたいと思います。
@既存店舗の改革
食品小売市場でのオンライン分野は、年間8000億ドル規模の1〜4%と、小規模ながらも急成長中の領域で、クローガー、ウォルマート、アマゾンが熾烈な競争を繰り広げています。一方、アメリカの食品小売市場においてクローガーは、オンライン分野のみならず、既存店舗の強化を通じ、アマゾン等との競争に勝ち抜く戦略を取っているようです。その一端として、2019年1月7日、Microsoftと提携して、来店する顧客向けに、新たなデジタルソリューションの導入を発表しました。具合的には、Microsoft Azureを利用したKroger Technology製品を使った「コネクテッドストア」の導入です。
#1 電子カタログ
シンシナティのクローガーの店舗に入ると、デジタル広告が迎えてくれます。ここには、その日のセールやお勧めを表示するのですが、カメラが内蔵されていて、店舗に訪れた顧客がミレミアム世代かそうでないかを自動で判断し、広告の内容を変えています。
#2 ショッピング
通常のショッピング以外にクローガーは、独自の「Scan、Bag、Go」を導入しました。それは、専用のスキャンデバイスを使用した新しいショッピングの方法となります。予め登録した顧客は、棚からスキャナーを取り、自分のKrogerカードをスキャンし、買い物を始めることになります。商品をスキャンし、クーポンを参照し、割引した購入金額を自動的に算出。なお、計量の必要な農産物を購入する場合は、農産物の商品タグをスキャンしてはかりに乗せ、合計に加算。もちろん、商品はいつでも削除可能です。また、本日の購入金額を設定し、超過すると表示がされる機能まであります。買い物が終わったら、セルフチェックアウトに行き、Cashも含め、支払い方法を選択してチェックアウト。スキャナーをラックに返却し、終了です。
#3 商品の表示および広告
EDGE(TM)Shelf(食料品環境向けの拡張ディスプレイ)とマイクロソフトのAzureが、最新の快適なショッピング体験を提供してくれます。例えば、価格をその日のセールによって逐次変更し、表示。また、このEDGE(TM)Shelfの棚に、動画の広告(現在は、音声はなく動画のみですが、今後は音声サポートも検討中とのこと)や商品によっては、レシピも表示して、顧客の要望に合わせた、顧客の購買意欲をそそるような提案型の棚を提供しています。
#4 冷蔵食品の温度管理
顧客が商品を選んでいる際に、冷蔵品の冷風の吹き出し口の近くに商品を置くケースでは、時には冷風がうまく行き渡らずに温度が上昇することがあるとのことで、温度センサーを設置し、一体的な品質管理をしているとのことです。
A在庫管理からデリバリー
在庫管理の自動化、そしてオンラインでの注文に対する配送システムのみならず、無人化の自動運転のデリバリーも試験を始めているとのことです。クローガーは、2018年6月に発表したロボティクスの新興企業Nuroとの提携により、将来、食料品の配達が自律走行車を介して家庭に配達される予定です。
ここまで、駆け足でざっと食品小売市場での変革の一部を見てきました。単に商品や価格を提示するだけではなく、消費者が求める以上に顧客に対してより価値のある体験を提供しようとしています。食品小売市場の今後の動向に、これからも注目していきたいと思います。
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